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無題  作者: 冒険したい焼きもろこし
第四章/Your Another World Offline/
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第四十五話/海老名さん×清田くん/

「…佑奈さん、なんで奥梅なんていうところに来ちゃったんですか?」


「あの、いや、話せば長くなるんですが…」

佑奈さんの話はこういうことだった。


ある日、崎雪のギルドで、一人の旅人に出会った。

受付で彼と会話を交わし、話が合う人だとわかった。

その後、彼が奥梅周辺にすんでいると知り、付いていこうとしたが、両親の猛反対により断念。

メールをやり取りする仲に落ち着いたが、やはり付いていきたくなり、半ば夜逃げのように家を出て、崎雪ギルド本部から奥梅ギルド支局に転勤。

ここ奥梅についたのは昨日のことだという。


「…ということなんです。」

少し顔を赤くして、佑奈さん。


「その旅人って…誰ですか?」

もしかしたら知人かもしれない。


「…えっとですね、上の名前は、キヨタっていうんです。私と同じ13才です。あれ?上戸さん?返事がない。ただの上戸さんのようだ。って、上戸さん?大丈夫ですか?」


途中から、もう彼女の言葉は耳に入ってこなかった。


商売人の後輩、清田くんに間違いない。たぶん。

最近あっていないが、旅行にいっていたという話は聞いた。


この二人が仲良くなっていたなんて。もう全力で応援しちゃうぞ!


「上戸さん?」


顔が赤くなった佑奈さんの頭をつい撫でてしまった。


「わわっ?え?上戸さん?」

目だけこちらに向けて、佑奈さん。


「…頑張れよ。応援してる。」

「はわわっ、ありがとうございますうぅ。」




しばらくその体勢のままいたら、手に輪投げの輪を持った優樹がやって来た。

「輪投げやろうよ!…そうき、どうしたの?頬が緩んでるよ?」

「まあ、色々あったのさ。気にすんな、優樹。」





「わわっ、はいんない」

「はわわっ、もう一回やっちゃダメ?」

「いいわよ」

「やったー!ヘ(≧▽≦ヘ)♪」


店の前で立ち話もなんなので、椅子を二つ出してきて、店の前に並べた。

四苦八苦してきゃぴきゃぴいってるちびっこ二人を見ながら、佑奈さんと談笑する。

「みなさん、可愛いですねー。」

「んまあ、うるさいときもありますけど。」

「可愛いじゃないですか。」



「佑奈さんはどこの部署でしたっけ?」

「営業第三部ですね。」

「ああ、あの受け付け業務の。」

「それは営業第二部ですよ。第三部は、管轄範囲内のクエスト製作ですね。管轄範囲内の現状に合わせてクエストを提供する部署です。上戸さんは?」

「僕は総務課です。」

「ええと、あの、雑用をしているところですか?」

「それは雑務課です。」

「雑務と総務の違いってなんですか?」

「明確にはわからないけど、雑務課は雑用を、総務課は掲示板の管理やホームページの管理、ギルド施設の貸し出し管理をしているんだよね。」

「会計は総務課じゃなくて出納課ですよね。…雑務課ってなにやってるんでしょうね?」

「さあね。」



ふと通りの方に目を向けると、空がこっちを見て突っ立っていた。

「空?」

「別に何を思っているわけでもないんだけど、壮樹、誰と」

言い終わる前に佑奈さんが動いた。

「上戸空さんですよね?」

「そうですけど!?」


次の瞬間、佑奈さんが叫んだ。

「あ!空さん!探してました!」


「…は?」

「…え?」





少しして。

「…ビックリした…」

空。


「ごめんなさい、空さん。ちょっとつい。」

うつむいている佑奈さん。


どうやら、空は崎雪ギルド本部から称号『BRAVE HUNTER OF ドスレベス』なる称号を貰ったようで。


「…ゆ、許してあげるわけではないけど、別に気にしなくていいからね。そんな、気を使って接してくれても嫌だから。べっ、別に、許したとか、そんなんじゃ無いから。」

ツンデレモード全開の空。たまによくこうなっている。

彼は軽くツンデレである。

「そんな回りくどく言わないでくださいよ」


「うぐっ。」





しばらくして、知人が一人やって来た。

「こんにちは上戸さん。…って、ええ!?なんでこんなところに!?」

「キヨタくん?」

「清田?!」

噂をすれば影が差す。

清田秋人くん本人である。


二人の会話は聞かないことにした。






ぼーっとしていたら、優樹が絡んできた。

「壮樹、頬が緩んでるよ」

「え?そう?」

「さては何かあったな~?」

「いや別になにも。」

「くすぐっちゃえ~!」


こういうのを、天使の笑顔という。

一瞬抵抗力を奪われたのが、命取りだった。

脇腹に細かな振動を感じた。

「え、ちょっと、やめて!」

優樹のくすぐりは、指が細いからかとてつもなくくすぐったかった。


「はは、きゃはは、やははのは、ははは。やめてくれ。」


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