一子一皮半ムケる(さかむけ?)
一子と工口のカワのムキ合い
£――――
~~もやもや…もや~~
きっと、工口くん・・・、今日も遅くなるんだろうなぁ~。
そりゃぁ、柔軟体操部としては名誉なことなんだけど~、
あんなに頻繁に色んな部から呼ばれてたら、絶~っ対、変だもん。
なんか、可哀相・・・。
でも~、私にして挙げられる事なんて何もないし・・・。
あ~あ・・・
~~ ・・・ ~~
「部長、部長・・・、部長」
何?もう、騒がしいなぁ~。
「里緒部長」
あれっ、呼ばれてる?
「里・緒・部長!!」
おわぁ~っ!
「あっ、あぁぁぁ、ごめん。な、何?」
「大丈夫ですか?ボッとしちゃって・・・。
部長、最近お疲れなんじゃないですか」
あぁ、びっくりした~
いっ、いけない。また入り込んじゃってた。
「・・・ううん、何でも無い、何でも無い、だいじょうぶよ、大丈夫」
あ~ん、もう。また、りんりんに変なとこ、見られちゃった。練習に集中しなくちゃ。
部長がこんなんじゃ、三校合同AV祭でいい成績なんて取れないものね。
しっかりしなくっちゃ・・・。
「部長、すみません。二人の演技を見てもらいたいのですが、宜しいでしょうか?
どうも、私じゃ上手く教えられなくて、どうしたらいいものかと・・・・」
そう、りんりんは今日も自分の練習よりも他の部員の練習を優先して見てくれていたのだ。
「ごめんなさい。いつもりんりんに頼ってばかりで・・・。
なんか、りんりんの方が部長に適任ね」
りんりんは、周りのことに良く気が付き、いつも率先して自ら部員達の面倒を見てくれている。
「そんなことないです。私は部長を尊敬してます。ホントです」
「ははは、有難う・・・」
その上、りんりんはとっても優しい。
その点、私ってダメ。全然、周りが目に入らないんだもん・・・。
「・・・来年も柔軟体操部は安泰ね」
「はい、もちろん大丈夫です。塩南先生がいらっしゃる限り、この第一スタジオは、他の部には渡ること何か絶対にありませんから」
りんりんは、自分への褒め言葉もあっさりとかわしてしまう。ホントに出来た子だ。
「そうね。その為にも二人にも頑張ってもらわないと・・・」
「でも、どうして塩南先生はコンビ部門に、あの二人を押されたのでしょか」
それは私も思うところだ。自慢じゃないけど、私達の柔軟体操部は人材が豊富。正直なところ、私も全く想像もしていなかった人選だった。
「きっと、千乃君の演技と合うのだと思う。大化けする素質が塩南先生には分るのよ。先生を信じて二人を支えましょ」
私が言うまでも無いことなのは分かっている。彼女が一番二人を応援しているのだから・・・。
「はい、そうですね。きっと、当日はガツンとやってくれますね」
「そう、大丈夫よ。後は私に任せて。
りんりんには、御何部門で頑張ってもらわないとならないしね」
とは言うもののホントは不安も大きい。私に何が出来るだろうか。りんりんがこんなに苦労しているのに。
「有難うございます。
じゃあ、部長お願いします」
「了解、任せなさいって」
と笑っては見せるが・・・。
「はい」
りんりんは、ニッコリ笑って頭を下げると、駆け足で部室へと戻って行った。
さてと、二人の様子は・・・と言うと・・・。
あらら、こちらの顔色を窺いながら、オドオドと練習をしている。
まったく・・・。
校内部活ランキング1位に練習場として与えられる第一スタジオは一般の学校の体育館並に広い。二人は私の位置から少し離れた一番奥で練習している。ちょっと、大きな声で気合でも入れてみようかな~っと。え~と、
「島君と衣代ちゃん、おどおどしないの!
