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自由と恐怖  作者: 詭弁
異界での始まりの話
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一方的な狩り

だだっ広い平原のど真ん中の街道。真っ直ぐ続く道だけが続いている。遠方には来た道の先、少し土手になっているところが見える。

視野は広くとれるため、奴等の動きに変化があればさっさと逃げれると言うものだ。

わざわざ別方向から回り道して先回りした。

菅原もニューも無名も適当に数を削って増援に任せてさっさと撤収するつもりらしい。そもそもが火力が足りないのであるから、無理せずこれだけのことをやりました、と報告できるだけのことをすればいいといったところだろう。

荷室には僕と柊、自動小銃を菅原から渡された無名の三名が開いた荷室の扉から奴等が来るのを待ち構えている。ニューは車の天板に上りそこで戦うとのことだ。なんでも鋼糸を使うなら荷室はよろしくないらしい。菅原が運転席に収まり、僕等は奴等が来るのを待っていた。

こんなことに付き合う必要があるのだろうか、と思わないでもないが、どうせ僕も柊も都市まで二人で歩いていけるとは思えなかった。

ただでさえあのよくわからない生き物を見た後である。

「無名って変わった名前ですね」

柊が問う。ニューと言う名もなかなか珍しく感じるが、容姿的にもこちらの世界的にも僕等の常識が通じない普遍的な名付けの可能性があった。だが無名は違う、どう考えても陽語からきた名前だとわかる。名前が無いなんて名前普通つけないだろう。

「名前なんてなんでもいいと言ったら、名無しなら無名で良いだろうと勝手に呼ばれてるだけだ」

柊の問いに短く無名は答えた。そう言えば菅原が無名は変わった男と言っていたが、確かにそうかもしれない。

「お喋りは構わないけど、見えてきたよ」

ニューがそう言うので視線を道に据える。緑色が曲がり角を曲がりこちらにむかってゆっくり歩いてくる。

「作戦通り合図があるまで引き付けてから撃ち方始めるから」

緑色はどんどん近づいてくる。その数は予想の遥かに多い。

「全部で4381だ。間違いはない」

「お二人さん、無名はそういうの正確にわかるから4381匹いるあの緑色をまぁ頑張って削りましょう」

4381匹というやけに正確な数字と絶望的に多い数に今一ピンとこない。どちらにしろ数を減らして離脱するだけなので、全部相手するつもりは毛頭無い。

「撃ち方構え!」

ニューのその言葉を聞いて小銃を構える。

「落ち着いて、数が数だから撃てばどれかには当たる、一匹でも多く撃つ事を意識して」

じっとり汗が出てくるあまりの数に安全な作戦だとわかっていても鼓動が早くなる。

もう奴等の顔を確認できる、僕達を発見したとたんこちらに走り出してきた。奴等の手に持っているのが刃物だと確認して、木の棒だけじゃないのかと舌打ちをする。

「まだ……まだ……まだ……」

ニューがタイミングを図るように告げ続ける。

そうして時は来た。

「撃ち方始め!スガちゃん、微速前進!」

車が動くのに少し体制を崩しながら僕は引き金を引いた。

乾いた音が連続してする、奴等の数匹に当たると着弾した緑色の猿は短い悲鳴をあげ次の瞬間には後ろから来ている緑色の猿に踏み潰されている。

奴等は歩みを止めた途端死ぬしか無いと言うことか。

ボルトを引き次弾を装弾し、再び照準をつけると引き金を引く。

五発撃ち終わると、すぐさま装填し、薬室に装弾する。

数回装填したころだろうか、ニューは弾切れなのか二本の鋼糸を袖から射出してそれぞれ一匹ずつ緑色の猿の首に巻き付けると二三匹にぶつけてから首を落としている。ぶつかった緑色の猿は倒れて後続の猿に踏み潰されてそのまま息絶えているだろう。糸にこんな使い方もできるのかと感心してしまう。

先程から刃物や矢が飛んで来ている、思ったより緑色の猿も器用らしい。だが距離はそれなりにとっているためこちらにはなかなか届いていない。

「スガちゃん!もう少し速く!」

「あいよォ!」

菅原が速度を上げると少しばかり緑色の猿との距離が離れる。

そうして相変わらずひたすらに撃ち続ける。

「無名、あんたもう拳銃も弾切れでしょう」

ニューが無名にそう言うと無名はああと言うと刀を抜く。

「なんで刀なんて抜いてるんだ!それよりクリップに弾込めてくださいよ!」

僕がそう叫ぶと無名は首を降る。

「そろそろ増援が来る。菅原、次の脇道に逸れろ。そのあとは残りを狩る」

「無名、誰が来てるかわかる?」

「女狐が来た」

その瞬間けたたましいほどの声が車内に反響する。

「あー、あー、聞こえてるかー、お前らの雇い主だ。速度をあげて次の脇道に逸れろ、痛いのが飛んでくぞ、繰り返す脇道に逸れろ、痛いのが飛んでくぞ。なお脇道に逸れずに巻き込まれて死んでも自己責任とする」

とんでもない事をさらっと言うものだと思う。

「よりによってうちの大将かよ!」

「よりによってうちの社長なの!」

菅原とニューは悲痛にも似た叫び声を上げる。

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