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第17話 傭兵、ラピス王子を治療する

 マイク第2王子にアミュレットを渡してから2週間後。俺たちはまたもや王子たちの住む城へと向かっていた。


「お嬢様、今回は大丈夫でしょうかね? また行き違いにならないか不安なんですが……」

「大丈夫。事前に手紙のやり取りをして城に残ってくれるように頼んでおいたから心配しなくてもいいわ」

「なるほど。それなら安心ですね」


 前回は急な訪問であったがためにタイミングが合わなかったが今回はバッチリらしい。信じることにしよう。




「エレアノール様ですね? お待ちしておりました。ラピス王子の元へご案内いたします」


 城にたどり着くと城門を守っていた衛兵の方から声を掛けられる。

 事前にやり取りしていただけあってかなりあっさり面会が許可され、俺たちはすぐにラピス王子の部屋へと通された。


「やあエレ、わざわざ会いに来てくれるなんて嬉しいよ」


 マイク王子が渡したのであろう、俺の作ったアミュレットが首からかけられていた。前の国王会議で彼らの親たちが集められた際にも見たが、どうやら言われた通りに着けているようだ。


「ラピス、さっそくなんだけどちょっと横になってもらえる?」

「え? 横になれ? んー。別に構わないけど何で?」

「詳しいことはあとで教えるから今は我慢して」

「ん、分かった」


 彼はそう言って、エレアノールに言われた通りベッドに横になる。俺はさっそくマルゲリータの魔力に関する「汚染度」をチェックする。


「どう? コーネリアス」

「ふーむ……何とか間に合ったって感じですな。城攻めで言うなら堀は完璧に埋まって後は天守閣に攻め込むだけって段階です。結構ギリギリのタイミングでしたね」

「治療はできそう?」

「何とかなるでしょう。結構汚染は進んでますが致命傷とまでは行っていませんから今回だけで完治するでしょうな」


 俺は口と手で解呪魔法を唱える。


「光の精霊よ、我が言葉に耳を傾けたまえ。我が望むは魔を打ち払う加護。邪悪な力を打ち払う聖なる力。魔を払い、清めたまえ!」

(光の精霊よ、我が語りに目を傾けたまえ。我が望むは魔を打ち払う加護。邪悪な力を打ち払う聖なる力。魔を払い、清めたまえ!)


≪ディスペル!≫


 ラピス王子の身体が光に包まれる。しばらく光った後光は消えた。




「ハイ終わり。もういいわよ」


 彼女が合図をすると彼は起き上がる。


「うーむ。妙だな」

「妙、ですと?」

「ああ。妙に頭がスッキリしたというか……急にぼやけていた視界がクリアーになったというか、そんな感じなんだ。疲れでも取れたのかな」

「そうですか。それは良かったですね」


 おそらくはマルゲリータの魔力が抜けた作用なのだろう。俺は適当な言葉を言ってお茶を(にご)した。


「お嬢様、どうします? 本当のところを告げましょうか?」

「任せて。私がやるわ」


 俺たちは小声で相談し、思い切って伝えることにした。


「ラピス、マルゲリータには気を付けて。彼女はあなたを洗脳しようとよからぬことを(たくら)んでいたの」

「!! 洗脳!? どういうことだ!?」

「うん。教えてあげるね」


 彼女はかつて俺に言ってきた魅了スキルに関する情報を俺が調べた物も付け加えて教える。


「……そんなことがあったとは」

「ラピス王子殿、お嬢様がおっしゃった事は本当の事です。にわかには信じられないかもしれませんが、私が調べ上げた「裏」もあります。彼女のためにも、何より王子自身のためにも信じてくれませんか?」

「うーむ……分かった、信じよう。他でもないエレの言う事だ、信じないわけにはいかないな。私も今後彼女に関しては注意しておくよ」

「お嬢様のいう事を信じていただいて本当にありがとうございます」


 俺は深々と頭を下げて感謝する。俺がエレアノールに告げられた時と違って今回は物証もあるからすんなりと信じてくれたのは幸いだ。


「じゃあそろそろ時間だからもう帰るね」

「もう帰るのか。領地がもっと近ければもっと話が出来るのにな。残念だ」

「そうね。私もそうだけどお父様の領地が領地なだけに仕方ないわよ。気を付けてね、ラピス。コーネリアス、行くわよ。ついてきて」

「ハッ」




 俺たちは王子の部屋を後にして帰路に就く。


「これで安泰ですね」

「だといいけど」


 エレアノールは悩んでいるように見えた……少なくとも俺には。


「お嬢様、何か悩み事でも? アミュレットは配ったし魅了の魔力も祓いましたけど」

「マルゲリータはただの人間じゃない。魅了スキル以外にも特別な能力を持っているわ。それを悪用しないか、って思ってるの」

「はぁ……」


 エレアノールときたら心配性らしい。


「ご安心ください。マルゲリータがどんな手を使おうともお嬢様の事は必ずお守りいたします」

「そう。ありがとうね、コーネリアス」


 そう返す彼女の顔はラピスと会っているときよりもうれしそうに見えたのは、多分俺の気のせいだろう。そういう事にしておかないといけない気もする。




【次回予告】


私は彼の事が大好きだ。……許嫁(いいなずけ)よりも。


第18話 「悪役令嬢、傭兵に恋する」

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