第十六話/我に力をたべ。/
「じゃ、次は私かな」
「…モンスターいませんよ?」
「いや、ま、」
「は、はあ。」
「見てればすぐわかる。大丈夫、心配すんな。」
「あ、わかりました。」
何を繰り出すのか。注視しよう。
「『ナイアガラの弾幕』」
そう呟いて、土佐田さんが手のひらにいくつか玉を作り出す。そして遠く向こうの方、斜め前方にたまを発射する。
数秒後。
「ぐぎ、ぎゃあああああ」
森の奥からモンスターの断末魔が響いてきた。
「どうだ。本気を出せばもっといくぞ。密度、面積ともに上げられるからな」
「あ、土佐田さん実は遠距離攻撃だったんですか。」
「後は、『ハートフルヒーラー』とか。」
「…げんきになってきた」
「あ、しかも快復できるんですか。」
「後方支援はお任せあれ。強化魔法もあります。」
腰を折って一礼。動作が美しい。
「やべえ、カッコいいなさすが元バックマスター。」
バックマスターの称号。それは三年に一回行われる町の大会で後方支援が一番うまい人がもらうもので、後方支援者の鑑だ。土佐田さんはバックマスター十五代目で、いまのバックマスターは十九代目という。
逆にアタックマスターというのもあり、こちらは最高の前衛に与えられる。
「さ、最後は壮樹、きみだ。」
コノミクンが気づくとすぐ近くにいた。
「ここまで来たのが運のつき。お疲れ様、じゃあね」
広辞苑をもって殴る。
その一撃でコノミクンは呆気なく倒れた。
「みなさん、強いですね…」
「いや、年の功ってやつだろ。わたしの場合。」
「優樹も強いな、」
「そうきだって練習すればできるよ、水属性の魔法。」
「さすが名字が水谷…って、まあ、いいや。…詩音ちゃん?」
詩音ちゃんがふくれた顔で土佐田さんの膝に乗っている。
「どうせわたしすきるつかえないし。」
「僕も使えないよ?」
「そーきつかえないの?」
「うん。ま、練習するよ。」
「…いっしょにれんしゅうしちゃだめ?」
首を傾ける詩音ちゃん。手入れされたさらさらの髪の毛がゆれる。
「いいよ、別に。」
「君たちいつから兄弟になったんだい?」
「…もういわないで、おねがい、」
顔を真っ赤にした詩音ちゃん。優樹に頭を撫でてもらっている。
「ま、一緒に生活してる時点で兄弟姉妹みたいなもんだろう。」
「ま、そうだね、ぼくも兄弟みたいなもんだもん。」
「そ、その通りですね」
「…なんていっていいかわかんない」




