第八話/なんじゃこりゃ。/
「お前は俺を怒らせた…俺をつつき、侮辱し、威嚇した。そう。あの雨の日。」
いつだよ、と心中で突っ込む。
なにいってんのこいつ。ちょっといじられたぐらいで。
少し上から目線で話を聞いてやろう。
「あの日、俺は覚悟を決めた。必ず復讐すると。俺をいじったやつを、絶対に倒すと。その日まで、雨を続けてやる、困らせてやる、不快にさせてやると。いつか来る復讐の日まで、お前をさがし続け、灼熱の地獄に落とすと。」
こいつ中二病入ってるのか?
まずそんなに怒ることか?
情緒不安定か?
そんなことで村人を恐怖におとしめたのか?
その行為の罪の重さ、わかってんのか?
おっと、ついつい同じ土俵に乗ってしまった。
ヒーローはクールじゃないとね。
「うるさい。要点を簡潔にまとめてこい」
「つまりはだ。俺はお前を倒すと決めていた。よくも、よくもカタツムリだった頃の俺をいじりやがって…角と頭は出せても、手も足もでない、とってもか弱い俺を…だから、だから、俺はお前を許さない!どやっ!…命に変えても、俺はお前を許さない。お前が倒れる時まで、俺はお前を倒しにかかる!どやあっ!」
かっこいいことはいっているが、中身が中身なだけに決まらない。非常に残念なやつだ。
役者には向いているかもしれない。
「なるほど、俺に非があるわけか。カタツムリの癖に、変なことを言うな、お前。」
挑発してみる。さあ、どう出てくるか?
「うるさい。とにかく、決闘だ。それ以外の解決法は認めん。」
結論。意外とちょろかった。
「あっそ」
「開戦だ」
おもむろに桜総卿が右手をあげる。こちらも戦闘体勢に入る。空気が凍る気がする。後ろの人たちも息ひとつしない。
でも、そんなことを考える暇なんてなかった。
ほんの数秒の間のあと、桜総卿が超高速で手を降り下ろす。その手のひらには、闇であろうか、黒いオーラがかかっている。
「ちっ!」
とっさに左にジャンプ。ジャンピングキャッチの要領だ。野球なんて一体全体なんの役に立つのかわからなかったが、とっさに役に立った。優秀。すぐ右の地面が大きくえぐれる。ものすごい威力だ。
「うぎゃあああ!」
後ろから悲鳴。
まずい。俺が避けたことで、後ろにいた誰かに当たったか。完全に予想外だ。
「っく!」
俺の中で何かが壊れた。関係ない一般人を巻き込むとは…許さない!
同じ土俵に乗った感があるが、気にする余裕はない。
その一瞬の隙が命取りとなった。




