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幕末ブラック企業-ソウソウ-

作者: 枇杷アテル

そういえばこの時代のこの手のお店って忙しそうだなとかふと思いまして。

 数年前から店の仕事が大忙しだ。今年は文久3年。黒船だが白船だがか来てから段々と忙しくなってきた。寝る間を惜しんで仕事している。というか寝て起きたら仕事の依頼が来ているので寝なかったら仕事は来ないのではと寝ない日もあったが、当然のごとく仕事が舞い込んできた。

 「おい、番頭いるかい? 仕事だよ。お前の大好きな仕事だよ」

 番台の裏で横になっていると馴染みの男が大きな声で店に入ってきた。

 「普通は家で寝ている時間なんだがね。お前さんが夜半過ぎにいつも来るものだからこの時間まで起きる癖がついちまった。どうしてくれるんだい?」

 「俺に言うなよ。夜遅くだって言うなら俺だってそうだよ。普通なら綺麗な姉ちゃんとよろしくやってくる頃合いだ。それをわざわざ男のお前さんのところに来てやってんだ。姉ちゃんが番頭やっている店があったらそっちにいくよ」

 「島原かい?」

 「あんな危ないところ行けるかよ。今じゃあ、姉ちゃんを突くより男同士が刀で突き合ってることの方が多い場所だぜ」

 「そういや島原からの来るお客さんも最近多いや。やだねぇ、男同士だなんて。突き合うなら男女だろ」

 「姉ちゃんに突くもんは付いてねぇよ」

 夜半のせいもあるが飛び交う会話が下世話なのは毎度のことだ。こんな会話で気分を紛らわさないとやっていけない。

 「で、今度はどこのどなたさんで?」

 「とりあえず早桶に突っ込んで運んできた。見てみるかい? 綺麗にばっさりよ」

 男が後ろ指で指す先には木の箱が置いてあった。

 「見ないよ。その人が何宗かってことが知れればそれだけいい。うちは葬儀屋だ。仏さんがきちんと成仏できるようにその人に合った式をあげてやるのが仕事だ。宗教違いで成仏できないって祟られたらやってられん」

 「よく分からず辻斬りされてるんだ。ちゃんと葬式上げても祟ってきそうだどな」

 「その祟りは辻斬りしたお方にしておくれ。うちは仕事をしただけだよってまた辻斬りかい?」

 「おう、朝方には執り行いたいから手続き早くしてくれってよ」

 「まったく葬式は急いでするもんじゃないんだよ。もっと仏さんを偲んだらどうかね」

 「仏さんを偲んでいる間に次の仏さんが後ろから来るんだから仕方ねぇだろ」

 「嫌な時代だよ」

 幕末。尊王攘夷の思想が渦巻く京都において葬儀屋は日々忙しい。

 「早くうちが暇になる時代が来ないかねぇ」

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