4チョコ 親友、山野下
バレンタインにあわせようとすると焦ってしまうので、時期とか無視して書きます。
彼女のことを好きになったのは正直いつなのかはわからない。気づいたら好きになっていた。
冬にしては少し暖かい帰り道。俺はぼんやりとそんなことを考えながら歩いていた。
「――で? そいつのどこが好きになったの?」
「いやどこがと言われても全部としか答えようがない……え?」
隣を見るといつのまにか山野下がいた。俺は突然のクラスメイトの登場に声をあげてしまう。
「うぇあっ!!?」
「お前、驚き方変じゃね?」
いきなりだったんだから仕方ねえだろ。いやいや、そんなことより。
「お前こそ、いつからいたんだよ!?」
「は? 教室出た時からいたじゃねぇか」
まじか。気づかなかった……どんだけステルス性能高けぇんだよ。ん? こいつなんで俺の思考に入って来れたんだ? まさか……。
「……俺また声に出してた?」
俺がそう訊くと山野下は無言でうなずく。
山野下は俺の独り言をさっきまでずっと黙ってきいていたということか? なら、俺の彼女への好意はほぼ完全にこいつには筒抜けということだ。確かに山野下は口も堅そうだ。しかし、こいつはただのクラスメイトだ。そんなに気が合うわけでもない。そいつに秘密を知られてしまった……どうしよ。あっそうだ!
「な、なあ、山野下」
「ん? なに?」
俺がつっかえながらもたった今思いついたことを実行する。
「俺の独り言きいたってことはお前は俺の秘密をひとつ知ってしまったってことになるよな?」
「……さあ?」
俺の質問に山野下は興味がないように曖昧な返事をする。
「さあじゃなくてそうなの! これはもう弁償するべきじゃない?」
「は? んなわけ――」
「あるの! だって人の秘密黙ってきいてたんだよ!?」
山野下が反論する前に言葉を遮って自分の言い分を押し通す。山野下は呆れたように「はいはい」と適当に聞き流した。
「で、なにをすればいい?」
俺は山野下の目をじっと見つめて言った。
「お、俺の――親友になってくれ」
まるで時が止まったように感じた。心臓に悪い。だが、その沈黙はすぐに破られた。
「……親友ってなにすりゃいいんだよ」
困惑した山野下が訊き返す。てっきりイエスかノーの二択だと思っていたので、考えながら言葉にする。
「そりゃ、一緒に登下校して話して飯食って相談に乗ってくれたりしてくれれば……」
「それ恋人じゃね?」
「ち、ちげーよ!」
いや、確かにそうかもしれないけど。……別に親友になってくれって頼んだだけでこ、告白とかじゃねえし。そもそも俺にそんな趣味はない。ったく、慌てて取り乱しちまった。
「……まあ別に……なってもいい」
「え?」
突然、そんなことを呟くもんだからなんのことかわからなかった。
「だから、別に親友になってもいい」
!? 驚きのあまり、訊きかえす。
「まじで!?」
「まじで」
山野下がふっと笑う。
「じゃあ俺こっちだから」
そう言いつつ、親友は交差点を右に曲がろうとする。そのときになって肝心なことを思い出した俺は親友の腕に抱きつき、止める。
「おい、待てって!」
「なに?」
俺の行動に困惑しつつ、迷惑そうな目で俺を見る。
「なにじゃねえよ……相談乗ってくれんだろ?」
「……今から?」
「そうだよ!」
交渉の末、明日の昼休みに話を聞いてもらえることになった。
あの面倒くさそうな態度から察するに恐らく、今頃になって親友になってしまったことを後悔しているのだろう。正直なところ、そんな親友の反応に俺のメンタルがだいぶ傷ついたんだけど……。でも、オーケーしちゃった人も悪いんだよ!ってことで。
無言で手を振る親友に俺も手を振り返し、帰路につく。
すみません! こんなグダグダで。
プロットしっかり書かなきゃ。
一人称で書いていた筈なのに三人称になってしまって、一人称の練習もしなくては。(※既に直しました)