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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第3章 三校合同AV祭
69/73

青の紙は春に触れると熱くなる

皮高生徒会長の阿蘇小乃音あそこのねの拘る理由とは・・・。

※文中の「福山回春」は「千乃工口」の俳優名。

Ш――――

いやなら・・・いいの。無理しなくたって・・・。

 だって・・・どうせ、ごめんなさいなんでしょ」


 私のその言葉に、ホントに遠慮なく「ごめんなさいと」と頭を下げたあの男の子。俳優名は、確か福山回春ふくやまわはるって、名札に書いてあったはず。

 もちろんいいずらそうではあったのだけど・・・断られれば所詮、結果は一緒。


 せっかく、お母ちゃんが話してくれた黒い瞳の男の子に、運良く出会う事が出来て、それに、まつ毛が黒く長くて、目が大きくって私好みだったのにさ。

 世の中ってこんなものなのかなっ、あ~あって感じ・・・。


 大会後、私は新人大会のビデオは全部見たんだけど、結局彼を見付けることは出来なかった。きっと、彼も私と一緒で相方を見付けられなかったのだと思う。

 だって、俳優名でも検索したし、もしかしたら俳優名と違う演者名を名乗ってる可能性もあるかも・・・って、殆どのビデオは観たんだけど、結局、彼を見付けることは出来なかったんだもん。


 だから、私にしとけばいいものを・・・さ、

 きっと、あの子面食いなんだ・・・・・・。


 それは、一か月近く前に開催された、私、阿蘇小乃音あそこのねが皮高の代表として出場した、本年度最初の第27部の新人限定のAVビデオ撮影大会でのことであった・・・・・・。



 ・・・・・・私は入学以来ずっと、校内個人ランクは一桁順位だったんだけど、一度も1位になったことが無かった。それが、先月の定期試験の成績の結果、見事ピンポイントで一番の座を奪うことが出来たのだった。そして、時期的に運が良く、皮高代表として本年度第1回の新人AVビデオ撮影大会に出場することが出来たのだ。


 と言うのも、個人ランク一番の芙美代ふみよが風邪で試験を受けられなかった為だ。そんなこと自分で言ってしまっては身も蓋もなけど、事実追試を受けた芙美代が今は校内ランク1位であるからしょうがない。


 そのAVビデオ撮影大会と言うのは、二人一組で撮影をするのが原則になっている。ただ、その相方は異性であり、好きな人とコンビを組める訳では無い。相方はビデオ撮影に前日に行われる”お願いします”と言う大会で決まることになっている。


 だから、そこで相方を見付けれなければ?と言うと・・・。

 何てことはない、翌日のビデオ撮影に進めないことになるのだ。


 私はその”お願いします”でヒョンなことから、その彼に出会ってしまった。

 あんまりカッコの良い出会いじゃあ無かったけど、短い間に二度も会えば、なんか縁があるのかと思ったりもするわけで・・・。


 それも、良く見るとお母ちゃんの言っていた黒い瞳をしていたのだ。髪の毛は茶髪だったんだけど、それでも黒い瞳の男の子に出会えたなんて奇跡に近い。


 なのに・・・、なのに、何で私、あんなにあっさり諦めちゃったんだろう。

 無理言って押し捲れば、もしかしたら相方になってくれたかもしれないのに・・・。


 お母ちゃん譲りのあっさりとしたこの性格は、早く直さないと損ばっかりかもしれないって思っちゃう。・・・・・・



 ・・・・・・私、阿蘇小乃音あそこのねのお母ちゃんは、私が小さい頃から病気がちで入退院をずっと繰り返していた。そして、昨年亡くなるまでの2年間はずっと、入院したままだった。

 そんなお母ちゃんが、私によく話してくれたことがあった。


 それは、昔、お母ちゃんが高校3年生になって間もなくの頃に第48部から転校して来た女の子のことである。


 お母ちゃん曰く、その子は不思議な子だったらしいのだ・・・。


 どう不思議だったかと言うと、お母ちゃん曰く、一言で言うと何所か見知らぬ世界からやって来たのではないかと思う程、行動も考え方も性格も周りの皆とは異なった子でだったらしいのだ。


 そして、更に彼女は珍しい漆黒の髪の毛に、闇の様に黒い瞳の持ち主だったと言う事だ。

 昔は、不幸を意味すると言われた黒い色だ。

 その為、彼女は最初は学校のみんなから敬遠されがちだったらしい・・・。


 その彼女は驚くほどの世間知らずであったらしいのだ。AV大会にも全くの無関心だし、不思議なことに部活で裸になることを異様に恥ずかしがっていたそうなのだ。

 それに、お母ちゃんと同じ手芸部に入った時は、手芸部を編み物や洋服を作る部活だと思っていたらしい。


 当時、手芸部はお母ちゃんの高校にしかない部活だったので、それも仕方ないとお母ちゃんは言っていたが、どう考えてもお母ちゃんのひいき目としか私には思えない。だって、文字の通りに解釈すれば想像はつくし、部活で編み物をする意味が分んない。それに、AVビデオ撮影に関係しない部活なんて、昔は多少あったらしいけど、この時代にある訳無いし・・・。


