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虚構転生//  作者: ゼップ
虚構都市“東京”
184/243

183_希望の花々に結末を ③



 私と同じ外見、同じ顔、そして同じ──奇蹟の力。


 ふふふ……本当、おかしな話だろう?

 私は彼女たちのことに気づいたとき、驚いた。とても驚いた。

 嬉しかったかというと……はじめは微妙な気分だった。


 それでも気になって仕方がなかった。

 だってしょうがないだろう?

 みんな私に瓜二つだって騒ぎ立てるんだから。

 

 ちょっとお化けでも見に行く感じで、会いに行ったよ。


 そしたら──楽しかった。

 そいつは、確かに私に似ていた。

 同じような顔をして、同じように齢を取らなくて、同じように変な力を持っていた。


 だけど、性格は全然違った。

 そいつは私よりもずっとすっとぼけた性格をしていたし、私と違って剣など怖くて握れないとも言った。


 闘いなんて全然好きじゃない。

 私が好きなのは歌だけ──そう口癖のように言っていた。


 わざわざ自分で言うくらいだから、実際、そいつの歌は震えるほどに美しかった。

 聞くと、この身がとろけるような心地だった。

 そしてその歌を聴いていると、確かに闘う気なんて起きなくなってきた。


 そうなると困るもんだから、私はほどほどに、ってよく言った。

 でも本当はその歌が大好きで、この娘にもそれがバレているもんだから、ダメダメと言いつつ歌を聴いてしまったものだ。


 ふふふ……楽しかったよ。

 私たちは、すぐに友達になれたと思う。

 現れたのは彼女だけじゃなかった。

 ほかにも、私に似た人がたくさん出てきた。


 ありとあらゆるネタバレをしてくる奴とか、なんか庇護欲をそそられる奴とか、いつも生真面目に頑張ってるやつとか、忘れっぽいけどいい奴とか──


 そいつらが、私の新たな友達になった。

 仲間、とはちょっとまた違う。

 ともに闘うことはほとんどできなかったから。

 一緒にいると収集がつかなくなるんで、たまにそれぞれの場所に遊びに行くくらいだったんだ。

 


でも、それもまた、ずっとは続かなかった。



 私の友達の一人が、死んだ。

 それは思うに、自然なことだった。

 私たちは不思議な奇蹟をこの身に宿してはいるけど、だからといって万能じゃない。

 

 私だって奇蹟を使い過ぎれば疲れてしまうし、そういう時に狙われたらヤバイなって思う。

 うん、それが──自然。


 そうなんだけど、私は思ってしまった。

 こんなの──許せないって。


 優しく、誰も死なない世界にするんだ! 

 私が世界を救うんだ──と燃えてしまった。

 

 まぁ、私も若かったんだよ。

 いや、幼かったというべきか、

 そういう、思い上がりをしてしまう程度には、ね。

 実際のところ、結構いい歳だったんだよ? 私、その時は。

 実年齢は言わせないでね。


 とにかく私は燃えた。世界を救いたいと思って──敵を探した。

 だって、世界を救う勇者様は、いつだって何か強大な悪を、敵を倒して世界を救っていたから。

 それ以外のやり方を私はよく知らなかった。


 それが、まず一つ起こったこと。

 いや──願ったことかな。


 もう一つだけ、友の死に、私は思ったことがあった。


 また──会いたいって、そう思ったんだ。

 

 友達は死んでしまった。

 私と同じ顔をした、私と同じ立場だった彼女はもう二度と現れない。

 そう理解していたのに、でも強く、強く願った。


 友の死に、怒りを覚えて、敵を求めた。

 もう二度と会えないと知りつつも、再会を求めた。


 うん、そしたら──何が起こったと思う?


 まず敵が出てきたんだ。

 あの父上が帰ってきた。

 確かにこの手で殺したはずの父が、どういう訳か戻ってきた。


 そしてただ漫然と悪辣な行為をしていたあの時と違って、明確な目的を持っていた。

 うん、その目的は──私の友達を殺す、ということ。

 それは、その時の私にとって、一番許せないこと。


 この奇蹟の力を持つ私たちを、聖女と呼んで、殺して回っていた。

 お題目は秩序の再構築とか、そんなことをだったけど、でももうそんなことどうでもよかった。

 私にとって、もっとも許せない敵になったんだから。

 いつしか父のその組織は、私の敵は──“教会”って、呼ばれていた。

 


聖女と“教会”という言葉は、そうして生まれた。



 次にね──これはもう、明らかにおかしなことなんだけど。


 私の友達が生き返ったんだ。


 友達──聖女がね、またこの地上に出てきたというんだ。

 私だって最初は信じなかった。

 だって人は死んだらもう戻らない。そんなの当たり前だろう?


 でも、見つけてしまった。

 かつて死んだあの娘とよく似た奇蹟を持つ、私とよく似た顔をした少女を。

 うん、私とよく似てるってことは、死んだあの娘ともよく似ていた。

 

 ──もちろん、別人だ。

 

 私のことはすっかり忘れているようだったし、性格もなんだかちょっと違っていた。

 だけど、それでも──帰ってきてくれた。


 それが初めて起こった聖女の“転生”だった。

 聖女を殺しても、しばらくしたら帰ってくる。

 同じ奇蹟を宿して、同じ顔をして。

 

 ──ふふふ……なんとなく、もう察しがついたかい?


 そうだよ。タナカクン。

 すべては──私が願ったことなんだ。



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