風景19
10月も終わりに差し掛かったころ、ブッチョこと田渕は線路のガード下の屋台で本日四本目の瓶ビールに手をつけていた。それまで貢ぎに貢ぎまくっていたキャバ嬢、サオリと本日のデートを約束したは良いが、ものの見事にすっぽかされて自暴自棄の只中にいたからだ。
「えーん。えーん。えーん。サオリんよおー約束したジャーン!今日は相手してくれるって約束したジャーン!下心無しでプラトニックにサスペンス映画見に行こうって約束したジャーン!その後は下心無しでお食事して帰るだけって約束したジャーン!何もその後は無いよー!神さまの手元が狂わない限り何も無いよー!」
ただただ、舌鋒だけが酒の減りに反比例して鋭さを増していく。
「神様あぁ、狂ってくれよ手元ぉ!入れさせてくれよ先っぽぉ!」
一方、品性は酒の減りに比例してダダ下がる。
「そりゃねあんた、そんな一回デートしたから即OKじゃないってことくらいわかりますよ!ええ、分かりますよ義務教育は受けてますから。そういう話じゃないのよ!こちとら一見のお客さんから始めて、指名しまくって、誕生日、クリスマス、四季折々プレゼント、くれてやるだけくれたやっての半年以上のお付き合い!ギブアンドテイクならぬギブアンドギブ!そろそろ少しくらいのテイクならありだろ!」
ちなみに一応、ブッチョは屋台の親父に語りかけてはいるが親父は全く相手にしない。毎度のことである。ただ一人同じ屋台でブッチョの横に座っていた40前後の客の男が楽しげに、しかし静かに黙ってブッチョの独演会に耳を傾けていた。
「あーもういいですよ!あんな女知らんわ!こうなったら、ネットであいつ炎上させたるぁ!」言うや否やスマホでサオリのSNSをチェックしだした。漢田渕。基本腐った奴である。「ファー!」すぐさま腐った絶叫を上げる。「な、何やねん。ハロウィンパーティーって何やねん?!」そこには、小悪魔という感じで、ちゃちな角を頭につけ、露出度は高め、コスプレ様の黒いドレスを着た、手に悪魔が持つ三又の槍を持ちながら、友達とどや顔で写真に写るサオリの姿があった。「だ、騙したんかい。騙したんかいワレェェ。俺とのデートは親戚の葬式だからってすっぽかして、その裏でお仲間とよろしくハロウィンパーティーかい!」




