ひとりの執事が生まれた日
ブクマ・評価ありがとうございます
セバスチャンがミッドフォード家にやって来たのはある晴れたうららかな春の日のことだった。
まぁ、やって来たというよりは引き摺ってこられたという方が正しいけれど。
薄汚れた人のかたちをした物体の足の部分を両肩に担ぎ段差をものともせず、キラキラと輝く銀髪をたなびかせ、こちらに向かって満面の笑みを浮かべながら走って来るのはこの家の長女であるアウローラさま御年3才。
何処かの繁みでもくぐり抜けてきたのだろう、今朝下ろしたばかりの薄青いドレスが既にそこかしこ破れたりほつれたりしてしまっている。
時折、アウローラさまの足元でガコンドコンと物音とうめき声がするのはご愛敬だろう。
・・・・・・いや、現実逃避はもうやめよう。
アウローラさまの身長からすると担いでいる【それ】はかなり大きく、身の丈に余るのだろう。
あちら此方とぶつかり引っ掛かり見ているだけで痛そうだった。
アウローラさまが担いで?いるのは16、7才ぐらいの青年だった。
ボサボサの髪は艶がなくあちこちに痣や切り傷があり、擦り傷など調べ上げたらきりがないだろう。
もっともそれはお嬢さまが無造作に引き摺って来たせいも多分にあるのだろうが。
本来ならば3才児が15才ぐらいの青年を引き摺ってではあるが運んできた事を疑問に思うのだろう。
けれどこの家に限っては、特にアウローラさまに限ってはとるに足らない問題だった。
普段は子供らしさの塊のようなお嬢さまだが時折、人智を超えた行動をする。
ある時は色のない冬の庭が寂しいと、降り積もった雪に色とりどりの水をたらし、
「お花~」
、と喜んでいたまでは良い。
次の日、屋敷で一番朝の早い庭師の老人が庭に出てみれば一面の雪景色が一面の花畑に変わっていたのを発見し、腰を抜かしてしまった。
しかもお嬢さまが前日、色を付けた一画のみ満開の花畑である。
屋敷の皆がお嬢さまの関与を疑ったが当の本人は昨夜から両親と一緒のベットで夢の中だった。
また、ある時は怪我をした小鳥を何処からか拾って来て「痛いのいたいの飛んでけ~」と謎のおまじないをした直後、
それまで身動き一つしなかった小鳥が何事もなかったかのように飛び上がり、お嬢さまの周りをぐるぐると回った後、天高く飛び去っていったのを見たとき我目を疑った。
そんなこんなが今まで多々あった為、人ひとり引き摺って来ることくらいとても些末な問題だった。
「カーラー!」
ニコニコと笑みを浮かべて駆け寄って来るお嬢さまは可愛い。
可愛いのだが、なんだろうものすごく嫌な予感がする。
お嬢さまはそんな私の気も知らず、笑顔のままおっしゃった。
「これ飼っても良い~?」
章タイトルのパクリではないかと指摘のあった件ですが、
自分でも調べてみた結果、タイトルに関しては著作権は発生しないそうです(タイトル自体が商標登録されている場合はまた別)
実際に指摘されるまでそのタイトルの本があることを知らなかったので本当に偶然としか・・・・・・
もし、章タイトルが同じで不快と感じられた方がいらっしゃいましたら申し訳ありません




