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自由と恐怖  作者: 詭弁
異界での始まりの話
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お説教

何故僕と柊はこんな目にあっているのだろうか。

菅原が女に説教を受け始めたのが先程。その光景を僕と柊が眺めていたところ、こちらにも飛び火したとしか言いようがないのだが、だからといって見ず知らずの女に菅原ともども説教を受けるのもどうなのだろうか。

「そりゃあ、やれることはやれって言ったけど、計画性もなければ行き当たりばったりのしかもその場しのぎて。もう少しやりようがあったんじゃないの。っていうかさぁ、あれ、あの緑色のやつ、あれがわって感じで散りじりに逃げてたらどうするつもりだったわけ?血気盛んにおっかけっこしてくれたからさぁ、あたしがこう上手いこと処理できたわけだけどさぁ。確かにさぁ、適当に血を流させてそれにつられて来た補食できそうな生物にまかせるってのもなしでは無いよ、むしろありだと思う。でもさぁ、こんな視界の良いとこでそんな大型の奴いたらすたこらさっさって感じであの緑のも君らも逃げてたよね。だいたい無名はそこら辺察知できるもんね、そんな補食できそうなの近くにいたら言うよね。あの緑色の繁殖力高いみたいな話聞いてたから根絶やしにしたいって道久に言ったよね。これ仕事なのよ、最善つくすじゃん普通」

菅原の名前は道久っていうのか、とか、いやいやいや、あの火力でどうやるというんだ、とか、そもそもあんた一人でやればいい話だろとか、まぁそんなことを考えながら言葉を右から左へ受け流す。

「大将、結果よければすべて良しって事で一つ」

菅原が完全にめんどくさい事になってしまったぞと言う反省の色零な発言をしてまた火に油を注いだな、と諦めの境地で無心になろうと僕は遠くに視線をやる。

柊はうつむいたままだ、ひょっとすると寝ているんじゃないだろうか。そう言えば柊はそろそろ睡魔が限界かもしれないし、少し狡いとは思うがそれも仕方のないことかもしれない。

それにしても説教に終わりが見えない、苦痛すぎる。

「では代案として、あの戦力でどうすれば良かったんでしょうか」

延々続く女のお説教に黙ってればいいものをつい聞いてしまった。

「それ考えんのも仕事のうちなの。というかね、身の安全第一なのはわかるんだけどね。道久は多少の怪我でもすぐ治るし、ニューはああ見えていりくんだ場所でなら数の不利は気にならないし。そもそも無名は死霊術師なんだから死体利用すれば数も逆転できたはずなんだよね。漂流者のお二人さんは知らないだろうから仕方ないけど、そこのぼんくらは知ってるはずなのにしなかったんだよねーほんとやんなるわー」

「怪我がすぐ治るとか死霊術師って何ですかそれ」

ほれ試しに、とひきつった顔の菅原の腹に女は早業で拳銃で躊躇せず二発弾丸を撃ち込む。着弾と同時に血液が飛び散ったかと思うと次の瞬間には鉛弾が地面に二発転がっていて、菅原の腹は赤く染まっているものの傷らしいものは既に無い。

「面白いでしょ。どうなってんのか一度どこまでやったら死ぬのか試してみたいもんよねー」

「大将、なんにも面白くないです。あとまだ死にたくないんで」

菅原からはもう本当に黙っててくれと言う圧を感じる。

しかしもってこの世界と言うのはすごいな、びっくり人間の宝庫なのではなかろうか。もうなんでもござれだと開き直るしかない。僕等の常識はここでは通じないんだな、と故郷が恋しくなる。とんでもないとこに来たもんだ。

「無名に至ってはもっと面白いよ、あれ死霊扱ってどこに何がいるのか観測できる上に、死体に使役してる死霊とりつかせて動かせるからね。あたしも最初見たときは意味がわからなかったけど。まぁ死体が徘徊するようなのもたまに現れるしそういうのもまぁいるんじゃないの?って感じで受け入れたけど」

はぁ、と生返事して、理解するのを途中で放棄した。

「そうそう道久さぁ、この二人、なし崩し的に道久の仕事手伝わせてうちの従業員にする気だったでしょ」

今まで以上に菅原が狼狽している。さっきのよりこの話の方が僕等には重要だ。

「まぁ道久も人員が欲しいって言ってたもんね。うち少数精鋭だから、他の同業者と違って人手が足りないってのもわかる。でも適当にそれっぽい嘘つきながら言いくるめて遺跡研究の人手にしようってのは雇用主抜きに勝手に話すすめるのは良くないんじゃなぁい?」

「こ、困ってそうなので助けようと思いまして」

「命の恩人だから多少無理な理屈で押しきってでもこの二人は断れないとか思ってたんでしょう?あとは同じ故郷の血が流れてるから見捨てられないーとか言ってあたしを丸め込もうとしてた。無名と連絡とれててよかったわ、漂流者拾ったって聞いた時はなんとなくそんなこったろうと思ったのよね。慣れない嘘なんて吐くもんじゃないってことよ」

菅原の下心というやつがその程度の物なのかと安堵する。この世界にいるのかどうかは知らないが人売りに売られるよりはマシだろう。そこまで考えて、どうもこの会社は普通の人間がいてはいけないのではないだろうか、死に直面する回数は菅原と遺跡研究してた方が多そうな気がするぞ、ということに気づいて、どっちが良いってことも無いな、と思った。

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