自信持って!」
三校合同AV祭のコンビ部門で対抗戦に出場出来るのは二組だけ。
塩南先生は、その一組をこの一年生の普通科の島宇摩君と、二年生の御手茂井衣代さんの二人を、コンビとして組ませることを前提として強く推したのだ。
「だめだめ、もっと擦って、擦って、大胆にやらないと~、イチ、ニイ、イチ、ニイ・・・」
『はい、部長』
いい返事だ。
確かに、人一倍真面目ではあるし、しかも素直だ。
私もそれには評価が出来る、が・・・ぎこちなさ過ぎる・・・。
うんっ・・・でも、工口君が色んなアイデアを出してくれているから、それなりにこなしてくれれば大丈夫かも・・・何て楽観過ぎかな?
いや、きっと工口君がなんとかしれくれるはず。
~~もやもや…もわぁん~~
工口く~ん・・・。
今日は、マッサージ部でお手伝いか・・・。
ホントは工口君とこうやって一緒に練習して汗掻いて、コンビ部門に出たかったなぁ。
そして、本番ではみんなの前で、ちょっと恥ずかしいけどキスをするの。それで~、ああして、こうして・・・。
~~ ・・・ ~~
「部長っ、部長、次はどうすればいいですかっ、部長~・・・」
いけない、また入り込んでじゃった・・・。
「あっ、ごめん。じゃあ、次は・・・」
工口君もきっと今頃はマッサージ部の応援、汗だくで頑張ってるんだ。私も頑張らないと。
そうだ!後でタオル持って行ってあげよっと。
――――£
★☆ 第26話 ★☆
☆★ ♂ 一 子 ♀☆★
★☆一皮半ムケる★☆
☆★(さかむけ?)☆★
ベッドに伏せる俺の体を無駄と毛の無い長い脚が挟み込んでいる。
そして、上向きの背中の中央を走る背骨を挟んで、二筋の強い意志が前後する
それは、時には甚振る様に強く、
時には宥める様に優しい。
一押し一押しに思いを込めた、一瞬たりとも手を抜くことのない労わりは、
常に体温以上に熱く周囲へと伝播する。
これが、稲荷家一子のマッサージへの情熱。
部長としての埃。
しかし・・・
俺、千乃工口の心はそこには無い!
残念ながら俺の心を捉えているのは、その動きに同期する”硬軟の天使”であった。素直な感触表現で申し訳ない。
今、毛の無い両脚の行き止まりで、およそ幅4.5cmの彼女は、決して臀部との接触する位置関係を変えずに、ゴロゴロと前後になぞり上げたり戻ったり。フル密着で、いたいけな俺の心を絶えることなく弄んでいる。オイタな天使。
そして、その動きは俺を背負ったベッドを小刻みに揺らすものだから、天使が笑うが如き?小気味よい音をたてるに至っている。
だが・・・
所詮は人の裏面。イメージは先行するものの、その実は微妙な刺激。
一気に反応しそうで怠惰な収束で留まる体液の流れ。
それなのに・・・
このじれったい中で生まれるモヤモヤとした快楽は、その先を俺に期待させること多大。
そこから離れたくない俺の心が此処に存在するのである。
正直、これはこれで遣る瀬無く気持ちいい・・・。
なのだが・・・
ちょっと、この天使の微笑みは、煩くはないだろうか?
AV祭の練習にしては異様に激しい等々、その他諸々思われはしないだろうか?
俺は、どうにもこの音が気になってしょうがない。
気に成り出すと、その音ばかりが耳を突く。そうなってしまうと、次第に音が大きく聞こえて来るのが人間の心理。いや、本当に大きくなっているのかもしれない。
もし、衝立の向こうで、この音の是非が話題にでもなったらどうなることか?今後、俺の人間性が、学校中でどの様に評価されるのか不安で堪らない。
拙いだろうか?
うつ伏せの俺には、正確に一子の動きは分からないが、音と感触からはどえらくエロい腰捌き、いや、天使の大爆笑なのは直視するまでもなく認識し得る。
お笑い好きの俺としては、このまま一子の天使を笑わせ続けたい。“笑う○門には天使来たる”と言うことで、とてもおめでたい。当然このまま続けたいところだが、ここで問題なのは、その損得バランスだろう・・・。
守るか、はたまた、責めるか?
