2 小指
言われた通り行動。すると水をかけた砂の色が白から青に変化した。
学者さんの話では青い砂は魔術士、どうやら俺は魔法使いに向いているようだった。ちなみに赤色に変化した場合は武器戦闘職に向いているという。
他、得意魔法や得意武器術をみつける検査法があるがそれは時間がかかるので今回はやらないとのこと。
次に学者さんは魔法陣の書かれた1枚の紙を机の上に置いた。これを使い神と契約してスキルを使えるようにするとの話し。「魔法陣に手を」といわれ俺が魔法陣に手をかざすと。学者さんな何やらぶつぶつと呪文のようなものつぶやきをし始める。すると魔法陣が淡く光りだしたと思ったら頭の中に「汝契約が希望か」と声が聞こえてきた。
学者さんを見るとうなずき、「ハイ」と答えてと俺にいう。ハイと答えると「承知した」と声が聞こえ、俺の身体全体が一瞬淡く光ったと思ったら頭の中に凄まじい量の情報が流れ込んできた。
「おおう!」
「どうやらスキルを覚えたようですね。それはレアスキルだと思います。後は心で念じるだけで使えます。おっとここでは使用しないようにしてくださいね」
「はい」
先程のスキル書を読むように言われる。今度は読める。なるほど、契約すると読めるようになるんだな。
後は表紙に契約紙を貼るとスキルを覚えることが出来るのだとか。早速試してみる。「フレイムアロー」と書かれた表紙に契約紙を貼る。スキル書が一瞬光ったと思ったら目の前から消えて無くなった。学者さんの話では俺の頭の中にはいったらしい。なかなかに不思議な体験だった。
この魔法は火術で一番弱く、魔術士なら誰でも覚えられる魔法スキル。1ページ目からじっくり読み最終ページへ。読み終え裏表紙を閉じると、本が光次第に透明化、最後には消えて無くなった。どうやらこれで「覚えた」ようだ。
「後は修練場でスキルを使ってみましょう。実演は王が見たいと言ってました。ただ、多忙ゆえ2日後となります。それまではスキルのことは忘れてのんびり過ごしてください。今日はもう夜になりました。お食事後お休みにしましょうか」
話が終わり、食堂へ。豪華な料理、更にはお酒まで。あー、うまい! 幸せ。
お腹がはちきれんほど食べた後は、先程のお風呂へ。ゆったりとつかり満足し湯から出る。風呂場から出ようと歩いていると階段の上りはじめ、壁が角になった部分に足の小指をぶつける。同時にお金を落としたような音が脳内に響き渡る。
あいたた、ぷち不幸は治ってないようだな。それと変な音が聞こえた。
調べようと思ったがスキルのことは忘れてのんびり過ごしてくださいと言われているのを思い出し、気にせず着替えのところへ向かった。
風呂場から出ると今度は豪華な一室へ。正にいたれりつくせり。俺の身長の3倍の大きさはあるだろうベッドへ。
ふぅ、参ったな。こんな事が現実に起きるとは。異世界に飛ばされたと思ったらいきなりVIP扱いでこの世界のお勉強。あれ? よくよく考えると幸運な出来事が今起きている?
いやいや、この国の敵と戦わされそうになっているんだよね。まいったな、戦闘経験なんて無いし。とはいえ逃げたとしてもすぐ捕まりそうだ。情報が少なすぎる。様子見しながらこの世界について探るとしよう。
さて寝よう。色々あって疲れていたのだろう、目をつむるとあっという間に意識がなくなった。
翌朝、目を覚まし朝食後この辺りの地図と街の地図を貰った。まずは逃走経路を調べておかなくては。表向きにはこの街のことについてもっと知りたいと言い地図をせがんだ。ふふ、天才か。まあ逃げるならもっと自由になってからだけど。
「今日は私は忙しいので、部下の者に」
学者さんの部下で、この街について詳しいという人が色々と教えてくれた。
話を聞きながら本をめくったとき、指先に痛みが走った。どうやら本の、紙の先端で指を切ったようだった。軽く出血している。相変わらず微妙に運がない。
次の日。目を覚まし朝食後、お城の兵士さんに連れられ訓練場へ。何人かの見学者と王様がいた。
「ご気分はいかがですか、転移者様。ではこれからスキルを実際使ってみましょう。目の前にある人形にスキルを」
まずは、と魔術士の人が実際にスキルを見せてくれた。
体の前で手と手を向かい合わせ何やら念じると、その中に炎が湧き出してきた。それが目の前の木でできた人形に向かって飛んでいった。人形の胸元に当たると炎は燃え広がり、最終的に人形の上半身は黒焦げに。
カッコイイ。俺もこんな事ができるようになったのか!
学者さんが、先程の魔術士の動きを真似、頭の中で念じ、白く浮かび上がった文字、「フレイムアロー」を唱えればスキルを放つことが出来る、と説明してくれた。初心者なら目を瞑ったほうが浮かびやすいとか。
「狙いをつけてもらって、と。ちなみにスキルを使うときは体内に宿る「マナ」を使用するのですがその説明も後にしましょうかね」