 でも、彼女はどんなに敬遠されても、ピント外れなことをやってバカにされて笑われても、いつも笑顔を絶やさない子だったらしい。それどころか一緒になって自分を爆笑していたのだと言う。

 そして、同じ過ちは二度と繰り返さなかったらしい・・・。


 そんな努力家で憎めないピント外れの天然なものだから、いや、天然は違うかもしれないが・・・最初こそ敬遠されがちだったが直ぐに笑いの中心となり、いくら笑われても怒ることを知らない彼女は、次第に笑いだけでなく、色んなことの中心的存在になって行ったらしいのだ。

 そして、彼女は順応性が高いだけではなく、頭も飛び抜けて良かったらしい。転校最初の定期テストでダントツで校内トップになり、一ヶ月もしない内に部活に慣れると、誰も思い付かない手業を披露して皆を驚かせたと言うのだ。


 当時、成績も良く手芸部の部長で中心的存在だったお母ちゃんは、最初こそ、そんな彼女の頭角を妬ましく思ったこともあったらしいのだが、彼女の明るい性格と、誰にも優しい人柄に惹かれて行くまでには、さほど時間は掛からなかったらしいのだ。

 そして、いつしかお母ちゃんは彼女と仲良しになり、いつも行動を共にするようになったとのことである。


 その後、彼女は3回目の校内AV大会では、校内個人ランクも1位となったそうだ。ただ、その時は年齢が17歳だった為、JRAV会主催の本番の新人大会には出場出来なく、高校生として大会に出場できたのは高校最後の第4回の新人AVビデオ撮影大会だったらしい。


 その時は初めての出場とあって、恥かしがりやの彼女は全く実力を発揮出来なかったらしいのだが、卒業後、2回目に出場した大会でピンクのアイマスクを着用して出場してからは、ぐんぐんと成績を伸ばして行き、ついに初大会出場から2年で、当時史上最年少のG3女優にまで昇格したとのことである。


 お母ちゃんは、当時は黒と言う色が受け入れられずら辛かった中での快挙だからと言う事で、世間から”黒の奇跡”と言われたことを、自分の事の様に凄く自慢げに何度も私に話してくれた。

 とても嬉しそうにその頃のことを話してくれた。凄く、楽しそうだった。

 

 そして、問題はその後だ。

 お母ちゃんはその後のことを話す時には、いつも表情を曇らせるのだ。


 その後、まもなく彼女の様子が変わってしまったのだと言う。と言っても、性格が変わった訳でなく、ただ何か隠し事をしていると言う感じであったらしいのだ。

 頻繁に会っていた仲良しだったお母ちゃんにも余り連絡をしなくなり、お母ちゃんから誘っても断られることが多くなったらしいのだ。

  

 そして次第にお母ちゃんとの交流は無くなっていき、いつしか連絡も取れない仲になってしまったのだそうだ。


 お母ちゃんは、ずっと、そのことを後悔していた。

 何も話してくれないことに自分も意地になってしまい、自分からも離れて行ってしまったことに。そして、自分が気付いて上げられなかったことに・・・。

 それからは、もっぱら彼女の存在がビデオの中だけで見るだけの遠い存在となってしまったって・・・


 その頃の話になると、いつも声を詰まらせていた。それでも、何度も話してくれたのだ・・・。


 そして、暫く経ったある日のことだ。

 世間を、演者名、万乃調まんのしらべと言う凄い女優が賑わせたのだそうだ。

 その彼女を見た時、演者名を変えた彼女が変装していることぐらい、お母ちゃんには一目で判ったらしい。


 それは、髪の毛やまつ毛の色を変えても、瞳を隠しても、「根本的な雰囲気と、あそこの毛の色は、ごまかせないから」と言っていた。

 

 その他にも彼女の逸話については、色々と聞かされた。きっと、お母ちゃんの自慢だったのだと思う。

 だけど、お母ちゃんの話しの最後はそこまでである。その先の話は一度も話してはくれなかった。その先の彼女のことはお母ちゃんも知らないらしいのだそうだ。

 本当に知らないのかどうかは分からないが、病のお母ちゃんの話したくないことを聞こうと私は思わなかった。


 ただ、お母ちゃんが私にいつも言っていたのは、18歳になって、AV大会に出場に出来る様になったら。迷わず黒髪と黒い瞳の男の子を探せって・・・。


 女優名、萬香出。

 住民登録名、”萬顔出よろずかおで”と、同じ遺伝を持つ男の子とコンビを組めって・・・。


 その黒に・・・出会ってしまった。


 今まで一度も直接出会ったことの無いその黒に、お願いしますで、”瞳が黒”の男の子に出会い。そして今回、既にビデオで観ていた、真っ黒までではないが黒系の髪と黒い瞳の持ち主の女の子に会い。更に完璧なまでに”黒髪で黒い瞳”の男の子が目の前にいる。


 どうして、ここには二人もいるのだぁっ~って・・・感じ。

 この学校はどうなってんだろう。

 

 里緒と言う女の子はどうでもいい。既にビデオでお母ちゃんの言ってた通りで驚かさせてもらったから。それよりも、”お願いします”の時は瞳だけが黒だったけど、今度は黒い瞳で、しかも黒い髪の毛の男の子だ。


 ホントに彼はランク外の能力しか無いのだろうか?


