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第4話 悪役令嬢、余命4年と宣告される

 あの時、私は12歳で「余命4年」と宣告されてしまったも同然になってしまった。

 不治の病に(かか)ったわけではない。あの時に見てしまったのだ。私の運命を。いや、正確に言えば「読んでしまった」とでも言えばいいだろうか?




 2年前の出来事だけど今でも昨日起きた出来事のようにはっきりと覚えている。私がそれを知ったのは12歳の時に原因不明の高熱に1週間近くうなされていた時の事。

 その時に、他の人でも何とか分かるような言い方をすれば「前世の私」を見た。

 正確に言えば、確かに彼女は「私そのもの」だった。目や髪の色も違うし顔つきも違う。名前も今の物である「エレアノール」では無かった。でも確かに私以外の何物でもなかった。


 言ってみればもう一人の私、あちらの世界における私、とでも言えばいいだろうか? あの時高熱の中、夢と現実の区別があいまいな状態での「もう一人の私」の目線で自分の運命を覗いていたのだ。

 こんな事を言っても「お嬢様は高熱にうなされて幻覚を見ていただけですよ」と言われるだけだろうとは思うし、実際お父様やグスタフに告白したが予想通りの事を言われてまともに相手にされなかった。




 その「前世」とでもいうべきもう一つの世界では「おーえる」なる仕事をしていた平民らしく、小説を読む(と言っても本ではなく「すまほ」なる四角い板状の何かを見ていたが)のが唯一の生きがいだったらしい。


 その数ある小説の中でも特にお気に入りだったのが、『魅了スキルでイージーモードな玉の輿にのっちゃいます!』なるもので、びっくりする位私の過去を言い当てていた。

 ……5歳のころにお母様が流行り病で亡くなってしまったこと。7歳で王族のラピス第1王子の許嫁になったこと。9歳の頃社交界デビューして初めてマルゲリータと出会ってからというもの、王子の許嫁であることや家の名を武器に事あるごとにいびっていたことまで、全部。

 あれはただのお話ではない。いわば「預言書」に近いと思う。少なくても私にはそうとしか思えない。それくらいの正確さで私の人生が物語としてつづられていたのだ。


 ただしその話の中では主人公はマルゲリータで、私は敵役……あちらの世界ではいわゆる「悪役令嬢」というもので、その話によると私は将来的には15歳の誕生日に魅了されてマルゲリータに骨抜きにされているラピスから婚約破棄を言い渡され、16歳の誕生日に無実の罪を着せられて火あぶりにされるという結末らしい。

 そしてマルゲリータは私を蹴散らして王子様と死ぬまで幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。という筋書きだった。

 そんなこと、絶対させない。私はまだ生きていたい。死ぬなんてゴメンだ。




 熱が引き病気が治った私は早速行動を開始した。

 運命を変えろ。さもなくば……死。それが私を突き動かす動力源となった。

 屋敷の使用人からは「お嬢様はあのご病気以来、まるで人が変わったかのようだ」と噂される程だがまぁそうだろう。それくらい私自身変わらなければ死の運命は変わらないだろうし。


 色々手は打っている。魔導学院長にマルゲリータの「魅了スキル」……とでも言えばいいのだろうか? について話し合ってるし、マイク第2王子とも太いパイプを作った。

 それに、改心した証として表向きにはマルゲリータと仲良くすることにしていて裏では彼女の探りを入れている。

 あとはボディガードという形で自分の配下を増やし、剣士として腕の立つアンドリューや、魔術師として腕が立つと知られている界隈では有名人らしいコーネリアスを味方に出来たのは大きい。


 絶対に変えてみせる。自分の運命を、この手で。マルゲリータ、あなたに恨みはないけどあなたの思い通りにはさせないから。

 なんとしても、生きて、生きて、生き延びて見せる。




【次回予告】


コーネリアスがドートリッシュ家に雇われてから3週間。地方領主である貴族を集めて行われる会議が行われ、その御子息御令嬢達が王都の城に集まっていた。

そこでコーネリアスは出会ってしまう。


第5話 「傭兵、元雇用者に会う」

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