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虚構転生//  作者: ゼップ
きっと救われる物語の奴隷たち
192/243

191_第三聖女、その結末


(暗転)

(その後、次々とフラッシュバックする雨、巨大劇場、キィキィと甲高い鳴き声を漏らす少女人形マリオネット・ヒロインたち)

(演出終了後、次は物質言語で文字が表示される)



【24】



【第三聖女の終焉】



【そして彼女が至るべき結末】



(ここで章クライマックスのカットが挿入される)

(まず雨の音から入る)

(ぽた、ぽた、という音から徐々に強めていく)

 ※第二章での雨の音響と敢えてかぶせる演出


(雨が響くと同時にシーンがスタート)

(主人公、ロイが第三聖女に刃を突き立てているカット)




──その生暖かい感触は、思えば久々だった。


第四、第一聖女と直接手を下すことができなかった。

彼、ロイ田中がこの手でその存在を終わらせたのは、“たまご”でのミオ以来だ。

偽剣ソードレプリカをその胸に突き立て、抉り、吹き出た血を浴びる。


勝手知ったる感触だった。

そして待ち望んでいた感触でもあった。

どれだけ抑えようとも、心の底から響いてくるあの暗い渇望が、ロイの胸を震わせるのだ。

だが、笑いはしなかった。

自らに眠るその欲望は認めてはいたが、あえてそれを前に出す気もなかった。


「……言った通りになった。やはり、こう、なる、と」


むしろ笑ったのは、刃を突き立てられた聖女の方だった。

彼女は碧の瞳を歪ませ、ロイのことを見上げた。


「必ず、あなたはこの結末にたどり着く」


そして、ひどく平坦な口調で告げるのだった。

そこには殺戮者への怨嗟も、因縁浅からぬ存在への執着も、あるいは異様な形の愛もなかった。


「貴方は必ず私を殺しに来る。

 この物語は、あなたが私たちを殺す物語。

 その役割からは逃れられない。

 この世界に定められた筋書きの奴隷である私たちは……」


口元に血をにじませながら、彼女は淡々と言葉を口にする。

それが最後の言葉になることは間違いないにも関わらず、与えられた文言をそらんじているかのような、距離感を感じさせる言葉なのだった。


「私たちは決して自由ではない。

 私たちの過去はほんとうの意味では存在しない。

 私たちの未来はすでに語られている。

 私たちの現在とは、定められた言語テクストを読み進めることと何ら相違はない。

 知って──いた?」


彼女は最後に一言、告げた。


「でも安心しなさい、貴方の物語の主人公よ。

 貴方はきっと救われるから。

 そう──すでに定められた結末エンディングであなたは救われるのだから。

 そうと知らずとも、あるいはそうと知っていても。

 私たちは、その大きな流れに逆らうことはできない……」



(再び暗転)

(雨の音と共に徐々にフェードアウト)


(最後にタイトルが表示される)

(第三聖女の言葉とかぶさるように)




(きっと救われる物語の奴隷たち)





今年もよろしくお願いいたします。

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