第十七話/特訓/
翌々日。
昨日の抽選会ではなんの役職も引き当てなかった。そこで、自分の強化に徹することにした。スキル使いてえ。
「スキルは、頭のなかにイメージをつくって、それを体に送信する感じ。」
「土佐田さん、そんなこといきなり言われても…」
「ほとんどの人が生まれつきできるから…なんと説明したらいいんだ?」
次の瞬間、真後ろからいきなり声をかけられた。
「…これ使うかね?秘伝の練習用具。」
「木本さん!いきなり背後から来ないでください。」
僕の叫びを無視して話を続ける木本さん。
「この画面にスキル名が出れば成功。さ、手に握って。」
体温計の親分みたいな機械だ。握る部分と画面がある。
「…無視ですか」
木本さんの顔が厳しい表情になる。
「つべこべ言わんと。はよやれい。」
「す、すみませんでした。」
詩音ちゃんとふたりこうたいでやってみる。
「ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!」
「すてっぷ!すてっぷ!すてっぷ!すてっぷ!すてっぷ!」
「ステップ!ステップ!ステップ!」
「すてっぷ!すてっぷ!」
「ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!ステップ!」
「…つかれたからさきやっていいよ」
「ステップ!ステップ!『ステップ』!」
ぴょん
「…そーきが、しんかした」
体が半歩前に出た。
もう一度、やってみる。
「『ステップ』!」
ぴょん
もう半歩前に出た。
「…そーきが、しんかした、わたしは、しんかしないのに」
「…進化じゃないよ…」
「…」
「『ステップ』『スラッシュ』『ジャンプ』『ステップ』」
体が、大きく動く。なんだか変な気分だ。
「そーき、ずるい」
土佐田さんが優樹とやって来た。むこうはむこうで特訓していたらしい。
「壮樹、おめでとう。それでなんだが、きみと優樹君、明日はキャンセルについて教えよう。いいかい?」
土佐田さんマジ神。
「はい、喜んで!」
「わかった!」
「…おいてかれてる?わたし?どうしたらいいの?そーき、ゆーき、おいてかないで?」
「私土佐田が、明日も責任もってお教えします、これでいいかね?」
「…うん」




