「久しぶりだね。二人で水面を見つめるのは
「久しぶりだね。二人で水面を見つめるのは」
「ああ。そうだな。昔はあの・・・」
「「龍神様の泉」」
「はもったぁ」
「はははは」
俺たちは二人、みんながそれぞれの家に帰ってからも湖のほとりで話し続けた。ぱちぱちと時々焚き木がはぜる音が聞こえる。
空は雲に月が隠れていたが、間からたくさんの星が見えていた。
「空見ろよ。すごいな」
「わぁ。綺麗。湖にもたくさん星が浮いてる。私たちの村みたいだね。今も変わらない?」
「いや」
鏡が首を振ったのを不思議そうにみる里美。
「どうしたの?」
「ダムの建設地になってな。俺が定年する頃にはもう沈んでたよ」
「そう・・・だったんだ」
「俺は帰らなかったけどな」
「え?」
「ずっと東京で暮らしてたんだ。東京に出てからは一度も帰ってない」
「どうして?」
「里美がいないあそこに帰ってもつらいだけだったからな」
「っ!!」
里美が黙ってうつむく。
沈黙が続き、鏡が酒を時々飲む音だけが響いた。
「か、鏡君!!」
「なに?」
「け・・・結婚とか・・ってしましたか?」
顔を真っ赤にして鏡の腕をつかむ里美。
「してない。お前がいなくなってから、一度も。誰も好きになれなかったよ」
「な、え?嘘」
「本当だ」
「嘘だぁ。だって、78年も恋人を作らないなんてそんなわけ」
鏡は里美の頬に手を当て、唇を重ねた。
「っ!!」
暴れる里美を押し倒し、キスを続けた。
「んっ・・・・はぁ・・・んむっ・・・はっ・あ・・」
里美の体から力が抜けていき、キスを返し始めた。
「「はぁ・・・はぁ・・・」」
水晶のような里美の眼は俺をまっすぐに見つめていた。目は潤み、頬は上気している。
「里美。これは俺のファーストキスだ。俺はお前と死別しても、お前を思い続けていた」
「か、鏡君」
鏡は里美を起き上がらせた。しかし、手はつないだまま。
「里美。こんな良く分からない世界に来てしまったけど、俺はお前を守り続ける。俺にはお前が必要だ。里美。お前じゃなきゃダメだったんだ」
突然、月が出て、湖面を照らす。手をつなぎ、見つめあう鏡と里美が水面に映った」
「里美、俺と結婚してくれ」
「はい!」
照れたように笑う二人。
「はは。恥ずかしいな」
「うん。でもうれしい」
鏡と里美は再び唇をかわそうと顔を近づけていく。
「「ん?」」
水面に俺たちの家の影からこちらを見つめる8つの影。
「あれ、やべ、ばれた!」
「ピュアすぎてみてられなかったわ」
「恥ずかし~。でも、あんなこと言われたいわ。ねぇ、ジャン?」
「うぅ。最近その要求が多くて、胃がもたなっ・・・冗談です。く、クラーラさん。そんな目で見ないで」
「エレナ。俺たちもやるか?」
「え?そんな、みんなの前でなんて恥ずかしい」
「姉さんたちもピュアだな」
「いいなー私も恋人ほしーーーーーー」
「リム。落ち着きなさい。そんなんだから恋人ができないのよ」
「くぅうう」
「テ・・・・」
「「「「「ん?」」」」」
「てめえららああああああ」
「「「「きゃあああああああああ」」」」」
人類最後の拠点エデンで開催された第一回鬼ごっこはリムが捕まり、お尻をぺんぺんされるまでつづいたのだった。