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崩壊するドグマとまさおの日常  作者: 和泉書房
秋のこと・一夜明けて
28/41

風景28

 火事から辛うじて逃げた俺は、人を殺そうとする男のバッグに隠れながら日々を過ごしていた。しかし、その男は職業こそ人殺しだが、根がまともだったのか、大して俺の力にならなかった。そして最後に見つけたこのドス黒いエネルギーを持つ男のお蔭で何とか復活を果たすにいたる。そして、俺を付け狙うあの馬とその子分の小娘からの追跡もこいつを使って逃げ切った。そして、今その男が俺に描かれた絵の様に、逆さになっている。一先ずこの男はまだ使い道は有るだろう。・・・生かしてみるか。


 鳥山達が引き上げた後、1人磔で取り残された田渕の前に一枚のタロットが浮いていた。海面が上がるなか、そこで繰り広げられた光景はいささか奇妙ではあった。空中に浮かぶ一枚のタロットが突如高速で旋回し始め、十分な速さになったところで磔にされた田渕に向かって光の速さで飛んで行く。一筋の光となったタロットがかすめる様に男の周りを2周3周と回る。すると両手足を縛る太い縄が、はらりと落ちた。見ると縄は見事に切断されており、断面は鋭利な刃物で切られたかと思うほど綺麗なものであった。全てこのタロットの魔法と呼ばれるもののなせる業であったように思う。

「ゴフォッ!ゲホゲホ!何だ!」

解放された田渕はそのまま浅瀬に落ちる。命の危険は去ったものの、頭部の袋がきつくて取れない。タロットがこの男の頭を覆う袋に穴を開けようとしたその時、空の遥か彼方から讃美歌を思わせる歌声、神聖というべき音色が一面に響いていた。

「ちぃっ!いよいよ場所がばれたか!」そう言って、とにもかくにも頭の袋に切れ目でも入れて、この男を逃がさなくてはと焦ったタロットは、最後の一閃で頭の袋に切れ目を入れようとした。その時である。

「くそ、近づいて来やがった!うあ!」

朝日が眩しい中にあって、その中でも特に強い一幅の光がタロットを照らした。ピタリとタロットの動きが止まる。

「ハングマン見つけましたよ。覚悟なさい!」

「うぁぁぁぁぁ!」

絶叫の後、タロットは光の源である頭上遥か彼方の空高くへ、吸い寄せられる様に飛んでいった。


後に残されたのは辛うじて命を繋いだ田渕だけであった。

「がハッ!ゲフン!ゲフン!何だ?!何なんだ?!うあ、頭いてえ。目回る。あ、ここ・・・穴空いてる。」

足元が覚束無いながら、とにかくここから動こうと田渕は歩き出す。暴力と魔法がせめぎあい、窮地に追い込まれた悪夢の一夜が明けていた。勿論、田渕はタロットの存在など知らないし、彼に助けられたことも知らない。今、田渕が覗く穴は彼が昇天する刹那に切り開いた穴であり、その時勢い余って田渕のパンツにも切れ目を入れたのも彼であった。

「あれ、これもしかして俺・・・履いてないか?」


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