きっかけ
「はぁ……」
真夏の暑い日の7時42分に俺は唐突にため息をついた。
「なんで俺には彼女がいないんだ……」
現在高校2年生の桐谷幹司は悩んでいた。
俺は別に顔が悪いとか性格が悪いとかではなくてただクラスでも影がかなり薄いほうなために女子が振り向いてくれなかったのである。
「周りにはほとんどリア充しかいないのになんで俺はなれないんだ……」
気付けばもう高校2年生で少々焦っていた。
今は夏休みの真っ最中。
夏と言えば祭りのシーズンでリア充どもがうじゃうじゃ沸いてくる季節である。
たとえば一人で気晴らしに祭りへ出かけてみるとそこには大勢のリア充どもが腕を組んで歩いていたり、買い物に行く時もイチャイチャしているのを見た時もあった。
そんな中一人でいる自分が負け組みの様に思えて仕方がないと思ったことがしょっちゅうであった。
「今年中には絶対彼女を作って見せる!!」
俺は心の中で自分自身に硬く誓った。
すると下からインターホンが聞こえてきた。
玄関に向かうとインターホンを押した相手は勝手に家へ上がりこんでいた。
「よう幹司!何度も押したんだけどなかなか出てこないから勝手に上がらせてもらったぜ!」
「やっぱり誰かと思えば拓也かよ……」
今入ってきたのは俺の親友の細波拓也だった。
こいつも数少ない非リア充であった。
もともと俺がリア充になれないのはこいつと一緒にしょっちゅう出歩いていたからかも知れない。
しかし人のせいにするのはカッコ悪いので取り消しておく。
「んでどうした。突然家に来るなんて」
「突然はいつものことだろ。それよりさ!今から一緒に夏祭り行こうぜ!」
「え?夏祭り?なんでまた?」
拓也はあんまり人が多いところには行きたくないと言い張っていて珍しいと思った。
「な!いいだろ!ほら今すぐ準備して!」
俺は拓也の言われるがままに急いで準備して家を出た。
こいつ……何か裏があるな……。
俺は内心で疑いながらも拓也の後をついていく。
▼ ▼ ▼
歩いて数分後
最寄り駅の前に着いた。
「おーい!おまたせー!」
拓也が手を振る先には女の子が2人いた。
「あ!おそーい!5分遅刻だからね!」
「悪い悪い。幹司が準備するのに時間がかかってな」
一人は拓也と中良さそうに喋っていて、もう一人はもじもじしていた。
その女の子たちはとてもかわいかった。
拓也と仲良く話している子は髪が黒色のショートで元気が良さそうなことを思わせる顔立ちをしていて、もう一人は髪が茶色いポニーテールでおとなしそうな顔立ちをしていた。
「貴方が幹司君ね?」
さっきから拓也と親しげにしていた女の子が話しかけてくる。
「何で俺のことを知っているんだ、見たいな顔をしているわね。」
そう言うと拓也が間に入ってくる。
「なんと彼女は俺のはとこなんだ!」
拓也はなぜか勝ち誇ったように「HAHAHA!」と笑っていた。
拓也のはとこに目をやると「はぁ……」と残念そうにため息をついていた。
「ごめん、毎回こんなんで疲れるでしょ。」
「いやもう慣れたよ。こいつとは腐れ縁だし」
「なら良かった。そう言えば自己紹介して無かったわね。私は新井凛。そして私の横にいるのが親友の永田美恵ちゃんだよ」
俺は大人しそうな美恵に目をやると凛の後ろに隠れてしまった。
「あはは……ごめんね美恵は極度の人見知りなんだ」
なんかちょっとショック。
いやね人見知りとは分かっても俺の心が女の子に避けられたとしか認識してないんですよ。
丁度いいところに拓也が割入ってきた。
「それじゃあそろそろ行くとしますか!」
今拓也が入ってこなければ心が折れてたな。
2人に顔を向けると凛は行く気まんまんだが美恵は半泣き状態で「人多いところ怖い……」と言っていた。
この子連れてきて大丈夫だったんですか?と聞きたくなったがそれは心の中にしまっておいた。
これから苦労しそうだなと薄々感じ深いため息をついた…