第十四話/プレゼントと手紙/
「お?」
朝起きたら、枕元に何か置いてある。何だろうか。
新品の見慣れない帽子と…手紙?読んでみよう。
『そーきへ』
詩音ちゃんの字だ。
『ソつもありがをう。わたしにちからのプレゼソトだよ。』
思わず吹いてしまった。
…詩音ちゃん、平仮名と片仮名の練習から始めようか。
解読すると、
『いつもありがとう。わたしたちからのプレゼントだよ』
なのだが。
「い」と「ソ」はまだいいとしよう。
「ン」と「ソ」もまあ許容範囲。
「と」と「を」はちょっとわかりづらいぞ。
「に」は普通の人には読めない。「た」だが。横棒が一本、明らかにおかしな位置にある。
朝食の席についた。ちゃぶ台を囲む。ひっくり返さないでね。
「…そーき…」
「…そうき?どうしちゃったの?」
「どうしたもこうしたも…」
絶賛頭を抱えている俺。
「詩音ちゃん、優樹君、あのね…傷つけるつもりはないのだが…壮樹はね、君たちの手紙の字にあきれているんだよ…」
土佐田さんの必死のフォロー。ありがとう。
そして項垂れる二人。
「…ごめんなさい…」
「…わたし…」
詩音ちゃん、何か思うところがあるようだ。
「詩音ちゃん?」
「…わたし、がんばってかいたのに…」
顔をあげずに言う詩音ちゃん。
「それは痛いぐらい伝わってくるんだけどさ…」
でも顔をあげない詩音ちゃん。
「…がんばったのに…がんばったのに…が、がんばっだのに…ううっ、ぐすっ、」
あ、これまずい。既視感。
「いや、別にそういう訳じゃないんだけど……わぁっ!」
いきなり、机の向こうに座っていた詩音ちゃんが机の上をジャンプして、こちらへ来た。
「ううぇーーん、ひぐっ、もう、もう、ぐすっ、そーきのばかあ、う、うわーん、えーん、」
胸のところに顔を埋めて泣き出してしまった。
「ご、ごめん、詩音ちゃん、あの、あっと、そ、そういうつもりは、全然、全くなかったんだ、うん。あ、あの、プレゼントと手紙、えっと、あの、本当にありがとう。」
頭を撫でながら、つっかえつっかえそう答えると、詩音ちゃんは涙と鼻水がついたまま聞き返してきた。
「ほ、ほんとうに、ぐすっ、そ、そうおもってる、の?」
すぐに声に力を込めて答えてあげる。
「そうだよ。さっきは本当にごめんね。」
「…そーき、の、ば、ばかあ!」
そういいながら再び泣きじゃくりつつ、ぽかぽかと殴り始めた。
いたくないけど。
気づいたら部屋には二人しかいなかった。
詩音ちゃんと優樹君いつあの帽子買ったのかな?
気になったけど敢えて気づかなかったことにして、聞くのは止めにした。
…
少し後。
「君たち、本物の兄弟かい?あんなにベタベタして。」
「と、土佐田さん!な、何言ってンですか!」
「…わすれて、おねがい…」
聞かれた瞬間に顔を真っ赤にした二人は、いつもよりずっと面白かったし、可愛かったという。
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