危険な買い物
最初に着いたのは近くのデパート。
「おし!そまず最初はここで買い物でもしようぜ!」
拓也はなぜか凄く張り切っていた。
聞きたいことがあったので拓也のわき腹をつつく。
「おい、夏祭り行くんじゃなかったのかよ?」
「そういうのは後にとっておくもんだろ?」
俺はそういうものなのか……という感じで流されてしまった。
みんなの後についていく。
最初に着いたのは洋服売り場だった。
「私今丁度新しい服が欲しかったのよね」
凛が嬉しそうな声で中へ入っていく。
「あ……凛ちゃん待って……!」
まるで俺たちといるのがよっぽど嫌というように凛の後を追っていった。
もうやめて!俺の純粋な心を傷つけないでください!ほんとにお願いします!
俺は目から何かがこぼれそうになったが何とか耐えた。
洋服売り場で約1時間弱見て二人ともお気に入りの服を見つけたらしく紙袋を持っていた。
「うん!いい買い物をした!」
凛は満足そうな表情を浮かべていた。
「ごめんね私たちの服選びにつき合わせちゃって」
「いえいえそんなに気を使わなくてもいいですよ」
「優しいのね。ありがとう」
凛は嬉しそうに笑った。
やばいっす、めっちゃ可愛いです!
俺が凛の可愛さに感動してると耳元で拓也の声が聞こえた。
「凛に手だすなよ?」
お前は年頃の娘を心配している父親か!
心の中で軽く突っ込んで腕時計を見る。
「そろそろ12時半回るけどお昼でも食べに行こうか?」
「そうだな、じゃあみんなでフードコートでも行くか」
俺たちは人が多い中何とかフードコートで席を取ることに成功した。
「やっぱり人が多いな」
「そりゃあなんたって夏休みだからな!」
なぜ拓也が威張ってんだよ……
▼ ▼ ▼
「さて、昼飯食い終わったら別の場所に移動するか」
「ねーねー今度はどこに行くの?」
凛が拓也に期待のまなざしを送ってくる。
「次は夏といえばやっぱり地元の夏祭りでしょ!」
「やっと本題か……」
「今日はうちの町内で夏祭りがあってそれにみんなで行こうって言ってたんだ」
すると凛は目を輝かせながら言った。
「そのお祭りの後にみんなで花火でもしようよ!きっと盛り上がると思うなぁ!」
凛はどう?どう?と言わんばかりに目線を向けてくる。
「おお!面白そうだね!もちろん幹司と美恵ちゃんもいいよね?」
「わ、私はその……どちらでもいいです」
「それじゃあ、俺も参加するって事で花火は拓也のおごりな」
「ちょっと待て!何で俺が買わなきゃいけないんだよ!」
「えー……拓也買ってくれないの?」
「いえ!自分が買ってくるであります!」
お前、どっかの兵隊が隊長にでも命令されたような感じになってるぞ!
「お前、ガラッと返事変えんなよ!まあいいか、よし!それじゃあそろそろ準備しますか!」
▼ ▼ ▼
俺たちは花火を選ぶために花火売り場に来た。
「凛はどんな花火がいい?」
「私はねー……ドカーン!と盛大に打ち上がるのがいい!」
「ドカーンと打ち上がるのかー……」
凛と拓也は俺らそっちのけで花火を選んでいた。
「……」
「……」
なにこれ、気まずい!
そう、俺と美恵が会話無しにただ立ち尽くしているだけの状態だった。
この気まずい空気を脱出すべく俺は美恵に話しかけることを決意した。
「美恵さんは花火の希望とかは無いんですか?」
すると案外普通の返事が帰ってきた。
「わ、私は出来れば良いので特にないです」
あれ?俺たちに少し慣れたのかな?
すると大きな袋を抱えて凛と拓也が戻ってきた。
「見て見て!超大型打ち上げ花火とプラスαが入った花火買ってきたよ!」
「ち、超大型打ち上げ花火ですか……」
何か凄く危険そうな物の様な気がする。
「これねー注意事項にこんな面白いこと書いてあったよ!えっとねー……この花火は人に向けないでください。人に向けて発射しますと体が吹き飛ぶ可能性があり、最悪の場合死に至ることがあります、だってさ!」
ちょっとまったああああああああ!
何だその危なすぎてしかも怖いことかかれている注意事項は!
これへたすりゃあ兵器じゃねーか!
人殺しのために使われる可能性がある花火なんて怖くて使えないわ!
拓也が気の毒そうに肩に手を乗せてきた。
「……ふっ」
ねえなんでこいつ笑ってんの!?マジむかつくんだけど!?
「さあ!気を取り直して夏祭りにれっつごー!」
「ごー!」
もうこの先不安で一杯なんだけど……。
神様どうか無事に終わるようにお願いします……。
俺、彼女を作るまで死にたくはないんです……。
この先を思いやられながらもみんなの後を重い足取りでついていった……