序章
選ばなければならない。
何をと問われれば、死ぬ時を、死ぬ場所を、生きるための足掻きを、はたまた名誉の死を、ぶざまな死を、極僅かの生存の可能性を選ばなければならない。
奴は真剣な眼差しで僕をうかがっている。
選択肢は単純に二つ、どちらも絶望的であり、どちらも最悪だと断言ができた。
「さぁ、選ぶといい」
奴は僕がこの最低最悪な選択肢の中から、奴の提案した側にのるだろうという確信を持って言っている。そして僕はおそらくそれに賭けるしか無い。そんなことは理解している。むしろこれは助け船なのだとすら取れる。
しかし、簡単に割りきれるだろうか、近々死ぬことが約束されていたこの身だとはいえ、二度と戻れない何が起こるかわからないまったく未知の場所へ奴と二人で向かうなぞ死ににいくのと何が違うのだろうか。
ひょんなことからこちら側に残っていても生き延びれる可能性はゼロではない、限りなくゼロに近くとも、だ。
何故こんなことになってしまったのか、そう思い起こすと全てが時代のせいだと吐き出したくなってしまう。
「少しばかり、考えを整理させてはくれないか」
ことのはじまりはいつだったか、それから整理するには少々時間を遡らなければならない。