190_そして君の物語
……そうして、第一聖女との闘いは終わりを告げた。
聖女戦線と“東京”
“現実”と“虚構”
二つの舞台、二つの層をかけた闘いは、すべて終わったといえる。
百年もの長い間続いてしまった戦争も、ニケアを欠いたことでじきに終わっていくだろう。
このあと残された聖女軍がどうなるのかはわからない。
闘いがすぐに終わるとは思えないし、きっとまだ血が流れる。
だが──きっとそれも必ず終わりがある。
他でもない聖女ニケアが、光の庭で最後にその身を捧げたとき、言ったのだ。
……結局、あの闘いが続いてしまったのは、私がいたせいだよ。
私が仲間を求め、敵を求め、世界を救うことを求めた。
勇者の物語を──求め続けた。
その結果、みなに“希望”という夢を見せてしまったのかもしれない。
ずっと闘っていけば、いずれ、正しい未来が待っていると
しかしだ、その未来が来るのを邪魔したのもまた──私なのだ。
マッチポンプだよ。
私がいなくなれば、彼らはあきらめざるをえない。
夢から醒めざるを得ない。
私なしで、世界を救うことなどできないと気づく。
その時ようやく──世界は平和になるんだ
“教会”のお父さんにあとは任せればいい。
エル・エリオスタ。
あの人が残っている。彼が生きている。
その強大な力に、解体された聖女軍は寄り添うしかない。
そうすれば晴れて──世界は統一される。
闘いは終わる。秩序が返ってくる──そう、私は信じているよ。
だから彼女は言った。
これが私の、この百年の幸福なのだと。
すがすがしい顔でそう言ってのけた。
そして強引に田中の手を取った。
──知っているかな?
実は、君は聖女の言語を抜き去るのに、わざわざ聖女を殺す必要なんてないんだぞ?
君はただ、触れ合えばいい。
聖女に、終わりを待ち望んでいるものに、触れればそれだけでいいんだ。
そういう……舞台装置なのさ。
だから、私は君を使って、勝手に終わらせてもらうよ。
告げられた事実は、あまりにも唐突で、理不尽だった。
そう、思えば田中のこの力のことは、“教会”の中でもあまり解析できていないのだった。
ただ聖女の言語を集めれば──
ああ、あと、これも言っておかないとな。
私の物語には不要だったが、きっと君の物語には重要なことだ
──そして、ニケアは最後にこんなことを言った。
私は──確かに“はじまり”の聖女だった。
私が元凶なのは間違いない。太母だって、聖女だって、たぶん、私が創ったようなものなのだろう。
ただ──
──ただ、この奇蹟が、どこから降って湧いたものなのか、それだけはわからなかった。
私が聖女を、みなを創った。
それはいいとして、ではじゃあ──私を創ったのは?
私は何故、こんな奇蹟を与えられた。
奇蹟を与えられたのが私で、それを終わらせるのが君だったのか。
タナカクンでなくてはいけなかったのか。
きっと理由がある。
それだけはきっと──君の物語だ
とりあえずニケア編・完結です。
ここで中盤終了。次の章から終盤突入になるかと思います。
年明けには6人目編も始める(予定)