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第5話 傭兵、元雇用者に会う

 俺がエレアノールのボディガードを始めて3週間……夏本番の暑さを迎えるころ、彼女の家であるドートリッシュ家など地方を治める者たちが城に招集されていた。

 ここの国王は定期的に地方を治めている領主、要は配下のお貴族様を集めて会議を開いているそうだ。


 その城の客間(舞踏会などのイベントにも使用するためかずいぶんとだだっ広い)は地方領主の御曹司や御令嬢が集う場所だ。ここでも駆け引きが行われる。

 「外交は武器を使わない戦争」と誰が言ったかは知らないが、その意味ではここは武器を振り回さない戦場だ。

 エレアノールもその辺のお貴族様相手に色々とおしゃべりをして親交を深めている。

 事あるごとに顔を出して名前を覚えてもらうというのは王族やお貴族様にとってはかなり重要な仕事の一つだ。


 俺は彼女の話し相手に気を配っていると、エレアノールより頭1つ小さい、黄金色の髪とエメラルドブルーの瞳をした、人間というよりはお貴族様の幼女が可愛がってる小奇麗(こぎれい)な人形のような見た目の少女が俺に近づいてくる。


「ごきげんよう。エレアノールのボディガードさん」


 彼女は小鳥のさえずりのような愛らしい声で話しかけてきた。


 マルゲリータ=イラーリオ。


 イラーリオ子爵の娘でエレアノールと同い年の14歳らしいが背がかなり低く、整った顔立ちの童顔にロリータファッションが組み合わさると実年齢よりは大分幼く見える。そのくせ「出ているところは出て」いて「引っ込んでいるところは引っ込んで」いるという妙な身体をしている。

 エレアノールが言うには2年前まで家の名や王家とのつながりをダシにいびっていたらしいが最近は和解している、らしい。

 だがあの時の俺は正直そんなのどうでも良かった。




 問題は、マルゲリータの奴が連れていたボディガードであろう男だ。

 赤くてコシの無いペタンとした髪に、実力に反してやたら豪勢な装備品。彼に雇われてから毎朝毎晩見続けた見覚えが大いにある顔。まさか……


「「あーーーーっ! お前は!」」


 間違いない。俺を追放した自称世界を救う勇者様だ。不本意な事にお互い目が合うと同時に全く同じセリフが全く同じタイミングで出た。


「お前! こんなとこで何やってんだ!?」

「コーネリアス!? お前こそ何やってんだ!?」


 続けて出たセリフも同じようなものだった。こいつに雇われていた時に感じた、この辺妙に波長が合う部分は健在という事か。


「俺はドートリッシュ家に雇われてエレアノール様のボディガードをやってるんだ。そう言うお前はこんなところで何やってんだ!?」

「俺はイラーリオ家に雇われてマルゲリータ様の身辺の警護をしているんだ」


 どうやらアイツもボディガードとして雇われているらしい。


「おめぇ世界を平和にする夢はどこいったんだよ?」

「フッ、目の前の女一人幸せに出来ない男には世界平和は土台無理な話って事さ、心を入れ替えて一から出直しってわけさ」

「そうかいそうかい」


 カッコつけて元雇用主は背筋を伸ばしてそう言うが、不安だ。一緒に冒険をしているときコイツは事あるごとにドジを踏んでそのツケを俺が支払い続けていただけあって、特にそう思う。


「じゃあ次の人へあいさつ回りに行くわよ。ついてきて」

「じゃあな、コーネリアス」

「あ、おい! ちょっと待て! ……って、あーあ。行っちまったよ」


 マルゲリータがそう言うと元勇者は去っていった。


「コーネリアス、知り合いなの?」

「元雇用主です。ここに来る前はあいつに雇われていたんです。結局一方的にクビを宣告されたんですがね。まぁ2流の上司というのは『自分よりも優秀な部下』を扱いこなせないもんですよ」

「自慢してるの?」

「自慢じゃないですよ。事実を述べてるだけです」

「それを自慢というのよ」

「手厳しいですねぇ」




 日が落ちて大分経ち、草木も寝静まる頃……マルゲリータの寝室に彼はいた。


「私、あなたの事嫌いになるわよ」

「ヒィ! 嫌いにならないでください! どうかわたくしの事を嫌いにならないでくださいいいいい!」


 いばらで出来た短いムチを振るう。ビシィ! という乾いた音と共にトゲが赤くてコシの無いペタンとした髪の男の身体に容赦なく傷をつけ、血がにじみ出る。

 マルゲリータは男の股間を見ていた。彼は……勃起していた。


「ちょっとちょっと、何だよコレ。こんな目に遭ってんのに勃つなんてとんだド変態だな。そんなやつにはお仕置きが必要だよなぁ?」

「はひぃ。わたくしの様なド変態さんには存分にお仕置きして矯正してくださいませぇ。お願いしますぅ。」


 それを聞いたマルゲリータは勃起しているそれを踏みつける。ちょうど床と足とで挟まれる格好となった


「んひいいいいいいおほおおおおおおおおお!!!!!!!」


 男は快楽のあまり絶叫し、身体をびくびくと振るわせる。


「オイオイ! お仕置きしてるのに気持ちよくなるなんてとんだ変態だなぁオイ!」


 更に彼女はキンタマを蹴り飛ばす。


「おほお! おほおっほおおお! もっと! もっとぶってください! ド変態なわたくしに再調教をお願いいたしますうう!!!!」


 男は焦点の定まらない瞳をしながら悶える。本心なのか、それとも魅了で操られているからなのか、それは分からない。




「ふぅ。こんなところか。今日はこの辺で勘弁してやる」


 そう言いながら治癒魔法の詠唱を行う。ムチで傷つけられた身体の傷口はあっという間に完治した。

 念のために張っておいた視覚や聴覚を遮断する結界も解除し、元世界を救う勇者様は解放された。




【次回予告】


一応は仲直りしているエレアノールとマルゲリータ。

だが雇われてる者にとってはそうでもなさそうで……?


第6話 「傭兵、改めて彼女と出会う」

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