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自由と恐怖  作者: 詭弁
僕と柊の始まりの話
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学徒動員

ついにくるべき時が来たと言うべきか。学徒動員が決定されたと学内で聞かされた。

文系と理系の中でも農学部の人間は徴兵されると決まった。その他の理系の学生は兵器開発に従事するそうだ。学生を動員せねばならないと言うことがどういう事か、それだけ陽国にはもう人がいないという事が如実に表されていた。

いや、もう随分前からこの時は予見されていた。若者をどんどん戦地に送っていくのを何度も見た。国内の物資は食料品すら困窮する状況が続いている。もはや誰の目に見ても末期だった。

それでも、それであっても、国民達の意思は曲がらなかった。敗けるとわかっていても最後まで諦めない者、それすら理解せず祖国の勝利を信じて疑わない者、我が子を戦場に送った者達の祈りにも似た思い。一般人は誰しもが正面から戦局を直視しない。ただ、信じたいことを信じていた。

そうして、僕はというと何処かで諦めていた。国のために一矢報いるかという狂気染みたやけくそもまた持っていた。

どうせ敗戦する。勿論生き残れればこの国の転換期に出くわすかもしれない。それが良いものか悪いものかさっぱりわかりはしないが。

「僕の人生とはなんなんだろう」

呟いておいてなんと意味の無い言葉かと苦笑いする。

なんのために学問の道を進んできたのか。なんのために郷里の者達の期待を背負ってきたのか。なんのために産まれたのか。なんのために、なんのために、なんのために、なんのために……。

「なんのためにっ!」

叫んだあとで周りを見回した。誰もいない講義室がそこにただただあった。

誰に聞かせるものでもない叫びだ。聞かれなくてよかったと思うとともに、僕にはついに何もなくなったという思いがあった。

戦地に行く。なるほど、それだけならば助かる可能性もあろう、最悪捕虜にでもなれば良い。だが、恐らく僕は航空機による特攻隊に組み込まれる。話には聞いている、もはや本土に迫る敵艦隊と敵航空戦力。技量の無い者を教育する時間も余裕もない。そんな新兵に戦果なぞ今の状況にとっては絶望的であり、死にに行く的になるだけだ。だからこそ一発を求めた最悪の作戦、敵艦隊への航空機による特攻である。

特攻なんぞすれば死ぬ。なにかの機会で生き残る可能性もあるだろう、だがそれはゼロに限りなく近い可能性だった。

背負うものは近い将来に無くなるだろう。守るべき者もまたいなくなるかもしれない。何も成せずに死ぬよりはせめて敵に一矢報いるべきではないかとすら思えるほどだ。

「死ぬのか」

言葉にすると実感がわくかと思ったが存外そうでもないらしい。ただただ言葉だけが頭の中をぐるぐるさ迷う。

召集令状がくるまでにはいくばくの時間があるのだろうか。両親への別れの挨拶は言えるのだろうか。

浮かんでは消える疑問と解答。なんの意味もない言葉だけが脳内をよぎってはさ迷い、さ迷っては消え、またよぎる。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

ようやくここまできました。

もう理解されている方も多いと思いますが、こちらの世界は第二次世界大戦の日本をモデルにしています。

貴族にあたる公家の存在や帝国大学にあたる首都大学の学費の話等細部は違っております。

設定上明かされることはないのですが、維新のさいに大和国を含む皇帝直轄地の大規模発起など、歴史も似ているようでだいぶ違った道を歩んでいます。

さて、三笠という人物はいかがでしょうか?あまり好かれていないかもしれません。

ながらで書いているため、各部が雑な繋ぎになっていますが、いつか手直しできたらと思っております。

今後とも三笠共々よろしくお願い致します

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