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最後の花火、彼女の勇気、永遠に残る時間

「さあ、ついたぞ!!」

俺たちは長い階段をようやく上りきるとそこはにぎやかで明るかった。

「結構人がいるんだな~」

そうここの神社の前で夏祭りは行われていた。

そこには家族連れや、老人夫婦、一番いなくてもいいリア充達が所狭しといた。

「これは去年より盛り上がってるな~」

「去年はあんまり人がいなかったから今年はどうなる事かと思ったが」

俺と拓也は安堵のため息を漏らした。

「ねえ!ねえ!早く屋台とか見に行こうよ!」

凛が待てない様子で言ってきた。

「よし!それじゃあてきとーに屋台でも見に行きますか!」

凛がその言葉を待ってましたと言わんばかりに拓也を引きずる形で人ごみに紛れていった。

またもや俺と美恵が二人っきりの状態になってしまった。

「お、俺らも行きますか?」

美恵はこくんとうなずいたので一緒に屋台を歩いて回ることにした。

「美恵さんはどういうの見たいですか?」

すると美恵は周りをきょろきょろ見回して何かを見つけたらしく指を指す。

その指の先にあったのはりんご飴の屋台だった。

「おじさん、りんご飴1つください」

代金と引き換えにりんご飴を受け取るとそれを美恵に渡した。

「お、お金……」

そう言うと自分の財布から小銭を取り出そうとする。

「ああ、いいよ。俺のおごりだから」

すると一瞬驚いたような顔をしたがやがてもじもじしながら「あ、ありがとう」と言って顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

やばい……こちらさんも凄くかわいい!

俺は感情を表に出さないようにするのに精一杯だった。

「やっぱり……あの二人なかなかいい関係じゃない?」

「そうかぁ?そんな風には見えないんだが……」

凛と拓也がりんご飴の斜め後ろにある金魚すくいの屋台から二人を密かに眺めていた。

「さっき、デパートで私たちが花火を選んでる間あの二人ほんとに少しだけど話をしていたもん」

「なんだ、少しだけかよ」

「美恵ちゃんにとって人と話すってことはかなり勇気がいることなのよ!まして相手はまだあまり知らない男の子!これは美恵ちゃんが幹司くんに好意を持っているとしか思えないわ!」

「けどあんまり好意を持っているきがしないけどなぁ……」

   ▼   ▼   ▼

俺たちは一通り屋台を見終えて拓也たちと合流したあと神社の近くの人の少ないところで休んでいた。

「いやー楽しかったね!こんなに楽しかったのは久しぶりな気がするなぁ……」

凛が寂しそうな顔で通りを見つめていた。

きた時と比べればかなり人がいなくなっており屋台の人たちが暇そうにしていた。

そんな通りを見つめているとなんだか切ない気持ちになってくる。

「じゃあそろそろ花火でもしに行きますか!最後はパーっとやりましょうや!」

「それさんせー!」

花火をするために河川敷に行くことになった。

河川敷は静かで周りには家も何もないのでどんなに騒いでも大丈夫な場所を選んだ。

「それじゃあ早速準備に取り掛かることにしますか!」

拓也が持ってきた花火の袋を開けてみる。

すると中にはかなりの大きさの発射台が4個も入っていた。

でたな殺人級花火!しかも4つも入ってるのかよ!

「さすがにここまで大きいの4つも入ってるとは思わなかったぜ」

拓也が笑いながらセットする。

それをわくわくした目で見つめる凛、ちょっと驚いたように見つめる美恵、恐怖的な意味でドキドキして見つめている俺。

「よっしゃ!準備完了!打ち上げはいつでもいいぜ!」

「じゃあちゃちゃっとてんかー!」

「あいよー!」

拓也が手早く4つの花火の導火線に火をつけるともうダッシュでこちらにきた。

河川敷の土手の上に上がり発射を今か今かと待つ。

そうして突如打ちあがる火の玉。

一直線に空に上がる。

そうして綺麗な円になって暗い夜空を色々な色で明るく照らし出す。

最初の花火は赤と黄色、次の花火は緑と黄色、次は紫と赤、最後は綺麗な大きい黄色の花火が見事に打ちあがった。

俺たちはただただ花火に見とれていた。

花火がこんなにも美しくそして何よりも儚さを感じさせるものだとは今まで知らなかったからだ。

「あっという間に終わっちゃったね……」

「ああ、そうだね……」

みんなの顔もどことなく寂しそうだった。

「さあ!帰ろうか!」

俺は無理やりながらも声を絞り出していった。

「そうだな……」

「もう、終わりなんだね……」

「……寂しい」

そう言って美恵さんは俺に体を預けて寄りかかってきた。

俺は驚いて美恵さを見るが、彼女の目にはうっすらと涙が滲んでいた。

よほど今日が楽しかったのであろう。

俺はその弱々しく震える体をそっと抱きしめた。

美恵は驚いたように俺を見つめたが何も言わずに嬉しそうに目を瞑っていた。

それを横で見ていた二人が温かい目で見守っていてくれた。

「さあて!帰ろう!いい思い出にもなったし!」

そう言って凛と拓也が先に行く。

俺も後に続くように立ち上がり歩こうとする。

すると後ろで美恵が言った。

「幹司君……ありがとう」

彼女はありったけの勇気を振り絞って言ったのであろう少し震えていた。

しかし俺はそんな彼女が美しく咲く一輪の花のように愛らしく、いとおしく何よりかわいいと思えた……

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