第二話/村人化した。/
ふと、広辞苑と足の甲に返り血がかかっていることに気が付いた。
背中に寒気が張り付いてくる。
ぎゃぁあああああああああ!
すぐに意識が手からこぼれ落ちた。
…
…ぼんやりしている。誰か右にいる。顔は見えない。突如、彼は辞書をつかみとって誰かに投げつけた。向こうの方に見える血しぶきと悶絶する少年。顔は見えない。誰だろう。
痛い!突如頭痛がする。痛い苦しい助けてくれ吐く痛い痛い
…
…
!?
今のはなんだったのか。記憶があるようなないような。
目を開けてみる。
誰かの目がドアップで写っている。
「ねえ、大丈夫?」
「は?」
見慣れない少年と目が合う。誰だよ。
「ねえ、大丈夫?」
「ああ、」
「うなされてたでしょ、」
「まあ、な。」
なんだったのか?
「だいじょーぶ?」
くりくりした目がかわいい。
「大丈夫だけど、ここはいったい?」
「ええとね、なんとか村の長老の家だよ。」
布団のようなものに寝かされている。
介抱してくれたのか。ありがたい。
襖の奥で人が動く気配。
「起きたか」
太い声。
「うん、起きたよ」
「下がってなさい」
「うん」
偉い人でも来たか。
襖ががらりと開いた。
ベージュのTシャツにジーンズ姿のおじいさんが現れた。
「いかにも。私がこの村の長老、摘斗じゃ。先祖は茶畑でも持ってたんじゃろうな。」
と、摘斗さん。
「いちばん偉いんだよ!」
と、男の子。
そうかそうか。
一番偉いのか。
長老だしな。
「上戸壮樹です。よろしくです。」
「単刀直入で悪いが、あの猛獣はお前が倒したんじゃな?」
「まあ、そういうことになりますね。」
広辞苑のおかげだと思うが、今公開する情報ではない。
「ずばりと言うとじゃな…お前は、すごい能力を持っている可能性があるのじゃ。」
「…すごい、能力?」
男の子が割り込んできた。
そうかそうか。
それは僕のセリフだぞ?
「お前は黙ってなさい」
一蹴された。ドンマイ。
それはそうと、可能性って、なんだろうね…
「是非とも修行に励んでいただきたいんじゃ。この村の住民として暖かく迎えてあげることにするぞ。よかったかな?」
良かったも悪かったも僕が決められる訳ではない。
「はい。そういえば、上のお名前は、」
「摘斗じゃ。よくいわれるんじゃが、私の名は摘斗荘子じゃ。」
おい、まぎらわしいわ。
たまに下の名前と見間違える名字の人っているよね。
名前が似ているって?
ただの伏線に決まってるじゃないk…痛い痛い何をするやめろ!