風景5
まさおがタンスから洋服を適当に見繕って貸すと、ブッチョは一先ず家に帰ると言って出ていった。まさおもそろそろ学校に行かなくてはならない。制服を来て、股がったのはベスパと名付けた愛車である。車種はスーパーカブである。つまり、スーパーカブをベスパとまさおが勝手に呼んでいるだけである。走らせること約20分。市の比較的中心にある高校で、特に何するわけでもなく、なんとか毎日をやり過ごすために通ってる。まさおの日常は若干のトラブルこそあったが、まあ普段通りそんな感じで始まるのであった。暦の上ではとっくに10月なんだが、今年はまだ暖かい。日差しが徐々に強くなって来た。
「おつかれ、相変わらず朝からダルそうね。」「・・・いや、絶好調よ・・・。」そう机に俯せになったまま、緒方はまさおの挨拶に答えた。クラスで隣の席のこの男は常にこの低血圧なテンションで生活している。「時に緒方さんよ、今朝方なんですが、あのブッチョが来まして。」「あの腐ったホスト屋の?」「うい。真っ裸で来た。しかも頭には何か袋を被ってた。」「・・・そういうプレイをしていたんだろうね。」「夜に襲われたみたいなこと言ってた。」「そういう設定の方が興奮するアレなんじゃね?つか、誰があいつを襲うのよ?」「言われてみればそうね。」そんな話をしながら気だるい一日がまた何事もなく始まっていく。一時間目の時間になって、ざっとクラスの半分位の席が埋まっている。みんな今日は比較的やる気があるようだ。