ひとりの執事が生まれた日 4
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本日二回目更新です!
妖精の抜け道
取り替え子が起きた際に使われる人間界と妖精界とを、繋ぐ道。
また、まったく別の場所を繋ぐ妖精たちが使うと近道のこと。
お伽噺であって現実にはないというのが一般常識。
確かにそれを通れば離れた場所にも行けるだろう。
けれどそんなものは現実にはないからこそのお伽噺であり、もし万が一にもあったとしてもそれを人間の子供が自由に行き来出来るわけがない。
確かにお嬢さまは少し変わったところはあるが妖精ではなく人間だ。
けれど奧さまはお嬢さまがそれを通ったのではないかと言う。
「何か根拠でもあるのでしょうか?」
カーラが尋ねれば、アフロディーテは困ったように笑うと、確かな理由出はないのだけれど、と断ってから語りはじめた。
■ひとつにアウローラが居るときに攻撃性の魔力が発動しようとすると打ち消されること。
■ふたつめに時折、アウローラがなにもない場所でけらけらと笑いながら何かと話していたことがあったこと。
■みっつめにアウローラには【魔性】であること。
【魔性】と【魅了】は似ているようで違う。
【魅了】は人を惹き付けてしまう力。
【魔性】は魔物のように人を惑わせてしまう性質。
アウローラはその性質のせいで赤ちゃんの頃から何度か拐われかけた事がある。
けれどいつも不思議なことに傷ひとつなく夫妻の元に帰ってくる。
逆に拐った側が死にそうな目にあって捕まるのだ。
この話を聞いた教会がアウローラは神に愛された子供だと言って、公爵にアウローラを渡すようにと行ってきたこともあった。
結局は赤子だったアウローラに笑いかけられた、神官がアウローラの虜になり、誘拐未遂を引き起こす大不祥事となった為に立ち消えになった。
そして、その当時は教会の権勢が強く政治にまで口を出していたのだがアウローラの件を表沙汰にしないということで、宰相を務める公爵は教会の首に首輪を着け力を抑える事が出来た。
前置きが長くなったが、アウローラが魔性を持っている故に危険に会いながらも無事でいたのは目には見えない妖精や精霊がアウローラを守っていてくれたのではないか。
またその性質を持って妖精や精霊さえも虜にし【抜け道】を自由に通れるように便宜をはかって貰ったのではないか、というのがアフロディーテの推測だった。
アウローラに【魔性】という性質があるのは初耳だったが言われてみれば納得だ。
現に正体不明の少年は拐って逃げないのが不思議なほどにアウローラの虜となってしまっている。
だが、所詮は推測の域を出ず問題はそれだけではない。
この少年の処遇についても話し合わなければならなかった。
「アウローラさまはこの少年を屋敷に置きたいと仰っています」
カーラが単刀直入に切り出せば、公爵は目に見えて狼狽えた。
「え、何。アウラはこの男の子が好きなの? お父さまよりも?」
絶望した! といった様子で声を挙げれば、アウローラは
「お父さまの方が好きー」
と笑う。そして続けて、
「でもこの子も好きー」
と言った。
公爵は波路も外聞もなく項垂れ、悲壮な目をして少年を見つめた。
「君が誰だか知らないがアウラはお嫁になんかやらないからな‼️」
「違うでしょう、あなた」
アフロディーテが冷静にツッコミを入れ、少年に話しかける。
「貴方が誰だか知らないけれど、アウローラは貴方を気に入った様子。貴方もそれを望むならここにいなさい」
けれど、とアフロディーテは付け加える。
「貴方がそれを望まず、やるべき事、行くべき所があるのなら何も言わずアウローラを置いて行きなさい。その場合は私たちは貴方とは会った事も見た事もないものとします」
アフロディーテは酷く意味深な発言をし、少年を見つめる。
少年は長い間、押し黙ったあと小さくだが、
はっきりとした声で「彼女のそばに居たい」と、告げた。
ひとりの執事が生まれた日、お楽しみ頂けているでしょうか?
カーラが誰なのか、これから出てくる登場人物の誰にあたるのか推測するのも楽しいかと思います。