平常心であれば安易に算出出来る損得計算も、欲とは恐ろしいものだ。こんなことも今の俺には至難の業。
さて、工口よ、どうする(…前向きに汗)。
ドキドキしながら続く、俺の葛藤。
こんな千載一遇の状況、簡単に逃してはならないと思うのは当たり前だったり後ろだったり。
一秒、また一秒とジリジリとアディショナルタイムを要求する俺の煩悩。
チクタク、チクタク・・・ボ~ン、ボィ~ン。
快楽と不安の狭間で、この状況を2~3分は引きずったことか・・・。
ふと、冷静に周囲に耳をやると、俺の心配を他所に衝立の向こうからは、一向にこちらを気にする気配が感じらない気がする。いや、それどころか、聞こえてくるマッサージ部員達の練習音は次第に熱を増す一方である。
ビビリ過ぎだったろうか?
もしかすると、俺が”気にしい”なだけで、実際にはこのマッサージ部の練習場である第二スタジオのザワメキの中に溶け込んだ一つの雑踏の範囲に過ぎなかったのかもしれない。いや、そうに違いない!
で、あればもう少し、いいかもしれない・・・のじゃないかな?
で、でも・・・だ、この衝立一つでは防壁としては余りに薄い。それに、キャスター付きの2メートル程の可動式と来たものだ。キャスター等はロックを外せば、ブラより簡単に楽々ずらすことは可能と来ている。城の城壁としてはブラのホック未満だ。
だったら、一子にもっと大人しく腰を動かす様に言うという手もあるが、裏面からの刺激では、弱いと意味が無い。それに、一子からその理由を問い質された時に非常に言い難い。
一体、何がベストとなのか・・・。
そんな俺の思考など考える由もない一子は何の躊躇いも無く、今度は自らの天使をハンパなくうねらせる。では無くて、微笑ませる。
もちろん、目的はマッサージではあるのだろうが・・・いや、マッサージ?違うだろう。マッサージ部も所詮はAVビデオ撮影大会の為の俳優育成が目的なのだ。
そうだった!主は、微笑みの方なのかもしれないのだ。
ここはAV界の高校。三校合同AV祭を控えての練習であれば、この程度は当たり前のことではないのだろうか?
んっ?でも・・・、マッサージ部は、マッサージにも真剣に取り組んでいるとも聞いている。
どっちが何で、どっちがあれだ?
マッサージ部におけるマッサージの位置付けが今一理解出来ない。未だにAV界のこの辺りの感覚を掴むのは非常に難しい。
でも、ちょっと待てよ。これを解決するには我が柔軟体操部での柔軟体操の位置付けを考えればいいのではないのか?
いつもの練習を考えて見ろ工口・・・。
チクタク、チクタク・・・・・・相変わらず一子の腰の波動が俺の臀部を挟んで前方突起に伝わって来る。
で、どうだ?
いや、分らん。
俺にとっての日々の柔軟体操部の練習は、エロい柔軟体操に真剣に取り組んでいると言った感覚でしかない。接触は有っても健康的なものだ。もちろん、俺にはその“健康”でも十分にエネルギーの補強には繋がっているのだが・・・。
しかし、マッサージ部は柔軟体操部とは違い接触が基本のはずだ。であれば・・・。
いやいや、それも程度問題だろう。客観的には見なくても、一子の腰の動きは間違いなく物凄い。それに、俺の演技支援の立場からすると、いかに一子の要望とは言え、練習でここまで塗れてもいいものだろうか・・・。
大体にしてこの擦り付け、失礼、微笑みは当然反作用として一子自身も感じているはずである。少なくても物理的には何らかの何某くらいはあると思われるが・・・一子ちゃん。
全く、一子の意図するところは不明だが、ただ、俺の方の体液は緩やかだにポテンシャルを上げているのは揺るぎのない事実。
その影響で起った体内の片寄りは、一部で余剰を初め、おかげで俺の臀部の下にあるオートジャッキはベッドを押し付け、俺の背に乗る一子の体を持ち上げつつある・・・。
