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女王の国  作者: 結花
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泣虫姫




ずっと泣いていた。

母は私に一切の興味を示さず、むしろ疎ましく思われていた。

父の次に父になった男の愛を、母ではなく自分が受けていたから。

でもそんなのいらなくて。ほしかったのは母様からの愛情。

王女という名ばかりの立場で私は、毎日泣き続ける。

引きこもり、部屋で泣き叫ぶ。

母かあの男に呼ばれれば、部屋を出て最低限の愛想を振りまく。

こんな生活、もういや。

だれか、私を助けて…





その日も泣いていた。

部屋で一人泣いてる私に、誰かが声をかけた。

「助けてやろうか?」

聞いたこともない、男の子の声。

「えっ…」

だれ?

顔を上げると、目の前の窓の外側に、一人の少年が立っている。

なんでこんなところに人がいるの?だってここ…

城の、五階である。

一つの階でも高さは普通の家の1.5倍はあるのに、さらにここは五階なのだ。

近づいて、彼の足場を見る。

足のつま先しか乗っていなく、あとは宙だ。

体を支えている手を離せば、落ちてしまうだろう。落ちれば、命はない。

しかし彼はそんなこと気にしていない様子だった。

「ちょっと待って」

急いで窓の取っ手に手をかける。少年が立っていない方の窓を力いっぱい押して開けた。

「お、ありがと!」

しかし少年は入ろうとはせず、開いた窓の縁に移った。そしてそこに座る。

「あの…あなたは……?」

「俺は翔太。あんたを助けに来たんだよ、泣虫姫」

泣き虫、と言われても否定することはできなかった。本当のことだから。

「私を、助けてくれるの?」

少年はうなずいた。

「ああ」

とてもきれいな笑顔で。

このくらい日々から、助けてくれる…

喜びで胸がいっぱいになった。

「まずは…と。はい、食べようぜ」

少年はズボンのポケットから小さく包装された飴を取り出した。

「菓子屋のおばちゃんがくれたんだ。うまいよ」

受け取って、包装紙から取り出す。

出てきたのは、透き通るようにきれいな、赤色の飴だった。

「むぐ…おいしい…」

飴は、甘かった。果物でつくられたのか、砂糖だけではない、自然な甘みがする。

「うまいだろ?俺のお気に入り。泣虫姫には、もう一個プレゼントしよう」

そういってまた、ポケットから飴を取り出す。

「ありがとう…あ、あのね!」

言いかけた時、扉がノックし、侍女の声が聞こえてきた。

「王女様、お時間でございます」

「!!」

あの男に呼ばれていたことを思い出す。

「わ、わかったわ!今すぐ行きます!」

急いで返事をすると、目の前の少年に向き直る。

「あ、飴ありがとう!おいしかったわ…それじゃあ、またね」

少し悲しげな表情で、最後を締めると、少年はああ、とうなずいた。

「また来るよ、泣虫姫。今度会いに来たときは、泣いてちゃだめだからな」

「ええ…きっとよ、待ってるわ」

またこの少年に会える。そう思うと、自然と笑顔になれた。

少年は手を振ると、窓の外に消えて行った。

窓を閉め、侍女たちが待っているだろう廊下に歩き出した。

「あら…王女様、今日はお顔がよろしいようで」

待っていた侍女たちの内、一番前にいた莉奈という侍女が驚いていう。

「少しね、言いことがあったの。―行きましょう」

これ以上質問されたら少年のことを言いかねない。行くように促すと、莉奈もこれ以上は聞いてこなかった。

「お義父様…今日は何の御用で私をお呼びになられたのかしら」

血も繋がっていない、ただの他人であるあの男には、毎日呼び出されている。

しかも行くたびに、今日はいい茶が手に入ったから、とかしょうもない理由で呼ばれたことに気付くのだ。

「あらかじめ何の用事か言ってくれればいいのにね…」

「まぁ、それをおっしゃったら王女様は来られないとわかっておられるからでございましょう」

莉奈が答えると、そのすぐ後ろをついてきている伽耶という侍女がそれに続く。

「でも姫様も、毎日毎日呼び出しされたらそのうち行きたくないと思われるに決まっておりますのに…そうですよね、姫様」

すでに行きたくはないのだが、とは言えない。

しかし書類上は父子であるため、父に逆らってはいけないというマナーは守っている。

「さ、おつきになられましたよ」

「今日は庭園ね…これは、そう簡単に返さない、ということかしら」

あの男は、毎日違う場所に呼び出す。理由はよくわからないが、『気分』というものらしい。

侍女たちの苦笑とともに、庭園の門をくぐった。



庭園のちょうど中央あたりにある小さな泉の横にある四阿に、男はいた。

「ああ、よく来たな」

待ちわびていたかのように、男は顔を上げる。

「少し遅かったようだが…何かあったのか?」

ほんの少し遅れただけでこうだ。

この男のきらいは理由には、細かい、ということもあった。

「遅かったでしょうか…、女の支度には時間がかかるといいますから」

さりげなく交わすと、今度は自分から話をかける。

「それで、お義父様。今日は何の御用でしょうか」

「うむ…花が、綺麗だと思ってな。そなたに、みしてやりたかったのだ」

(はい、きましたどうでもいい理由―)

