外伝1/おこづかいの使い道(金子詩音)/
そーきからおかねをもらった。
「これ使っていいからね。好きなように買い物してていいから。この町からでないで!できればこの辺りにいてね!」
と、そーきにいわれた。
「…うん」
「わかったよ!ありがとう!」
これはゆーき。
まちのしょうてんがいはけっこうおおきくて、いろんなおみせがならんでいる。ろてんもたくさんあって、げんきがすごい。
おこめや、おさかなや、ふくや、だがしや、いろんなものをかえそうだ。でも。なんかもやもやしたきぶんになってきた。どうしたんだろ、わたし。
「詩音、どうする?」
「…」
わたしは…どうしよう。そーきからもらったのにつかうきになれない。なんかつかえないきがする。もやもやしたきぶん。
「僕は何か駄菓子を買おうと思うけど?」
「…えっと」
だがしねえ…どうしよう。そーきになんかその、あの、そーきにこの、ええっと、なんかそーきが、ええっと、
「詩音、どうしたの?」
わたしがこまったようなかおをしていたら、ゆーきにはなしかけられた。しょうじきにはなしてみよう。
「…あのね、これ、だがしにつかったら、そーきにね、おかねとったようなきもちでね、その、そーきが、あの…」
なんか、こころのそこでおもうことはあるのに、ぜんぜんうまくいえない。けど、ゆーきはわかってくれた。
「あー、ま、そうだねえ…」
「…うん」
「何をするべきか…」
「…どうしよう」
「あ!そうきにプレゼントしよう。」
「このおかねで、そーきになんかあげるの?」
「そう言うこと!」
「…いいよ」
それならいいとおもう。
「なに買おうか?」
「…なにがいいとおもう?」
ふたりで、なにをあげるかえらんだ。
えらんだのは、あたらしいぼうし。つばがいっしゅうしてる、うすめのみずいろのぼうし。いつもいきかえり、そーきがあつそうだから。
ゆーきが、「ビックリ箱にしよう!」とかいったから「だめ」ってことわった。あれはいっかいびっくりしたらおしまいだもん。はしらのかげからとか、ちゃぶだいのしたからとか、わたしたちがおどろかせたほうがまだいい。そのあとすこしのあいだ、ゆーきはなんかおちこんでた。じごうじとく、ってやつだっけ?とさださんがいってた。ふだんはいいおにいちゃんなのにね。
そーきがもどってきてもそーきにばれないように、ゆーきのリュックのなかにいれて、そのあと
もってかえってきた。ばれなくてよかった。
わたしたちのかんしゃのてがみといっしょに、あしたのあさ、そーきのまくらもとにおいておいて。おきたらびっくりするかな。
この小説のヒロインというかアイドルの、詩音ちゃんです。ちょっと複雑で、本人の中でもまだよく分からない、でも壮樹に対して慕う気持ちがある、そんな詩音ちゃんを描きたかったのです。




