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虚構転生//  作者: ゼップ
“無題最終章”
239/243

238_E~Zエンド(まだあるかも)




……そうして、いくつも、いくつも私は結末エンディングを創ってきた。


聖女と和解するものも、

かつて交わった仲間たちがやってくるのもも、

聖女という存在がこの世から消え去るというものも、

この物語 最強の存在たるエル・エリオスタと雌雄を決するというものも、

創り、彼に与えてきた。


それらの結末エンディングは、可能な限り幸福ハッピーエンドにしたものだった。


それは、ここまでの物語を見て思っていたことだった。

このあとに待っているのが、破滅バッドエンドというのはちょっと抵抗がある、と。


もちろん人がたくさん死んだ、血まみれの物語だから、完全無欠の大団円というのはちょっと難しいと思う。

だけど、そのなかで、可能な限り幸福ハッピーエンドを──救いを与えようとした。


でもそのたびに拒否された。

何度、何度、結末を与えても、それを跳ね除けられてしまう。


ねえ──何が不満なの?

そして、どうしてあなたはそんなことができるの?


わたしは呼びかけた。

ここでないどこかにいるはずの彼に対して、思わず聞いてしまった。



「……一番大事なことを、まだ話していないからだ」



そしたら──答えが返ってきた。


ふふふ。

何でかな?

何で君がこのレイヤーにまで来れるのかな。

君はここにいることができる人じゃないよね。

そもそもこのレイヤーに気づくことができること自体が、おかしいと思うんだけど。


ねえ、田中君。

あえてそう呼ばせてもらうよ。

わたしの幼馴染にして──わたしだけの主人公さん。


「そうかな? 俺にはここに来るだけの、物語はあったはずだ」


そう言ってあなたは肩をすくめた。


その手には剣が、偽剣ソードレプリカが握りしめられている。

まだわたしも見たことのない剣だった。

だから今ここで描写をすると、それは他の剣と違って、誰かを傷つけるためのものではなさそうだった。

奇妙に歪曲した剣身ブレイド。刃は落とされており、武器ではなく飾ったり──祈ったりするためにでも使われそうな、そんな趣がある。


偽剣ソードレプリカ『フリーダ』。


六番目に彼が手に入れた、“未来”の聖女の偽剣ソードレプリカ


「……未来を見渡すことのできるこの奇蹟。

 それで──見たよ。この世界が、どんな形をしているのか。

 このレイヤーの存在まで」


桜見、弥生。

そう彼は口にした。


そうそれはこの物語の終着点にあるべきもの。

物語の大目標であり、彼が追い求めていたはずのもの。

わたしの名前。


「“はじまり”の聖女が言ったんだ。

 何故、俺がここにいたのか。

 これだけは、俺自身の物語だって」


だから、ここまでやってきた、ということらしかった。


「聖女の言語テクスト

 それはきっと──俺が歩んできた物語を意味する。

 そしてそのうち一つは取りこぼしてしまった──だけど、たぶん、それも必要なことだった」


四番目の物語。

それは、ある意味で最も重要な転機だった。


「『ニケア』『ミオ』『フリーダ』『アマネ』『エリス』。

 五つの言語テクストと、一つの喪失。

 そのすべてをつなげればせ、再会できるかもしれない」


──第四こそ逃しはしましたが、七の奇蹟のうち、五つの言語テクストがあれば大まかな復元は可能と聞いています。

  あと一つ、第三聖女を討伐すれば、この百年に起こった奇蹟がなんであったかも、つかめるかもしれない。


……ああ、確かにそんなことも書いたかもしれない。

『フリーダ』との闘いに赴く前に、すでに“東京”を経て、聖女との闘いの意味を喪いつつあった彼を、もう一度動かすために。


「ここに、このレイヤーに来れるだけの物語はある。

 だから──語ってほしい」


あなたは、わたしをじっと見据えて言った。

ふふふ……まっすぐなまなざしだった、とわたしはあなたのことを描いて見せる


かつてわたしたちはお互いをこんな風に視ていたかな?

たぶん見ていなかった。

どこか気まずいものを抱えていたように思う。

互いの、一番奥のものからは目を背けていた。


「聖女の“はじまり”はニケアにあった。

 それで“おわり”は──俺たちにあったんだろう?」


わたしは少し迷った。

何故ならば、その答えにあたるものをわたし自身持っていなかったから


ずっと、ずっと迷ってきたことだった。

ここで、あなたたちのことを見守りながら、どっちなんだろう? と思っていたからだ。



ねえ──田中君。



だから一応、確認のために、わたしもまた問いかけていた。



わたしたちってこの現実に生きているのかな?

それとも“虚構フィクション”の存在なの?



と。





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