プロローグ
人々は何故夢と言うものを見るのだろうか
夢―ゆめ―ユメ―
これは夢を売る一つの生物物語である…
+夢屋+
此処はとある町の街角にひっそりと佇んでいる店
『夢屋』
客足は少なく前を通る人達はまるでこの店に気づかないように通り過ぎてゆく
ある日の午後、背丈の小さく弱弱しい顔をした少年がこの店を訪れた
「すみませーん…?」
「はい、いらっしゃいませ」
この夢屋の店主は少年に優しく声をかける
金色の長い髪、優しい緑色の目、見た目とは裏腹に低く落ち着いた声
恐らく30半ばだろうその体は美しく痩せていた
「この店は何を売ってるんですか?」
オドオドした少年が少しうつむいて問うと
「この店では夢を売っているのですよ」
「夢…?夢を売ってくれるの?」
「そうです、勿論お金は要りません」
店主の言葉に少年は笑顔を見せ、じゃあ、楽しくなれる夢が欲しい!と答えた
その後、付け加えるようにボソッと少年がつぶやく
「最近、悪夢ばっかり見るようになったんだ…」
「解りました、では今時間はありますか?そこのベッドで一時間寝て頂きます」
「勿論、貴方が見たい夢を想像してから寝るのもお忘れなく」
少年は指差されたベッドに横たわる、すると一瞬にして誘われるような眠りについた
「では、貴方の悪夢を食べさせて頂きます…」
店主は少年の目に手を当て、店主自身も目を閉じ、およそ1分間位だろうか、静寂の時が流れた。
「これで、貴方の見る悪夢は全て私が食しました。」
眠った少年に笑顔を向けてカウンターに戻る
少年が目覚めた、その顔は来た時とは違う笑顔に満ち溢れていた
「ありがとう!」
少年が走り去ると店主は笑顔で手を振った
次はどのような夢が食せるだろうか。
店主はカウンターに座りながらもう走り去って聞こえないであろう少年に向けてこう言った
「全ての人が良い夢を見れるように…貴方の悪夢、頂きます。」