風景30
机の上に放り出された魔法のステッキを挟み、さてこれは何なのかと源内が独自の分析を語り出す。
「おかしいだろ。電池を入れる所が無い。にもかかわらず、昼間ノートンから貰った時から時々光るんだ。」
「あ、確かに!今何か光った。」
「おもちゃにしては、先っぽのダイヤもプラスチックっぽく無い。本物では無いにしろそこそこちゃんとしたガラス細工と思われる。」
「確かに!となると、お子さま向けってわけでもない。」
「そして、それだけの高機能と高級感を備えながら、それをぶち壊しにかかる膨張色全開のピンク。」
「確かに!無駄に派手だ!」
「で思うに、これはおもちゃに見せかけたおもちゃ以外の何かだろうと。非常に宗教的な、何らかの儀式に使う物なのではないかと。しかし、決定的にこれと分かる手がかりがない。」
源内の分析をフンフンと聞く。こいつですら正体がわからないとは・・・。謎は深まるばかりだ。すっかり、緒方も寝ている。そんな正体不明のステッキを俺が手にとったまさにその時だった。突如これがひかりだし、ガタガタと振動しだしたのだ。
「うわぁ、何かブルってるぞ、ブルってるぞ!」
その時、源内はハッとした表情を見せて
「わかったぞ!」
と叫んだ。流石だ!もう分かったというのか!
「まさお。それは確かにおもちゃだ。ただし、普通の子供のおもちゃなんかじゃない!」
「おおー、マジか!」
「これはな、・・・大人のおもちゃだ!」
「!!!」
晴れ渡る視界、解けてゆく謎。最後の1ピースがはまる音が聞こえた。
「充電式で電池は要らず、操作は遠隔式。そこはかとなく高級感を放つフェイクのダイヤ、かつアダルトトイとしてのポップさを演出するけばけばしいピンク。センスと技術の粋を集めた遠隔電動バイブだ!」
凄い全く隙の無い源内の推理。天才のあれか!?しかし・・・。
「成る程!しかし、源内一つ思うのだが・・・。こんな物が・・・・入るのか?」
「うむ。その疑問は全くだ。しかしまさおよ。ニーズ無くして発明無し。入る穴無くしてバイブ無しだ!」
確かにその通りだ。ところで、そうなるといよいよこれどうやって止めるの?何かどんどん振動強くなってきてるんだが?ん?何か外の方へ引っ張られてる?
「あ?あれ?何か引っ張られる。う、うお!」
そう言うや否やステッキ?が凄い力に引っ張られて、俺もろとも窓の外に飛び出した!
「え、浮いてるの?これ浮いてるの?」
地面から数メートル位の高さの所で、浮いている。なんだこれ?
「うわ、高え。あぶね。落ちたら死ぬって。」
「まさおー。何かいじったのか!」
源内が窓から叫ぶ。
「知らねぇ。つか、こえぇ!」
「一旦手ぇ離して降りろ。」
「無理!たけぇ!」
「地面まで3メートル位だ。大丈夫だろ。」
「無理!たけぇ!落ちたら突き指しちゃう!」
「弱ぇ。」
「うわ、何か動き出した!どっか行くのこれ?」
ステッキが徐々に西に向かって進みだした。俺があたふたしてると、
「まさお!カブ借りるぞ!おい、起きろ緒方!」そう言って源内が俺のベスパに乗って追ってきた。スピードが増してステッキの飛び方に勢いが出てきた。
「ムリ!マジムリ!死ぬって!これ死ぬって!」
「その高さなら死なないって!降りろって!」
「ムリ!マジムリ!落ちた時、足ジーンってなるもん!」
そんなことを叫びながら飛んでたら、線路の所でステッキの長さが変わっていることに気付いて、両足も絡めてさながらナマケモノみたいな態勢になりながら西の町にどんどん進んでいった。しかし、これこんな長い棒になるとは。これ使うって、どんだけエグいプレイなんだ!どんだけ鬼畜のド変態なんだ!そうすると、またステッキが短くなり手で持つのが精一杯の長さになった。
「ファー!死ぬって!死ぬって!落ちて足首グキってなって死ぬって!」
それまで、地上二メートル程の高さを維持しつつ飛んでいたのが、そこから一気に上空へ急上昇した。
「フアアァァァー!!!!!!!!!」
・・・・・死を覚悟したよ。