・・・な、訳は無いが、少なくとも余剰の体液は体の当たり具合から、一子のその形状を連想しようとする妄想エネルギーに変換しつつある。
この、一子の体が前掛りになった時にあたる骨ばった、いや、骨の・・・その・・・あの、この・・・@$#ж㊥Φ ***ちょっと、自主規制***
だからと言って、決して俺が特定部首の形状マニアな訳では断じて無い。意識がその一点に酔いしれてしまえば、健康な若武者ならば自然、そっちの流れになるのは通常のことではないだろうか。いや、そのはずだ。
ただ、その想像に色が付いているのは、我が母方家系独特のDNAの羅列を受け継いだのが恨めしい・・・。
てな、余計なことにばかりに頭を使っていては、(一応の)本来の使命が果たせはしない。それあっての役得なのだ・・・長い目で考えろ工口。
でも、でも、もう少し、もう少しだけ役得に酔いしれたって、いいのでは・・・。
・・・いやいや、これしきの事で心乱されては、俺の邪念が一子にバレてしまう。せめて表向きくらいは平静を装えるくらいの余裕がなければAV界男優として失格だ。
こういう事は、事象の狭間、狭間で何気なく楽しむのが、文化人の作法と言うもの。
取り敢えず余裕を見せる為にも、万が一部員達が衝立を超えて来た時の為にも、いや、俺の使命を果たす為にも何らかの演技っぽい会話くらいはしなければならない、のだが・・・。
・・・ん~、
何か適当な会話はないものか・・・と、考えても気の利いた言葉は出ては来ない。
浮かんで来たのは、
「これは通常の練習でもやるの?」
いかん!ただの本音を口走ってしまったじゃないか・・・。
口に出してからアレだが、何て自分を晒した質問をしてしまったのだろうかと、顔が熱くなってしまう。これでは、まるで俺がこの一子のマッサージに何かしらの特殊なものを感じていると言わんばかりではないのか・・・。
「ああ、そうだでしたわね。ごめんなさい。
習慣で、つい基本から始める癖がついてしまってるのね・・・」
と、恥ずかしそうに顏を赤くする一子。
そうなのか?
これで基本なのか?
全然、普通の問題ない有様だったのか?
だったら、素晴らし過ぎる部活じゃないか!
いやいや、そうじゃなくて・・・と、この応えから行くと、一子は俺の意識を疑うどころか練習用の基本マッサージをしてしまったことを恥じている様に思える。
なるほど、余りに、基本過ぎて俺の言葉の過ちを逆手に取ってしまったと言うことか・・・。
取り敢えずホッとする俺。
しかし、これが基本となると、応用段階に入ると何が勃発するのか計り知れない。きっと、とてつもなく凄いことになるに違いない。
期待がもっこ~り膨らんでしまう。
いやいや、また直ぐに余計な思考が脳裏をうろうろし出してしまう。全くエロいDNAだ。
さりげなく、さりげな~くと楽しみながら、次の言葉を考えろよ文化人。
と言っても、言葉とは意識するとなかなか出て来ないものである。
そんな、思考の遅さで出来た沈黙も・・・。
「なんか、汗かくわね。熱いでしょ。ズボン脱いだらどうかしら。
その方が、先ほどご要望していた腰から脚にかけてのマッサージもし易いですわ」
一子が淡々と破ってくれたその言葉に、勝ち鬨が俺の内耳をこだまし、早くも若き血潮は敏感に反応してしまっている。
落ち着け、落ち着け。文化人の端くれとしてこんなことで動揺してどうするのだ。そうだ、この問いかけの最良の回答を探すのが先だ・・・。
しかし、こんな時なんて応えるのが一般AV界の男子高校生なのだろうか?
いや、それよりも、俺にメリットのある回答は何なのだ?
間はそんに空けられないぞ。不自然だ。意識している証拠になる。
落ち着いて急げ。ベストアンサーを探せ・・・。
柔軟体操部でのその言葉のポジションなら検討は付くが、一体、マッサージ部での“ズボンを脱ぐ”はどの辺りの表現なのだろうか?
全く分らない???
