金の王子と銀の姫 12
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セバスチャン曰く、封印された扉の中にあるものなんてろくなものじゃない。
それにホイホイ入ってて良いものでも無いだろう。
「えぇと、王子・・・・・・」
私はこの部屋が入って良いものなのか尋ねるべく王子に声を掛けた。
「アルフォンス」
「は?」
「アルフォンス。いや、アルと呼べ」
あまりにも唐突すぎる申し出に私は困惑しつつも断りをいれたのだが、
「いえ、恐れ多いので出来れば今のままで」
愛称なんぞで呼ぼうもんなら婚約者確定、もう内々に確定してるけど、もしかしたら父母の話し合いで暫定婚約者、もしくは破談になるかもしれないので出来れば既成事実に繋がりそうなことは避けたい。
愛称ひとつで大袈裟なと思われるかもしれないが、そんなことが起こりうるのが貴族社会だ。
だけど、王子は頑として退きそうにない。
やっぱり私が折れるしかないのか・・・・・・
そう思い私は口を開き、
「アルさま」
・・・・・・呼んだのはセバスチャンでした。
「何故、お前が呼ぶんだ!!」
顔を真っ赤にしてお怒りの王子さま。
そうですよね。お怒りごもっとも。
「【アルと呼べ】と仰っていたので、親愛の意味を込めてお呼びしてみました」
セバスチャンはしれっとした態度で言った。
「親愛?」
「友人として好意、仲良くしたいという意味です」
いや、完全に嘘だよね。
けれども王子はコロッと騙さ・・・・・・、
もとい、素直に受け取り嬉しそうだった。
「仕方ない。特別にお前も【アル】と呼んで良いぞ」
「ありがとうございます」
淡々とした態度のセバスチャンと王子の間にはかなりの温度差がある。
まぁ、王子本人が嬉しいなら良いけども。
だけど、これで私の【アルさま】呼びはグッとハードルが下がった。
王子の愛称を呼ぶことで親しい仲だと噂されても、
「王子は誰にでも気さくな方なので私だけ愛称をお呼びしているわけではありません」
と言ってセバスチャンの名前を出せば良い。
そんなわけで、ワクワクと期待した表情を浮かべながらこちらを見ている王子に対して私は気楽に名前を呼ぶことが出来た。
「アルさま」
「うん、何だ?」
ニコニコと本当にニコニコとしている。
犬だ。飼い主に遊んで貰いたくてキラッキラしながら尻尾を振っているいる犬がいる。
機嫌を損なう恐れがあるが背に腹は変えられない。
「ここって本当は入っては行けないお部屋なのではないでしょうか?」
ピシィっと音がするんじゃないかという勢いで王子・・・・・・アルさまは固まった。
おまけに、
「うん? 入っては行けない部屋なんて僕にはないぞ? ただちょっと、ホンのちょっとだけ父上と母上から危ないから封印された奥の書庫には絶対に入っては行けないって言われただけで」
とのお言葉を頂いた。
完璧にアウトだ。
しかも今、【閉ざされた書庫】って聞こえたんですが気のせいですかね?
アルさまが封印といたって聞こえなくもないんですが・・・・・・
「あのここの扉の封印を解いたのって」
「あー、封印されたって聞いて興味があったんで触ったら普通に開いた」
彼方此方へと視線をさ迷わせながら答えるアルさま。
つまり確信犯な上に強力な封印を解除出来るだけの魔力持ち。
おバカでもアルさまってば王族な上に攻略対象者ですからね!
そういえばスペックだけは無駄に高かった!
おバカだけども!!
このまま何も知らなかったことにして帰ってしまえば犯罪者にならなくて済むだろう。
万が一をバレたとしても封印を解いたのはアルさまであって私ではないのだから、封印を解いたアルさまを庇って黙っていたという事にして全責任を押し付けてしまえば良い。
そうだ、そうしよう!
となれば、セバスチャンを連れて回れ右をするだけだ。
そんなわけで急な方向転換をした私は、
後々まで迂闊で不覚な行動をとった事を呪うはめになる事をまだ知らない。
本能に直結した急旋回による方向転換に付いていかなかった私の体は足を滑らせよろめいた。
「お嬢さま!!」
「アウラ!?」
慌てた二人の声が聞え、セバスチャンが手を伸ばすのが見えたが間に合わない。
私は咄嗟に壁に手を付いたハズだったのだが、壁と思われたそれはおもむろに開き、
私はそのまま倒れ込んだのだった。
痛む体に顔をしかめつつも、身を起こし辺りを見回せば、不可思議な気配を持った書物の数々。
私は瞬時に状況を察する。
「・・・・・・終わった」
そう、私が倒れ込んだのは封印されていた禁書が収められた書庫の中だった。




