金の王子と銀の姫 13
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金の王子と銀の姫編はこれで一先ず終了です
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禁書が収められた書庫の中は思いの外カビ臭くもなく、むしろ幻想的な佇まいを見せていた。
魔法による灯りだろうか熱くもなく、ましてや冷たくもない不思議な光を宿した幻燈。
禁書庫でなければずっと眺めていたい程の美しさだった。
コトンと音がして足元を見れば1冊の本が落ちていた。
私は思わずそれを拾い上げ何気なく題名を読みあげた。
「きんのおうじ と ぎんのひめ?」
「あ、それだ僕のお気に入りの本!」
倒れ込んだ私の後を追い書庫の中にやって来たアルさまが私の手にした本を指差し叫ぶと私から本を奪うように取り上げた。
あれだけ婚約者だ、婚約者だと騒いでいたんだからまず私の心配をしろよ、と思わないでもなかったが能力は高スペックでも残念な男を地で行くアルさまだ仕方がない。
書庫の入り口からセバスチャンが顔を覗かせる。
「大丈夫ですかっ、お嬢さまお怪我は?」
「あぁ、大丈夫よ。倒れたとき少し打ったみたいだけど絨毯の毛足が深かったからそんなに酷い事にはなってないから」
セバスチャンは私に駆け寄ると大きな怪我がない事を確認すると、ホッと安堵のため息を漏らした。
「お嬢さまが無事で何よりです」
「ありがとう、でも無事とは言えないけどね。不可抗力とはいえ入るつもりのなかった書庫に入るハメになってしまったし・・・・・・」
「それは事故という事で大丈夫ではないかと思いますよ。既に王子によって封印を破られた後ですし」
「そうね」
なんとも酷い主従だが王子よりも自分の身の安全が第一だ。
王子には快く犠牲になって頂こう。
「何をこそこそ話している?」
「いえ、大したことでは。ところでそれがアルさまお気に入りの本なのですよね?」
「そうだ。棚に仕舞ってあったのにアウラが手にしていたので驚いて取り上げてしまった。・・・・・・悪い」
おお、王子が謝った。
ゲームでは謝らない、滅多にお礼を言わない、権力を振り翳す、誰さま俺さまなアルさまだった。
子供の頃は多少おバカだが比較的素直で可愛い感じなのに何故、成長するとあんなダメ男に進化するんだろう。
思わず遠い目になってしまう。
「なぁ、アウラ。本読まないのか?」
私の顔を覗き込み王子はそっと本を差し出してきた。
既にこの本には触れてしまっていたが特に何も異変は起きていなかった。
という事は【きんのおうじ と ぎんのひめ】は魔法の込められた本ではなく、歴史を覆すような内容が記述されたものなのだろう。
それならば私が黙ってさえいれば良い、それに将来私が窮地に立たされた時の切り札になるかも知れないと思い私は差し出された本を手に取った。
古ぼけた革の装幀に【きんのおうじ と ぎんのひめ】と銘打たれたその本の表紙をおずおずと開く。
比較的綺麗な表紙とは違い中は所々、破れていたり汚れていて読めない。
特に物語の前半はともかく後半はほとんど読めないような状態だった。
何とか読み取れる前半部分に目を通す。
むかし、むかし そのむかし。
とある国に きんのおうじさま と
ぎんのおひめさまが 生まれました。
それはそれは かわいい赤ちゃんでした。
ですが、
■■■■■は■の■■をもってうまれたため
■■■とされ、
■■■れてしまいそうになります
ですが それを かわいそうにおもった
まえの おうさまが たすけてくれました
まえの おうさまの
あいを いっしんにうけた ■■■■■は
すくすくと そだち おとなになりました
そして、
童話のような内容から感じ取れるのは漠然とした不安感。
簡単に要点をまとめると、
・昔、どこかの王家に金と銀の双子の男女の子供が生まれた
・双子ないしどちらか片方は何らかの事情によりその国の先王によって育てられたということ
・何らかの事情とやらはあまり良くないものだという事
「どうだ、いい話だろう?」
お気に入りの本を私に見せる事が出来て嬉しそうな王子さま。
でも・・・・・・・
「いい話かなぁ?」
「いい話だろ! だって金の王子と銀の姫は幸せに暮らすんだからな!」
「そんなの事書いてありましたかね?」
「私は何だかあまり良い感じではなかった気が・・・・・」
頚を傾げる私とセバスチャンにムッとしながらも王子は言い募る。
「王子と姫は一緒に幸せに暮らすんだ! なにせ僕とお前と同じ色なんだからな!!」
「・・・・・・同じ色。あぁ、髪の色でいうならアルさまと私と本の王子と姫と同じですね」
私が同意すると王子は嬉しそうに笑う。
・・・・・・でもねぇ、王子は気付いてないようだけど、この王子と姫って。
「兄妹ですよね、この話の王子と姫。兄妹同士では結婚出来ないのでは?」
そのままズバリを口にするセバスチャン。
一瞬、呆然としたあと王子は顔色を変え怒りを露にした。
「違う! 王子と姫はずっと一緒に仲良く暮らすんだ!! アウラの馬鹿!! お前なんか嫌いだ!!!」
言うが早いが王子は風の様に出ていってしまった。
「今のは私が悪いのかしら?」
「いえ、どちらかというと私ではないかと」
「そうよね。何でわかっててあんなこと言ったの?」
「王子がどや顔していて腹が立ったので言いました」
顔色も変えず淡々とそう述べるセバスチャンに「大人げないわよ」と返し、私はあることを思い出したのだった。
「アウローラ、やはりお前はあの本の通り災厄をもたらす者だったんだな!!」
それは前世でプレイしたアルフォンスさまに糾弾される乙女ゲームのワンシーンだった。