ここは、取り敢えず場繋ぎの言葉でも・・・。
「ズボンを?」
貧弱な感性。
こんな時の言葉のストックのない自分が情けない・・・。
「そうよ。ああ、そうね。私が上に乗ってるから脱げないわね。
脱がせてあげるわね」
と・・・。
うわ~おっ!
あっけらかんとした、有り難いご配慮恐れ入ります。と言いたいところだが、肯定してしまってもいいものなのか?
それともここは、ご遠慮差し上げるものなのか?
どうするのが一般的なのだ?
脱がされるのが普通なのか?
或いは、自分で脱ぐべきか?
それとも・・・。
そりゃあ、何でもいいから俺だって脱ぎたいさ。脱ぐのは嫌いじゃない。でも、一対一のプライベートならばだ。
今は、悲しいかなマッサージ部に演出支援に来ている強力異界助っ人の身だ。それに、衝立の向こうでは、70人近いマッサージ部員たちが、来たる三校合同AV際の練習に真剣に汗をながしているのである。恐らく、体の揉み合いと、俺の提案したポールとの戯れ(ポールダンス)ではあるが、それにしてもこの場にそぐわない特異な行動を取る訳にはいかないだろうよ。
何て考えている内に、一子は跨っていた新牡馬の臀部から降りると、既にベルトを外してあった俺のウエストに手を這わせ、僅かに指先をズボンの中に差し込ん出来た。
その滑やかさにゾクッとする。
ええい、もうどうでもいい。ここまで来たら、もちょっと行ってしまえ。きっと、これも普通のことに違いない。
そうに決まっている。と言う事で・・・。
この微妙な滑やかなタッチは、核心部からまだ距離があるとは言え、二十数センチのテレーポートを可能とし、妙なエキスが込み上げて来る・・・。
一子は、俯せの俺のウエストに僅かに手を差し込み、そのまま両側から抱え込むようにして、俺とベッドの間に手を回し込む。そして、両サイドから掴んだズボンを見事に操って意図も簡単にズボンのホックを外した。更に、両サイドにズボンを引っ張ると、ファスナーはジリジリと音を立てて、その門を開けて行くのであった・・・。
と、こうなると、悲しいかなズボンの擦れも微妙な刺激となってしまい、幸か幸か、幸せです。
この時、若干腰を浮かせていた自分の深層心理に迷いが無かったことを知る。
「ちょっと、脚を開いて下さる?」
今度は、脚を開く? 無防備に?
「あ~、そうそう、それともスペシャルの方が良かったかしら?」
「ああ、まあ・・・」
と、何気なく肯定するが、言ってしまって心はドキドキ。そして、ワクワク。
「じゃあ、スペシャルだったら脚は閉じたままでいいわ」
しまった! 裏目に出たか?
でもスペシャルなのだから、きっと何かが起こるはず。ここで落ち込んではいられない。男の子は、今とっても元気棒。
一子は丁度俺の腰の辺りの両脇に平手を付くと、
「よいっしょ!」
とばかりに、
「何を・・?」
して下さることぞ。
「振り向かないで・・・」
振り向かないでって、ちょっと待て。
そそるじゃないか、その言葉・・・。
何を?
ま、まさか、素肌で感じたいとか何とかで、脱いでたりなんて事が有ったりとか・・・いや、それでは、手の位置が違う。
一体、何が始るかと、ちょっと振り向いてみたりして・・・なんて。
「・・・下を向いてて。危ないから」
怒られた。
「はっ?危ないって・・・」
すると、大きな硬い物が俺の臀部の柔らかい部分をぐりぐりとする。
何だ、それ?
も、もしかして頭なのか?
膝頭でも、目頭でもないし、もう一つの頭はハナから一子には付属されてはいないだろう。であれば・・・、
俺は一子に叱れないように、首筋を命一杯伸ばして覗こうとする。そして、横目の先に僅かに見えたのは、両足を揃えた綺麗な倒立姿勢を保った頭蓋骨でのマッサージ。
凄過ぎる・・・余計な方面に凄すぎる!
