金の王子と銀の姫 3
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どういう因果か前世でプレイしていた乙女ゲームの世界に転生してしまい、王太子による公爵令嬢過失致死未遂事件によりその事を思い出した私にはハッキリ言って考える時間がほしかった。
王太子との最低最悪の(お互いに相手が気絶した状態での)対面。
王妃さまの登場と半強制的な婚約。
怒濤のような半日だった。
向かいに座る父は先程から無言だ。
宰相でありながら王族に対する暴言の数々を反省してるのかもしれない。
私は揺れる馬車の窓から町並みを眺める。
ここアルカディア王国は王城を中心に放射状に貴族街、商業地区、庶民街と街並みが広がっている。
そして当たり前の事だけれど王城に近ければ近いほど身分の高い、つまり生活水準が高いということになる。
そしてそれ故に貴族以外、いわゆる平民と呼ばれる中でも明確な格差が出来てしまっている。
・・・・・・確かそんなことがゲームのオープニングで流れていた。
そこまで思いだしたところで私は漸くとんでもないことに気付いた。
ゲームの内容を殆ど覚えていないという事実に!
厳密には覚えていないわけではない、ただ所々記憶がないのだ。
覚えているのはこの国の世界観、世界情勢。王太子が攻略キャラという事、そして攻略キャラではないが父が制作者側、そして何より私の推しキャラだということ。
もっとも重要なのが私が悪役令嬢だったという事実のみである。
・・・・・・最悪だ。
攻略キャラが数名いたハズなのだが、記憶があまりない。
覚えているのは悪役令嬢アウローラ・ミッドフォードがハッピーエンドで家族もろとも処刑されたり、国外追放されたり、エロ親父に売られたりしていたということ。
ちなみにバッドエンドでは何故かアウローラは女王になっていた。
そしてバッドエンドでヒロインは最も親密度の高いキャラと共に処刑されていた。
何故ヒロインやアウローラがそれぞれ処刑ルートがあるのかは良く覚えていない。
恐らく覚えていない理由のひとつに生前の私がヒロインの性格があまり好きではなかったということと、攻略キャラの一人である王太子がバカ過ぎたからだったような気がする。
一番始めに王太子ルートを進めていた私はゲームの序盤で王太子アルフォンスのアレな発言の数々に辟易し、ストーリーの強制スキップという魔法のボタンに早々に手を出し殆どストーリーを読まずにスチルだけを集めるとういう暴挙に走った。
・・・・・・スチルは本当に美麗だったんたよね。特に父やアウローラのスチルは処刑されるという最悪のスチルでさえも。
思わずため息がこぼれてしまう。
異世界転生はまだ良い、悪役令嬢なのもまぁ良いだろう。だけど情報が少なすぎやしないか!?
私を異世界転生させた運命の神とやらがいるのなら言ってやりたい!
攻略本の一つや二つ持たせろと!!
膝の上でぎゅっと握りこぶしを作る私の手の上にそっと温かいものが触れる。
ハッと顔を上げれば労るような優しい父の笑顔。
「大丈夫。家に着いたら家族で今日のことを話し合おう。きっと解決策があるハズだよ」
「はい、お父さま」
そうだ、家に着いたら落ち着いて考えよう。今はまだゲームの内容を思い出せていないけど、確か一人はまともに攻略したキャラがいたと思う。
私も死にたくないし、優しい父を前世での推しを死なせるわけにはいかない。
全てはまだ始まったばかりだ。
ゲームの強制力とやらが働くというのなら私は遊戯盤自体を引っくり返してみせる!
その為なら私は悪役令嬢ではなく悪の令嬢になることすら辞さない。
私が決意を固めた頃、馬車は漸く我が家に着いた。