表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せかいでいちばん  作者: 朝霧 成平
3/5

Episode 2

黒と白の鍵盤の上に指を置く時だけが私の時間。

誰にも邪魔されることなく、大好きなピアノを弾ける。


壁に掛けてある時計を見上げると

7時15分

針は時間を止めることなく、動き

学校へと時間になっていた。

朝からキッチンの方では騒がしく朝ご飯をしながら

準備をする此処の人達の音が聞こえるのを

かき消す様にピアノを奏でていたが

それが気に触ったのか、キッチンの方から義母が声を張り上げて

止めるように言ってきた。


渋々、指を止めピアノの蓋を下ろすとカバンを持ちながら

立ち上がり玄関へと向かうと

ランドセルを背負った長女の梨花と鉢合わせになってしまった。

いつもなら、ズラしていたが今日に限って梨花が家を出るのが

早かったみたいで鉢合わせとなったが

お互い無言のまま。

梨花とは7つ離れているが、義母似で少しキツメの性格をしていて

私のことを良いようには思わず

寧ろウザイぐらいに思ってるのが手に取って分かるぐらい

表に出る性格だ。


挨拶ぐらいはしないとと思い「おはよう」と言う前に

玄関から出て言ってしまった…。


簡単に言えば無視と言う所だろうが

もう慣れてしまったことだ。


靴を履き、心の中で「行ってきます」と呟くと

静かに玄関をでた。



けして明るい性格でも無ければ、静かでいわゆる大人しい性格の

私としては何も起こらないことを願うばかりで

この山村家の人とは、荒波を立てぬよう静かに生きているのが

私が唯一できることだとは思っている。



8時12分___


学校へと到着し、教室に入ると

女子特有の賑やかさで談話している人の集まりがちらほらとあり

私は静かに自分の席に座ると

1限目の教科の準備を取り出した。

幸運なのか窓際の席なので、ぼーっと外を眺めることが多く

誰にも話し掛けられないことにも慣れている自分自身も

逞しくなったものだと思う。


この学校は小中高一貫校の女子校で周りを見渡しても

お嬢様育ちの家の子ばかりで

完全に浮いてる私には居心地が悪い…。

流行りの話題にもついてゆけず、ただその声を

黙って聞き流していると予鈴のチャイムが鳴り響いた。




ガラリと教室のドアを開けると、担任がいつもと変わらずつまらなさそうな顔で

入ってきた。

「ごきげんよう」


ここでの挨拶はこれが決まりで、返事をする生徒は揃って「ごきげんよう先生」と

少し高めの声で揃えて言う。


この繰り返しを私はうんざりしながらも学校に入ってきてからの習慣だと

反射的に返事をしてしまうことにも、

今にも溜息が溢れそうになるのを息を一瞬だけ止めて

溜息を飲み込んだ。



また始まった、私のいつもの変わりの無い一日が過ぎてゆく…



刺激的な日常が欲しい快楽主義者じゃないけど、この退屈な日々から

少しでもいいから変化が欲しいと願うのは贅沢なのかもしれない。

でも、この抜け出すにも勇気がいることも分かってるし

そんな勇気も無いことも分かってるジレンマから抜け出せずにいる。


ノートの端にシャーペンで小さくグルグルと円を描きながら授業を聞き流しつつ

そんなことをぼんやりと思っていた。


Next to be continued....

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