何故、ここで頭なんだ。俺が使うならまだしも・・・と言う突っ込みより先に、その体勢、危ないっちゅうの・・・。
ヨロケながらも、必死に上腕二頭筋で支えている姿勢は今にも倒れそうで危険極まりない。
「いやちょっと、待った。もういいって・・・」
流石にマッサージ部部長とは言え、そんな姿勢は長くは持たない様だ。その技は、ものの二~三十秒で終わったが、俺が何と言おうと納得行くまでやり切る一子のプライドに感服。そして、
「次はと・・・」
一子は、先へ進もうとするが、その前に確認したいことがある。
「ちょっと、待って。その前に今のは何もの?」
「凄いでしょ。まあ、マッサージ部でこの大技が出来るのは、私を含めて5人と言ったところね」
と自慢げである。
はっきり言って、聞きたいのは自慢話ではない。今のがスペシャルマッサージであるか否かである。
しかし、この自慢で充分にスペシャルであると言うことは理解した。
恐らく、一子は本番のAV祭でもこの技を披露したいのだろうが、俺の演出構想には雑技は必要ないし、煩悩にも然りだ。今後はこれ以上スペシャルには触れない様に注意することにする。
とは言え、実はこれが今のAVビデオ撮影大会の主流なのである。
恐らくは、AVビデオ大会におけるマッサージも、最初は一子が最初に行なった基本形から始まったのだと想像する。だが、同じ事ばかりでは飽きるのが人間の能力。敢えて能力と言わせてもらう。
その能力への対応として演技をアレンジして行った先の主流が、今の一子の様なアクロバチックな形なのだ。と、日々遅くまでこの世界のAVビデオ拝見して研究している俺には容易に想像が出来る。断じて研究の為の視聴である。
もちろん、AVビデオ大会の演技における様々なジャンルの流れも、そちらの方に向かっているのだ。
「いや~凄い凄い、今のは凄い。ホント驚いたのだけど・・・」
色んな意味で。
「・・・今回はリアルなマッサージの中から生まれる感情を演技するのを技としたいんだよ。その技には会話を入れないとならないのだけど・・・」
と言う俺に、
「その技と言うのが、柔軟体操部で使っている、所謂“エロ”にあたるものなのかしら?」
意外にも、何で知ってるこのAV界には無い”エロ”の概念。
「エロをどうして(知ってるんだ)?」
柔軟体操部の誰かに聞いたのだろうか?取り敢えず確認。
「ほら、今年度の柔軟体操部の目標の“エロと制服”のエロのことですわ。
べ、別に、その目標のマネをしようと言う訳じゃないのよ。ほら、塩南先生も高く評価していると言う訳ですし、それに、宝家先生も、他の部の方々も興味を持っているようなので、生徒会長としては、その~、知る必要があると、そう思った訳で・・・」
だ~から、誰からと・・・。
「そのエロのことを誰から・・・?」
「あら?転校前の高校では行なわなかったのかしら?
年度初めの部長会議で、本年度の目標の発表をするのよ。そこで、千乃さんが部内で提案した“エロ”と言う概念が話題になったのよ。もっとも、お宅の部長の里緒は余り上手く説明出来なくて、途中からは塩南先生が説明したのだけれど・・・、まあ、あの子じゃあ、説明は無理よね」
そうだったのか、“エロ”がそんな一人歩きをしているとは思いもしなかった。それで、一子も俺が無意識ではあるが柔軟体操部に広めてしまった“エロ”の概念に興味があったって訳か。
であれば、これ幸い。利用してしまえってな具合で、
「そうそう、もちろん、これこそエロの基本なんだよ」
と言ってしまう。
「そ、そうなの。だったら、それは理解したわ。・・・。ん~、でも、それだけでは物足りないでしょ。それはそれで考えるとして、やっぱりスペシャルは入れないと絶対ダメよ」
と、やはり不満半分、不安半分のほぼ不服な顔付き。
もちろん、俺だって趣味で言ってる訳でなく、実際にイケる自信があってのことだ。しかし、AV界の流れから行くと、確かにそれだけでは納得いかないのも分らないでもない。であれば、取り敢えずその辺りはグレーゾーンにしておくとする。
