チョコ3 猫のストラップ
すみません。ストーリー構成なってなくて。見苦しいですが、読んでいただけたら嬉しいです。
これが今の自分の恋愛小説の実力だと思います。
目を覚ますと俺はベッドで横になっていた。周りを見回すとここが保健室だということに気づく。椅子には保健の先生が背中を向けて座っていた。先生は俺の目線に気づくとこちらを振り返る。
「んー? やっと起きた?」
「あ、はい」
俺は先生に礼をしてから保健室を出た。
先生に聞いた話によると、どうやら俺は転んだ際に思い切り頭をぶつけて気絶してしまったらしい。そんな俺を山野下が保健室まで運んでくれたようだ。保健室を出るときに時計を見たがだいぶ寝ていたようで、もう放課後だ。今日は部活がないので早く帰れる。というか、今日は彼女も部活はなかったはずだ。急がなければ。
教室はすでにホームルームも終わり、誰もいなかった。俺は教科書などを鞄にしまうと駆け足で玄関に向かった。
ちょうど玄関に着くと靴を履き替え、帰ろうとする彼女を見つけた。今日は友達と一緒ではないようだ。俺も急いで靴を履き替える。ふと、彼女が先ほどまで靴を履き替えていた場所を見ると、水色の猫のストラップが落ちていることに気づく。
これは恐らく彼女のものだ。前に鞄につけているのを見たからな。きっと紐が解けて取れてしまったのだろう。これは話しかけるチャンス!
そう思った俺はストラップを拾って彼女の後を追う。
彼女にはすぐに追いついた。そりゃそうだ。彼女が普通に歩いているのに対して、俺は小走りだったんだからな。
「あ、あの!」
声をかけようとするものの、俺の小さく震えた声は周囲の話し声にかき消されてしまう。
うるせえよ!と騒いでる連中に内心で叫んでから今度はもう少し大きな声で声をかけようとするが、彼女は手を振りながら小走りで離れていく。
俺の視線は自然と彼女と駆けていった方へと向けられる。
彼女の向かう先――校門の近くに同じく彼女に手を振る男子生徒の姿を見つけた。俺の足は自然に動きを止める。彼女はその男子生徒に親しそうに話しかける。男子生徒も彼女に笑顔で応える。他校の生徒だろうか。男子生徒は俺や彼女が着ているのとは違う制服を着ている。恐らく年上なのだろう。彼女と
男子生徒の会話が周囲の声に混じって聞こえてくる。
「また背伸びたね」
「ん? お前はもしかして縮んだか?」
「もー!! 意地悪さんは嫌いですぅ!」
「うそうそ! ごめんってば」
男子生徒を見つめる彼女の目、話しかける唇、ほのかに頬を赤らめた笑顔――その全てが心の奥深くに突き刺さる。そのままえぐられるように胸が痛む。
男子生徒と彼女はどんな関係なんだろう? 友達? 親友? それとも――
ダメだ……。頭の中が真っ白になる。
俺は彼女たちから目を逸らし、すれ違うように走り出す。
◇
あの男子生徒と彼女の姿が頭から離れない。
「おーい」
彼女に彼氏がいるなんて話聞いたことない。……いないって話も聞かないけど。
あ、やばい……泣きそう。
「大丈夫か?」
はぁ……。彼女にほんとに彼氏いたらどしよ。あの男子生徒、かっこよかったなぁ。彼女はああいうタイプが好きなのかな。
「やほー」
突然、彼女の声が聞こえた。俺は無意識に顔をあげる。すると俺の目の前には彼女――ではなく、山野下の顔があった。
「うわあぁ!?」
「……なに驚いてんだよ」
「な、なんか用か?」
俺が突然の山野下の登場に動揺していると
「は?お前こそどうしたんだよ……魂半抜けみたいな顔して」
山野下が訝しげに聞いてくる。
「え、そんな顔してたか?」
「ああ、なんか悩みとかあんのか?できる範囲なら相談のるけど……」
「べ、別にねーよ」
俺が山野下の申し出を断るとふーんとか言いながら席に戻っていった。
「……別に」
別に……ない……わけではない。が、しかしだからといってただのクラスメイトに話せるようなもんじゃないし。でも正直、山野下とのやりとりで少し気がまぎれた気がする。
俺は声に出さずに山野下にサンキューと言うと教室を後にした。気がまぎれたことだし、ちょっと出歩くかなと思っての行動だったのだが――廊下を歩いているとあわてる生徒たちとすれ違った。その直後にチャイムの音。
ん?とあまりの静けさに妙な違和感を覚えて数秒後、俺はあることに気づいた。
あの生徒たちはいつも時間ギリギリに登校している奴らだ。そして、そいつらが走り去った直後にチャイム。これらが意味すること……それはつまり、遅刻だ。
俺はあまりにぼんやりしていたからか、肝心なことが抜け落ちていたようだ。全力で教室に向かって走り出す。まあ、当然のごとく先生にはこってり怒られた。
そんなこんなでそのときの俺は昨日のことを少しの間忘れることができたのだった。放課後、ストラップを返し忘れていたことに気づくまでは……。
ご意見・アドバイスをいただければ直せるよう頑張ります。
酷評でもかまいません。
大丈夫、砕けた心は再生すればよいのです。