第二十六話/王都中央国立国際卸売取引市場/
王都の中心地の病院で悲しくも入院していた僕は、国王陛下(15)とともに王都を散策するお運びとなった。
「空、おはよう」
「…うん」
「どうした空、元気ないな?」
「…朝は、低血圧だから、うん。」
「…お大事に」
要するに国王であるところの空と、二人きりで王都を回ることになった。
空は、王都に出るのすら初めてのようで、前日ごろから大はしゃぎだったらしい。
なぜ空に護衛がついていないかというと、この僕が護衛を兼ねているといった訳らしい。僕からすると、二人きりの方がいいのだが。
「…王都は朝から騒がしいね」
「…まあ、こんなものなんじゃないか?」
王都の少し北側にある、王都中央国立国際卸売取引市場。
全国各地や外国からの輸入品も含めた物、人、金が集まる、経済の中心だ。この卸売取引市場の周りはオフィスや金融の街であり、ビルが立ち並ぶ近代的町並みを呈している。
「ね、ねえ、朝ごはん食べた?」
と、空。
「いや、まだだよ。」
「…食べよ」
この区域は、新鮮な肉魚、野菜も多く出回っていて、飲食店のレベルが高い事でも知られている。
手近な定食屋の列に並ぶ。こういうのは、列が長い店ほど旨いものだ。
幸いにして数分で中に入れるようだ。
入った瞬間、奥から声が飛んでくる。
「へい、らっしゃい!」
空は肩をピクッと震わせると、その場に固まってしまった。
「…どうした?」
「いや、ビックリして…」
「さっさと席とろう、とられちゃう。」
「…そうしようか。」
ちょうど空いた二人分の席を確保する。
「壮樹、なに食べる?」
幸いお金はかなり持っているので、困ることはないだろう。
「…豚丼にしようかな。」
ここの店は、それなりに良心的なお値段だ。メニューを見る限り。
「じゃあ僕、親子丼で。」
「それでいいね?」
「別に。」
近くの店員を見つけて目を合わせ、手をあげる。
「へい!」
「親子丼と豚丼一つずつ」
「あいよ!」
「壮樹はなんでそんなに元気なの?」
「わからないよ、そんなこと。」
「…低血圧ってなおらないのかな…」
「…わかんないけど、祈ってるよ。」
「へい!親子丼と豚丼!」
「「…」」
デカイ。
直径20センチはあるどんぶり。それに山盛りになった食材。
「…いただきます」
「…食べようか。」
どちらがどちらだったか。
もそもそと親子丼を頬張る空を見ながら、豚丼を食べることにした。
旨い。
「…壮樹、」
「ん?」
「美味しい。」
「…確かに。」
「今日来て本当に良かった」
「こちらこそ。
「ん。」
旨い。