「うん、それもそうだ。でも、僕には具体的なマッサージは分らないから。スペシャルマッサージを何処で入れるかは、後で宝家先生とアレンジしてもらうと言うことで。台詞の部分を先に作ってしまおうと思うんだよ」
「あら、台詞を作るって・・・そんなに台詞を入れなきゃ“エロ”にはならないものなの?」
「柔軟体操部では、それが普通のことなんだけど・・・」
と、更にデマカセの上塗りで囃し立ててみる。これが一番効くだろう。
「もちろん、嫌だって言ってる訳じゃな無いのよ。誤解しないで、納得してやりたいだけなの。分ったわ、続けましょ」
と、慌てて否定する一子。
よし、これは何か面白くなりそうな気配がする。
俺にも別の興奮が、沸々と・・・。
「じゃあ続けるね」
と言う俺に、
「ええ、どうぞ」
素直に頷き、いざ再開。
ズボンを脱がされたせいか、心なしかリラックスムードになって来た。リラックスすれば、俺の頭のストックされたエロエロな、いやイロイロなものが抽出出来る。
早速浮んで来たのは、元の世界で観たエロ動画の一台詞だ。
「お姉さんの得意なマッサージは」
在り来たりだが差し障りの無い展開性のある言葉で探ってみる。
「ええ、それなら最近開発した上腕マッサージはどうかしら?」
と、瞳には溢れんばかりの星屑が舞う。
最近開発という時点で既に怪しいが、表情が更に胡散臭い。もろ、スペシャル臭がプンプン・・・。
聞くまでもなさそうだが、取り敢えず聞くしかあるまい。
「それって、どんなマッサージ?」
「前方回転からの開脚ブリッジで内側広筋を使って、上腕を心地よく圧迫させる、まあ、画期的且つマッサージする側にも幾分かの効果が期待出来るマッサージってとこね。これが決まると・・・」
”決まると”って、スペシャルだろうよ、それ。
「あ~あ、うん。それを何処に入れるかは後にしよう」
「あら、そうなの。それ程スペシャルじゃ無いのに、残念ね。
じゃあ、普通に鎖骨下の胸筋のマッサージにしましょうか」
ほら、やっぱりスペシャルだったんじゃないか・・・。
それにしても、AV界のスペシャルと俺の感覚のスペシャルとのズレは如何ともし難い。
俺の元の世界と、このAV界が似ているにも関わらず、この”スペシャルマッサージ”の意味が微妙以上に違ったことが無念でならない。が、基本マッサージでも、それなりに至福なので欲を出しては限がない・・・。
「じゃあ、それをお願いしてもいいかな」
すると、一子は馬乗りになっていた俺の臀部から颯爽と降りると、
「仰向けになってくれる」
と一言。
あ、仰向けって、もしかして・・・。
俺の妄想が膨張を始める。今度は大当たりか・・・。
丁度、今のスペシャルへの驚きで俺の欲棒も通常状態に戻っている。安心して表面を人前に晒すことが出来る。
俺は自信満々にパンツ一枚の姿で、仰向けとなる。何となくまな板に乗った魚の様な気分だ。
一子は、”ひょい”と声には出さないが、そんな感じで俺と言う魚の上に再び跨った。
その衝撃に、”オゥフ”って感じに息が漏れる俺。
一瞬、オン・ザ・局部かと思ったが、そこはぎりぎり外し、痛みも至福も直接感じる事の無い若干腿に近い安全地帯に一子は跨った。安心と無念さが入り乱れる中、その直後、敢えてと言わんばかりに、一子は重心を若干前方へとずらした。
その摩擦は、まさしく天使の休息。俺を何とも言えない感触に包み込む・・・、
「うぐっ、うぉぉぉ・・・」
腰が引ける俺だが、ベッドの上では引きようが無い。
「い、一子さん。これはスペシャルでは無いのですよね」
つい、名前で呼んでしまった。
「そうよ」
と、特段の意識が感じられない。ただの、一子にはただの位置修正に過ぎないと言うことか・・・。
