ひとりの執事が生まれた日 5
ブクマ・評価ありがとうございます
【ひとりの執事が生まれた日】はひとまずこれで完結です
後日、加筆修正加えると思います
「でもアウラ、セバスチャンだけでは可哀想だよ。家名も決めてあげなくては」
「かめい?」
「アウラのおうちのミッドフォードみたいなものだよ」
「ミッドフォードじゃ駄目なの?」
不思議そうに首を傾げ、アウローラは公爵を見る。
「そうだよ。セバスチャンは私たちの家族じゃないからね」
「そんなの可哀想!」
今にも泣きそうな顔で訴える姿に公爵は、娘を抱き締めたい気持ちで一杯だった。
実際はアウローラのことは少年が抱き締めていたので出来なかった事もある。
「お父さまがセバスチャンの家族じゃないなら私が家族になってあげる。セバスチャンにはアウラのお名前をあげる」
端から聞けばものすごい口説き文句だったが、小さな子どもにそんな事がわかるはずもなく。
「・・・・・・センティフォーリア。セバスチャン・レイ・センティフォーリア」
これが貴方の名前だよ、そうアウローラは宣言するとセバスチャンの額にキスをした。
それは少年にとっては神様による祝福のキス。
新たな自分が生まれた日。
セバスチャン・レイ・センティフォーリアの生まれた日。
幸せに満ちた少年と反対に公爵は崩れ落ちた。
「アウラ。【それ】を彼にあげるなんて‼️ 父さまより、彼の方が好きなのかい!?」
大の大人が泣き崩れるさまを見たアウローラは慌てて、少年の腕から抜け出し父の元へと駆け寄った。
「アウローラ、お父さまが大好きよ?」
「だってアウラは彼に大事な名前をあげただろう? それは父さまより彼が好きなんじゃないのかい?」
ぎゅうぎゅうと娘を抱き締めるその姿は王城で氷雪の宰相と評されるほどに冷徹な態度で辣腕を振るう人物とは思えない。
アウローラは父にニコリと微笑みかける。
「アウラはお父さまが大好きよ? セバスチャンを見た時にお父さまに似てるなって思ったの。だからセバスチャンが大好きよ」
そして止めとばかりにアウローラは公爵の頬にちゅっと可愛らしく音をたてキスをした。
「アウラっ!」
感動に咽び泣く公爵。
けれどそれを冷めた目で見つめるカーラとアフロディーテ。
公爵は気付いていない。
けれどカーラもアフロディーテも気が付いた。
アウローラがしたそれは一見、父に対する信愛の情のようだが、実際は手練手管を極めた高級娼婦などが金蔓の客に対する文字通りリップサービスであることを。
「本当にあの子の将来が心配だわ」
3才児にしてこの魔性っぷりなのだ。
年齢を重ね、花も盛りの頃となれば何人の被害者を出すのか今から想像するに恐ろしい。
アウローラを巡って血で血を洗う争いに発展しないことを祈るばかりである。
「う、ん。あ、おはようカーラ」
寝椅子でうたた寝をしてしまったお嬢さまにブランケットを掛けようとした所どうやら起こしてしまったらしい。
けれど久しく呼ばれていなかったその響きは懐かしく愛しかった。
知らず知らずの内に口許は弧を描いていたらしく、お嬢さまは怪訝そうな顔をする。
「どうかしたの、メイド長?」
「いえ、何でもありません」
お嬢さまの言葉に短く返し、私は部屋を後にした。
今は昔、懐かしくも愛しい私の記憶。
カーラの正体わかりましたでしょうか?
また、セバスチャンの名前はアウローラの名前の一部を与えています
アウローラの本名の謎を是非とも推理してみてください




