風景25
およそ、痛いという言葉では表現し難い衝撃的な電流が背骨を伝った後、次の瞬間下半身に今だかつて感じたことの無い巨大な異物感が襲った。その衝撃の波に、脆くも崩れそうになった己の理性を何とか踏みとどまらせて、何とか気絶は免れた田渕。この衝撃の原因を取り除こうと奮起する。
「・・・んぐぁ!・・・ふんぐぁ!・・・へんぐぁ!」
その奮起はもはや人としての知性を微塵も感じさせない野性そのものの砲号を、辺り一面の暗闇に響かせていた。しばらくして、自分の下半身を襲ったのは棒状の物であるということが理解できた。しかもそれは単純な棒ではなく凹凸の部分があるということも理解できた。
「んがぁ・・・!抜け・・・ない・・・。」
・・・何故ならその凹凸が直腸近辺で田渕の奮起を悉く阻止していたからである。
「んほぉ!、んあほぅ!」
夜の公園でけつの穴に棒をさし、四つん這いになって吠えている自分。それがもたらすものは激痛であり奪い去るものは人としての品格と知性であった。
薄れ行く意識の中にあって、しかしその時田渕に呼び掛ける声が聞こえた。
「あ、よく見たら人だけど」
「人だけど気持ち悪いですの!何なのこの人!」
「ところで、ユニちゃん!ステッキはどこだろ!?」
「エリー!もう一度念じるとステッキが戻って来るんだポ!」
「わかった。えい!」
田渕の背中に電流が再び走る。
「んあああああああああああああ!!!!!!!!!」
引き抜こうとする強力な魔力、反対に凹凸に引っ掛かり引き抜くのを拒もうとする強力な筋力。ステッキを介した不毛な綱引きの火花は、田渕の叫びとなって発散される。
「あが!おが!んがぁぁぁああああ!!!!」
縮小される理性、拡張される括約。消えていく己の意識の中で、しかし次の瞬間何がこの男をそうさせたかは不明だか、田渕は一縷の望みをかけて己を後ろから襲ったこの災難を右手で掴み、何処からか加えられる謎の力と共に全力で引き抜く暴挙に出た。
「ふぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
天は・・・彼を見捨てなかった。この日一番の絶叫の後、引き抜いたステッキを力強く握る我らがブッチョの姿がそこにはあった。瞳孔が若干開きっぱなしである。
「あの・・・。それ返してもらっても良いですか?」
目の前の恐らくハロウィン帰りであろうか。ゴスロリチックな年端も行かぬ少女が語りかけてくる。
「ああん?」
「ひぃ。怖いよ~!」
「でも、エリちゃんあのステッキもうなんか汚いのです!返されても困るのです!」
「ああん!?」
ひょっとして、激痛の原因はこのハロウィン小僧どものせいか!今日一日の不幸と大量のアルコール、そして先程までの肛門の激痛が田渕の最後の理性と判断力を消失させた。そして何故か田渕の頭の中で全ての悪=ハロウィンという公式が出来上がり、その矛先がハロウィン帰りと思われる目の前のコスプレ少女に向かうのだった。
「ハロウィン潰す。ハロウィン潰す。」
そう呟きながらこのホスト崩れは少女達に今将に迫らんとしていた。