一子は俺の鎖骨下の大胸筋に手を当てると、小刻みに振動を与えて来る一子。その振動は反作用により、一子の体の支点へと伝わり、同時に支点を支えている俺の接点にソフト周期運動が返って来る。
それは、地上の楽園。至高の刺激。
す、スペシャルです。一子さん。
これが僕の言うスペシャル何です・・・。
そして、更に仰向けと言う奴は、一部始終をローアングルから被り付きで見ていることとなる。一子のマイクロミニから漏れる夏空の青さが眩く輝く。
もう・・・、もう~。
完全に、もう、そう言うこと。
溺れそう・・。
溺れたい・・・。
溺れる~☆※§*Φ”#◎
俺と一子の各1枚、合計2枚の薄い障壁の衣擦れが、じれったくもあり、その先への欲望で心を高めたりで俺の体温を熱くする。
そして、俺と接触している一子の○○的な○○も、股、想像以上に熱い。
更に、その感触はタコの吸盤に吸いつけられた如きで・・・。もちろん、本物のタコと俺は縁は無い。
一子にだって、体感的に何らかの何らか位はあるはず。
何もないなら不干渉か、俺の潜在的なものに問題ありだ。
絶対に何も無いはずが無い。無いはずだが、何事も無かったかの様に続ける一子。
このポーカーフェイスが、返って堪らなくソソる。
拙い・・・。
いや、拙くない。
拙くは無い様に、自我を、自我を保て。いや、捨てろ。いや保て。
唱えろ、唱えろ。
そうそう、ここは第二スタジオ。衝立の向こうは凡そ70人。宝家先生もいるはずだ。なにより、三校合同AV祭の演技練習じゃないか。
他の生徒はこんなことで溺れたりはしないのだぞ。
そんなことで、反応して恥ずかしくないのか工口。
・・・いやでも、恥ずかしくたっていいかもしれない。
今に生きる、今を大切にって良い言葉じゃないか・・・。
いや、いけないだろうよ。里緒に何て言い訳するんだ・・・。
いや×2、しかし、これだってマッサージ部にとっては普通の練習なんだろ、きっと・・・。
でもだ、俺はマッサージ部の精神領域には絶対に達してはいない。スペシャル煩悩のみだ。
そうだ、俺は期待している。この先を期待しているのだ。俺の煩悩は自ら迎えに行くことだってやりかねない。
御法度を期待してしまう・・・。
そうだ×2、拙い。手遅れにならない内に、最小限直撃はかわさねば・・・。
今ならまだ間に合う・・・。
・・・・。
ホンの一瞬の間でも、人間の脳みそと言うヤツは、相当の文字数を稼ぎ出す。
そして、その文字群の中から俺の大脳が採用したのは、俺の体を右へ僅かに旋回。物理的攻撃から辛うじて逃れる。
危なかった・・・。
冷や汗と、脂汗と、満足感の心地よい汗がブレンドする。
危なく一子のマッサージに飲まれてしまい、自分の本分を忘れるところであった。
やっとの思いで我に帰った俺には、今後の自分の正気に自身は持てるが、既に出力が80%近くになった我がモノをの始末には、まだ少しの猶予が必要そうだ。
今の俺の図柄は一体一子に、どの様に映るのだろうか?
確かに物理的事象による”本能の起発”は、AV界では当然の自然現象として正常な事象として解釈されているが、その基準は感覚によるものである。
俺は一子の感覚を理解出来てはいない。
であれば、取り敢えずここは、視覚的に捕らえられるのは避けておくしかない。
例え、その行動が不信に思われてもここは俯せだ。ここは一旦、俯せになるしかない。
俺は、右に旋回させた体をそのまま強引に俯せへと持って行く。
柔道の寝技を回避するのと同じに腹這いだ。これで1本取られなくて済む。
どうだ、一子。見事な回避だろう・・・なんて、思ったりする。そんな俺に、
「あら、どうしたかしら?背中の方が良かったかしら?」
そう一言口にした一子は、伏せた俺の顔を不思議そうな顔で覗き込んで来るのであった。
それに、顔を背ける俺。
逆に俺こそが一皮ムケなければならない・・・ようだ・・・。
<つづく>
長すぎて飽きたでしょうか。
でも、も一回だけこの話が続きますので、次話も読んでやって下さいませ。