生まれた
「元気な男の子ですよ」
目を開けると一人の中年女性が安堵した表情でこちらを見ていた。
「あぁ、綺麗な髪だ・・・ナスティアと同じ白に俺と同じ黒か・・・」
「正真正銘、私とユーキの子供ね」
疲れ果てているがどこか満足気な声の主は若い男女だった。
それが、お母さんとお父さんだという事は一目で理解した。
そう、俺は転生したのだ。
「この子からすごい魔力を感じるわ、やはり噂は本当だったようね」
「あぁ、この子の世代はすごい事になりそうだな」
「お隣のユーリアももうすぐ子供が生まれそうなんですってね」
「王級魔術師と王級戦士の子供だ、将来有望だろう」
「そうね、でもうちの子も負けていませんわ」
「そうだな、なんせ、伝説の勇者と全種族の血を持つ子だからな」
そう言って父と母は嬉しそうに微笑み、俺はそこで眠気に負け意識を手放した。
「やっほー!」
突然聞こえた幼い女性の声に俺は意識を覚醒させる。
「・・・?」
「起きたね!はじめまして!僕の名前はアスティリア!覚えといてね!」
「は、はぁ・・・」
「も~、一応この世界では赤ちゃんなんだから、もっと子供らしい反応見せなさいよっ!」
「いや生まれたばかりの赤ちゃんが言葉を喋れませんよ」
「あ、それもそうだね、歳相応だとまともに話し合いできないか!あははは」
なんなんだ、このふざけた奴は。
「悪かったわね、ふざけた奴で」
え?俺今口に出した?
「僕は心を読めるのよ」
え、あ、は!?
「驚いてる驚いてるっその反応が見たかったのよ!」
はぁ・・・、それで、あなたは何者なんですか?
「見ての通り可愛い可愛い幼女よ?」
いや確かに、見た目は洋風の金髪美幼女って感じだけども・・・
心を読める幼女なんて俺は知らない。
「まぁ、別の名を神様と言うわ」
え・・・あっ・・・へぇ・・・そうですか。
本来疑う様な発言だが、俺は不思議と納得した。
「それで、神様が俺に何の用ですか?」
「そうね~、あなたに説明しとこうと思って」
説明?転生の事か?
「まぁ、その事ね」
そう言うと神と名乗る幼女は説明をはじめた。
どうやら、俺は俗に言う異世界転生をしたらしい。
先祖に俺の新しい体には伝説と呼ばれた勇者、そしてこの世界に存在するすべての亜種族の血が流れているのだと言う。
亜種族の中には絶滅したと言われている龍人族の血まで流れているらしい。
まぁそんなこんなでチート状態なわけだが、別に魔王を倒すとか世界を救うとかそういう目的で転生したわけではないとの事。
ほんとにたまたま前世の記憶を持ち、転生しただけだという。
前世の記憶を持つ、とは言ったが前世の事はあまり覚えてない。
知識がなんとなく残ってるだけで、前世の自分がどんな奴だったか、覚えていないのだ。
神はそんな俺を見つけ、面白そうだと言う理由で俺に神の加護を与えたらしい、神の加護というのは要するに目の前の幼女からの支援だ。
少女は既に俺にある能力を与えてくれているらしい。
<<全魔法適性>>
名前の通り、すべての魔法においての適性を持つのだそうだ。
この世界では、魔法は一般的に一人一属性までしか適性が無いらしい。
稀に二属性を持つ者がいるがそういう者達は優秀な魔術師として重宝されている。
それと、もう一つあった。
<<超適応能力>>
これは、先程の全魔法適性と名前は被るが、内容が驚くべき物だった。
神様は大雑把に説明したが、俺の推理が正しければこれは最強の能力だ。
毒を取り込めば毒が効かない体になる。
水の中を泳げば水中でも息ができるようになる。
こう言った能力で間違いないだろう。
まぁ使っていけばわかる事だ。
「まっ!精々僕に面白い物を見せてよねっ!」
神がそう言うと俺の意識は朦朧としはじめ、気付くとベッドの上だった。
ベッドと言っても柵のついた赤ちゃん用のベッドである。
周りを見渡すと、最初に見た小さな部屋ではなく、大きな部屋だった。
高級そうな家具が幾つか置いてあり、使用人らしきメイド服を着た人もちらほら。
・・・ん?
使用人の頭に何かついてる・・・あれは!?
猫耳だ!!!
<<鑑定を取得しました>>
うぉ!?
今の声・・・神様の声か?
<<正解だよっ>>
・・・・・・。
<<まぁ僕も暇だからね!超適応能力のナビゲーション!加護として受け取って!>>
はぁ・・・。
まぁ、助かるけども。
いつも神様に見られている感じがして嫌だな。
<<アハハハハハ>>
俺はその声を最後に眠りについた。
赤ちゃんは眠気がやばい。