心の中で一人突っ込む。後ろで控えている侍女たちも同じことを思っているだろう。

「わたくしもよく、庭園へは来ます。わざわざ呼んでいただかなくてもよろしかったのですが」

やんわりとだが、突っ込んでゆく。

「一人で見ているよりも、二人で見ている方が花は綺麗に見えるものだ」

ふっと微笑みながら答えた男に、ただただドン引く。

(あんたと見るくらいなら一人で見てる方がよほどきれいよ!花もうれしいと思うわね)

心の中でまたも一人突っ込む。

しかしその表情笑顔そのものだった。もちろん、作り笑顔ではあるが。

「まぁ。そのお言葉、お母様におっしゃってはいかがです?」

「陛下にか?陛下は忙しい方故、花を見る時間もないのだ…仕方ない」

「お義父様が手伝って差し上げれば、少しは時間もできると思いますけれど」

「わたしは執務には手を出さないようにしている。陛下とわたしの考えは違うから」

「それは、違う人間がするのだから、考えが違っても別によろしいと思いますが。それよりも、」

手伝って差し上げた方が、お母様もお喜びになられると思いますわ。

というと、男の顔に憂いが浮かぶ。

わかりやすい男だと、微笑む。

「わたくしは少し、花を見てきます。お義父様は、ご自由に」

席を立とうとすると、ものすごい力で手首を握られた。

「なぜ気づかないんだ!鈍いのか、そなたは!!いや違う、気づかぬふりをしているだけだぁ!!!!」

さっきまで微笑んでいた男は、睨むようにしてこちらを見ている。

握られた手首を見れば、血の気が引いているのがわかる。

「お義父様、おやめくださいませ!!」

止めようとするも、男が手を握る力は強くなってゆくばかりだ。

「あんな女などには興味ない。わたしはそなたしか興味ないのだ!!!」

後ろで見ている侍女たちも、止めようとはするが、相手は女王の夫。口が出せないのだろう。

力はだんだん強くなってゆく。これ以上は耐えられない、と思ったとき、名案が浮かんだ。

「お母様!!!いらっしゃったのですね」

男の後ろを見、うれしそうに笑顔をつくると、男が止まった。

「陛下?」

男が後ろを振り返ると、今だ!と思い切り手を引き抜く。そしてそのまま、後ろへ数歩下がり距離を取った。

「だましたな!」

女王がいないことがわかり、手を離されたことがわかると、男は再び怒り出す。

「この!顔だけがいいただの子供が!わたしをだますとは!!」

「その顔がいいだけの子供であるわたくしに、なぜそのように色目をお使いになられたのです?」

余裕ぶって聞くと、男の顔からは余裕など一切消え失せたように青くなった。

「わ、私は別に色目なんかっ…!」

「つい先ほど『あんな女などには興味ない。わたしはそなたしか興味ないのだ!!!』とおっしゃっていたではありませんか。あれはどういうことです?わたくしに色目を使っていたからこそ、あのような言動をなさられたのではございませんか」

「そういうわけではっ」

「今日あなたがおっしゃっていたこと、お母様…女王陛下には内緒にしておきます。しかし、今後一切わたくしを呼び出して二人で話そうとなさることはおやめくださいませ。-莉奈、行きましょう」

くるりと男に背を向け、侍女たちのとこまでゆっくりと歩いてゆく。男に見せるために、ゆっくりと。

「はい、王女様」

最後に振り返り、男を睨みつけると、

「次はありませんから」

そう言った。


「お見事でした、王女様」

場を離れると、唐突に

「はい!伽耶は感動のあまり、涙がにじみ出てきました」

「…、死ぬかと、思ったわ。あの男の威圧感…よくやれたと、自分でも思うくらい」

「えぇ…。姫様、いつもは控えめなお方で…少し、驚きましたわ」

伽耶が、まるで自身の成長を喜んでいるようで嬉しそうに微笑んだ。

「そうね。いつもの私ならきっとしてないわ。こんな風に勇気がしぼれたのはきっと、」

彼のおかげだわ、と心の中でつぶやく。しかし、侍女たちには

「きっと、私がお母様の娘だからね」

と、うそをついて微笑んだ。



部屋に戻ると、どこか違和感を感じた。

「…、あ!」

窓を見れば、先ほどの少年―翔太が窓の外側でにかっと笑っている。

「よ!」

急いで窓に駆け寄り、窓を開ける。

また、窓の淵に立って少年は話し始めた。

「さっきはすごかったな。泣虫姫のくせに、泣かないで…頑張ったな」

「!?もしかして、見てたの…?」

「ああ。たまたま近く歩いてたら、泣虫姫と、右大臣殿、が話してたからつい気になって…」

なぜ庭園の近くなんか歩いていたのか、あの男のことを右大臣と呼んだのか、わからなかった。

だが、何も言わずに微笑んでいると、少年の手が頭をかするくらいに落ちてきた。

えらいえらい、と頭を撫でてくれたその手は、とても温かかった。


読んでいただき、ありがとうございました。

まだ第一話目で、全然話し進んでないですけれど…これからゆっくりとでも、すすめれるように頑張っていきます。

なので、次話からも読んでいただけると幸いです。


読みにくい、誤字、などなどあれば、コメントいただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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