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虚構転生//  作者: ゼップ
“無題最終章”
238/243

237_C&Dエンド







──え?








『ニケア』のフィジカル・ブラスターは──およそあり得ない、極上の剣として第七聖女を穿った。


眩い光がすべてを穿っていく。

最強にして、一度は世界を救ったその偽剣ソードレプリカの輝きは、たとえ最後の聖女であろうとも耐えることはできない。


光の弾幕は弾かれ──そこに一瞬の間隙が生まれる。


「跳びます! リュー!」


その言葉と共にキョウが光の渦へと飛び込んでいく。

光の──霊鳥の翼が碧の幻想に抗うように広げられる。

彼女の瞳に恐怖は視られなかった。


ロイの一撃から──間髪入れての突入。

そしてそこに剣を一閃。

不殺剣『ネヘリス』。


その偽剣ソードレプリカはもともとは拷問用の、血塗られた言語テクストを持つものだった。

だがそれを、彼女はそうは読み解かなかった。

彼女はそれを──誰も殺さない、誰も終わらせない、そんな物語として読み解いてきた。


だからこそ、彼女は──何物でもなかったキョウは、ここに至ることができた。


「……ふふ」


誰かが、笑った気がした。

翼で駆け抜けたキョウがゆっくりと振り返った。

その視線の先には──蝶の翅を解き、ゆっくりと落ちていく第七聖女の姿があった。


「まぁ──わたしは敗ける。

 そう、それはいい。あとは……」


そう言って彼女は再びベッドへと舞い戻っていく。

どこか満足げな様子で、堕ちていくのだった。


「……あとは」


そしてキョウもまた地上へと下りていく。

その先にいるのは──ロイだ。


偽剣ソードレプリカを握りしめ、最後の聖女に向かおうする彼の目の前に、キョウは立ちふさがった。


「……行かせませんよ」


最後の障害です、と彼女は言って笑った。

第七聖女を守るモノとして、キョウはロイに微笑みを浮かべるのだった。


『ネヘリス』と『ニケア』を持った二人は互いに相対する。

しばしの静寂の中、互いに向き合いそして──


「──必要ないよ。もうこういうのは」


そう言った。


「俺はもうキョウとも闘わない。

 というか──そうだな、たぶんキョウの方が闘ってくれない。

 このままだとおかしいさ。それに──これじゃあ一番大事なことの、決着がつかない」


ロイは少し言葉に迷ったのち、


「この結末も、必要がない」







……どうしてそこで、そんな台詞を口にすることができるの?

わたしは戸惑っていた。


このレイヤーにいるのはわたしだけだ。

それゆえもしかすると、わたし自身の手によるものか?


わたし自身、わたしをコントロールできなくなっているのだと。


わたしは息を吸い、吐く。

落ち着け。わたしは確かに迷っている。

だが、ここで終わらせなければならないのだ。


この物語をわたしの手によって終わらせる。

そうしなくてはならない。

わたしという円環を創るために、わたしはこの奇蹟を行使する。


それはつまり、結末を描くということ。







架空神聖領域に、光が迸っていた。


第七聖女の光を切り裂いたのは──アカい閃光だった。

『ニケア』の炸裂も、キョウの剣も弾かれた向こう側からやってきたのは、ひどく見覚えのある顔だ。


「お待たせ」


ニコリと笑って言う彼女は手を振った。

『リヘリオン』の刃は眩い紅に包まれており、聖女の存在感と勝るとも劣らない勢いを誇っていた。


「──私だって、ここに身を連ねていいもだろう?

 最終決戦混ぜてくれよ」


背後から切り裂かれ、落とされた第七聖女を見下ろすように、“塔”の奥から現れたカーバンクルはそう不敵に割るのだった。

ばさばさと舞うカソックは──颯爽としていて、美しかった。


「────」


そんな彼女に対して、ロイはじっと見据えた。

そして言った。

彼は──あまりにも場違いな苦笑を浮かべながら、


「……やっぱおかしいよ、これも。

 あの人は──言っちゃあなんだけど、もう少し弱い人なんだ。

 腕が、じゃない。

 颯爽としていて、カッコイイ人だけど。

 こういう場にはそぐわない」


だから、おかしいよ、とまたも彼は、ここでないどこかに語りかけるのだった。








いまはっきりと分かった。

わたしではない、あなたが、このわたしの与える結末を、拒否しているのだと。

この物質層フィジカル・レイヤー想念層スピリチュアルレイヤーの狭間に、あなたはアクセスしてきている。


でも、何故?

何故そんなことができるんだっけ?

わたしはまだ納得はできていなかった。


だから結末を書き続ける。

おかしいとあなたが拒否しようとも、幾多もの“虚構”を形作って見せる。





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