火力不足
「で、お前はどう思う」
菅原が無名に問いかける。
「普通に考えれば増援を呼ぶか撤収だろう。奴等の観察をしてみたところ、十体くらいで連携した動きをしている、少なくとも接近戦を仕掛ければ囲まれてお手上げだ、かといって遠距離で戦うには火力が足りない、十や二十殺したところであの群れが止まるとは思えない」
無名の言葉にニューも頷いている。
「で、うちの社長はなんて」
ニューが菅原にそう聞くと菅原は顔をしかめる。
「大将曰くこっちでやれることはやれってよ、いつもの奴だ。増援は送ってやるとは言ってたけど、先に俺らである程度はかたせだってよ」
「信頼されてるな」
無名が無表情で嫌味にとれるような事を言う。
「私達は部外者なのですが、どこかで隠れていればよろしいでしょうか」
柊は至極当然の事を言う、僕達は部外者だ、面倒事に巻き込まれるのはできるならば避けたい。
「火力が足りないんでなァ、人手がほしいし君らの銃も玩具ではないんだろう。それなりに考えはするけれど。俺達も猫でも借りれるなら手は借りたい」
「ついてないね、他の人に拾ってもらえてたらこんなのに巻き込まれなかったのに」
菅原の発言にニューが諦めろと言った感じで言葉を添える。
「では、現状こちらの手札には何があるんですか」
「俺が持ってるのが自動小銃が一つ、それの弾倉が四つ、装弾数はそれぞれ二十。あとは小刀か」
「私は自動拳銃が一挺、弾倉が二つ、装弾数は十五。あとはこれ、鋼糸って言うんだけどね。まぁなんていうかこれを射出して気管に巻き付けたり、あとは一応斬れないこともない。まぁどっちかというと高所にあるものに射出して、巻き取ることでそちらに移動する事につかうのが普通かな」
菅原に続いてニューがそう告げる。
「自動拳銃が一、弾倉二の装弾数九。あとは刀」
僕達の軍用銃は彼らのより装填に時間がかかる、鎖閂式だし、装填は上部から五発ごと。弾自体はこちらに来るときにそれなりに用意していたため数が多いものの使い勝手が良くない。弾がつきてからの次弾装填に時間がかかりすぎる。
回転式拳銃も同じ理由で数を相手する場合は使い勝手が良くない。
「火力が足りないな」
僕がこぼすと菅原はだろうと言った感じで溜め息をついた。
「まぁ全滅させろって訳でもないならやりようはあるかな。こちらには車がある、相手はありがたい事に堂々と舗装路を歩いてくれてる、つかず離れず荷台からひたすら来る的を撃ち続ければ数は減らせるでしょう」
ニューの案は確かにその通りなのだけれど、それはつまりひたすらあの緑の猿と弾が切れるまでおっかけっこするということに他ならない。
「奴等は速度はそれほど出ないな、少々すばしっこいが全速力の人間と速度はそれほど変わらない。まぁ妥当な案としてはそれくらいしかない」
無名のその一言で策は決まった。