金の王子と銀の姫 4
新キャラ続々登場です。
乙女ゲームはこうでなくては!
アウラの名字をミッドナイトからミッドフォードに変更しました
ガタンっと馬車が小さく音を立て停まる。
執事のセバスチャンが馬車の扉を開けてくれたので降りようとした瞬間、ふわりと私の体が持ち上げられた。
ぎょっとして顔を上げれば5才年上の幼馴染み兼、未来の騎士さまが私を持ち上げ立っていた。
「レオルさま、降ろしてください」
「嫌だけど?」
「即答ですか」
私のため息混じりの呟きに彼は意地悪そうに口許を歪め、
「レオルって敬称無しで呼んでくれたら降ろしても良いよ」
からかうようにそう言った。
「レオル、降ろして」
早く部屋に戻って休みたい私はあっさりと彼の要望に答えることにした。呼び捨てにする位安いものだ。
レオルは心底、嬉しそうに笑うと私をゆっくりと降ろし、私の足が地面に触れかけるなり、
・・・・・・今度はお姫さま抱っこをしてくださりやがりました。
「何してるんです?」
「アウラを降ろしてからまた抱っこしただけ。」
疲れてるみたいだしさ、そう言って私を抱えたままゆらゆらと揺らす。
赤ちゃんじゃないんだし止めてと言おうとしたものの、実際に疲れていたので放っておくことにした。
それに下手に抵抗すると酷い目に遇うんだよね。
私はレオルの横顔をそっと伺う、亜麻色の髪に悪戯っこの性格が伺い知れるペールグリーンの瞳。
うん、美形だわ。お父さま程じゃないけど。
親しみやすい感じに見えるけど実際にそうでもないのよね。
人の好き嫌い激しいし。
私には何故か甘い、というよりベタ甘だけどその他には手厳しい。
・・・・・・実際、同じ年頃の子供を集めたお茶会で私と握手をした男の子をかくれんぼの名目で置き去りにし、レオルに一目惚れし何故か私に嫉妬して突き飛ばしてきた女の子を後日こっぴどく振ったらしい。
泣きながら飛び出して来た女の子とすれ違いその直後、レオルに捕獲された私は膝の上に乗せられ謎のティータイムをするはめになった。
私に害が及ぶとレオルは暴走する。そして更に何故か私にも羞恥プレイという名の被害が及ぶ。
「お久しぶりです。ミッドフォード公爵」
私を抱え御機嫌なクラウスはそのまま父に挨拶をした。
・・・・・・いや、もう本気で降ろして欲しい。
「こんにちは、レオル。でも私の記憶が確かなら今朝アウラと出掛ける前に君とは会ったような気がするんだけどね、【久しぶり】というのはおかしくないかな?」
「えぇ、ですから。アウラと会うのは朝ぶりです。なので間違ってません」
・・・・・・おい、待て。何がですから、だ。
父も頭が痛むのか額を揉むようにしている。
あまり父を困らせないで欲しい。
「そして何時まで私の娘を抱えているのかな?」
もっと言ってやってください、お父さま!!
「アウラは私が抱っこする!」
そっちか、怒るのはその点なんですか。お父さま。
ラグビーボールよろしく父とレオルに奪い合いをされる私。
きゃー、私のために争わないでー、というべきだろうか。
迎えに出てくれているセバスチャンやメイド達の視線が痛い。
あ、待って。すごいグラグラゆらゆらされているから何だかちょっと、
「・・・・・・気持ち悪い」
死にそうな私のこえに驚いたふたりは突然私の体から手を離した。
「お嬢さま危ない!!」
空中に放り出され頭から落下しそうになった私を寸でのところで文字通り救い上げたのは執事のセバスチャン。
そして父とクラウスを無言で一睨みするとそのまま私を抱き抱え部屋まで運んでくれた。
「セバスチャン。今貴方が睨んだのうちの父なんだけど、貴方の主人なんだけど」という言葉はぐっと飲み込む。
だってセバスチャンの雰囲気恐いんだもの。
「大丈夫ですか?」
「ちょっと酔ってしまっただけだから大丈夫よ。ありがとう」
私をそっとベッドに降ろし怪我がないことを確認するとセバスチャンはホッと息をついた。
「先程の一件は奥さまにご報告しておきます。お嬢さまは御夕食の支度が整うまでお休みください」
本日は色々とあったでしょうから、と一言添えると優雅に一礼をして部屋を出ていった。