長い冬 到来
男は冬になると、山奥の工場にこもり、舞茸を作り始める。男が作る舞茸は、肉厚が分厚くて薫りが強く、食べるとかなり美味しい。
しかし、この国では春、夏、秋は気温が高いため、工場の空調設備を要しても舞茸のできが悪く、男が納得する舞茸を作ることはできなかった。しかし、冬だけは、男が納得する理想の舞茸を作ることができた。舞茸にとって、気候的に、この国では冬が合っていたようだ。だから、男は冬だけ舞茸を作ることにした。
男は、冬に舞茸でがっぽり稼いで、春、夏、秋は暇をもて余していた。昼間寝て、夜起きてという夜型人間となり、夜になるとバイクに乗って1人、外に出かけるようになった。男は舞茸作りだけでなく、腕っぷしも強くて、やがて、そんな男に憧れる何人かの男達が現れ、連れ添うように一緒にバイクで走るようになった。そして、男はいつの間にか、30人余りを率いる暴走族のヘッドになっていた。
ヘッドとなった男は、夜中に仲間達と町を暴走しては、酔っぱらって暴れているサイクロプス達とケンカをしたり、カジノで負け続けると大暴れした。
春、夏、秋、冬の女王達は、暴走族の暴走音が大嫌いだった。女王達が町中の中心にある塔で寝ていると、いつも夜中に暴走族の暴走音で起きてしまい、寝不足の毎日が続く。そこで、季節を冬だけにしようということになり、冬の女王だけが、いつまでも塔に滞在することになった。
これで町が静かになると思われたが、今度は、夜中になると町で酔っぱらって暴れる魔物が増え、平穏が保たれるようになったカジノでは、ギャンブル依存症になる人々が増え始めた。
暴走族を恐れて、冬だけ町で停滞していた魔王は、いつまでも続く冬に安堵し、夜中になると魔物の部下達を何人か引き連れて、金持ちの家を襲うようになった。
この町では、警察がうまく機能していなかったし、男ほど腕っぷしの強い者が、警察にも何処にもいなかった。
人々は魔王を恐れて、かと言って行く宛も金も無く、この魔物達で溢れ返った町でひっそりと暮らしていたが、季節が冬だけなので年収が落ち、生活は荒んだものとなった。
そして、金が尽きると自殺をする者が増え始めた。
このとき人々は、まさか暴走族が町の治安に貢献しているとは誰も思わなかった。