 お母ちゃんの話しではそんなはずがある訳が無い。

 現にへ高を代表しているんだし。もしかしたら、実際の力を隠しているとか、何か事情があるのかもしれない。


 よし、何とか彼の実力を調べなければ・・・。

  

――――Ш


★☆ 第23話 ★☆

☆★ 青の紙は ☆★

★☆春に触れると★☆

☆★♂熱くなる♀☆★


「な~んだ、いかつい扉のわりには意外と中は狭いのね・・・。

 広いって聞いてたけど、大したことないんだー。これなら皮高の演舞場の方が広いわね・・・。


 ねえ、柔軟体操部の練習場を早く見たいんだけど。私、柔軟体操部の練習場が見たいって言ったのに・・・。

 まあ、いいわ、演舞場もどうせ見る必要がある訳だし・・・」


 腕を組んで鼻で笑う”腹部下皮高等学校ふくぶしもかわこうとうがっこう(通称:皮高)”生徒会長 阿蘇小乃音あそこのね。それに、

  

「ここが私達、柔軟体操部の練習場と部室のある第一スタジオです。当日は、二軍の団体戦の本会場になります。部室は更衣室の上で、当日は控え室として使用して頂きます」


 阿蘇小乃音の言葉が聞こえてないはずがないのだが、里緒は部員たちの練習の邪魔にならない様にだろう。小声で、しかも淡々と説明をしていく。その姿勢が思いのほか頼もしくもあり、おもしろい。

 

 結局、俺達3人の中で穴井狭子のいない穴を埋める説明役は、必然的に校内ランクの順当通りに里緒となった。ランク5位の畳部部長の井草和良いぐさわらは、はなから説明などする気もない様子であったし、柔軟体操部の部長として、同じ柔軟体操部の平民の俺に、そんな役目を任すなんて出来るような無責任なタイプではない。


 そうなると、気の毒ではあるが、責任感の強い里緒は自らその役目を買って出るしか無かったのだろうと思う。


 そんな可愛そうな里緒の責任感と比べ、きっと和良は何処かで一発大ボケでもカマせば自分の役目は果たせる位にしか思ってないのだろうと想像する。いや、何も考えていないのかもしれない。今も、何の為か手にしている花柄の巾着袋をグルんグルん回して遊んでいる。


 であればランク外の俺、千乃工口ちのくぐちは何処かで1度突っ込みを入れるくらいで役目が済む様な気にもなってくる。

 なんだか和良と居ると俺の妥協点が次第に安易な方に下がってい行く気がする。


 里緒、俺は和良に飲み込まれそうだ・・・。


 だが、何もしないのは流石に気が引ける。1度は突っ込もうと決めたからには、突っ込まねば。

 突っ込むとすれば、この阿蘇小乃音が面白いのだが・・・その彼女は、


「あら・・・、そ、そうよね。どおりで小さいはずよね。幾らなんでも演舞場がこんなに小さいはずがないものね。まあ、へ高のスタジオとしては、まあまあかしら・・・はははは」


 と苦しい言い訳。突っ込み処満載である。さあ、突っ込むチャンスなのだがどうするか?


「ううんん・・・」


 そこに、俺のその一瞬の間を突いて、先に慌てて首を振りながら否定の声が聞こえて来た。

 高音が可愛らしいが、えー・・・確かこいつは2年生の・・・。


「・・・阿蘇会長が間違うのも無理ないですよ。これで部活のスタジオだなんて、うちの演舞場とそんなにかわりないですもの」


 高い声が、第一スタジオ内に阿蘇小乃音の誤りを反響させる。


 確か彼女の名前は・・・・。

 え~・・・と、そうそう、こいつは自己紹介の時から、怒られっ放しだった2年の西尾曽楚にしおそそだ。


 折角の阿蘇小乃音のごまかしの意図も、彼女は真剣な眼差しで簡単に不意にしてしまった。きっと、本人は、阿蘇小乃音の間違いを庇ったつもりなのだろうが、状況を掴めないヤツだ。また怒られるぞ・・・。

 と、思うか思わない内に、曽楚そその頭に阿蘇小乃音の拳骨が落下した。


「いたたた・・・。先輩、頭はダメですよ、頭は。

 せっかく私が庇ってるのに、何で直ぐ叩くんですか~もう、痛いなぁ・・・」


 語尾が阿蘇小乃音に聞こえない様になのだろう、フェードアウトしていく。傍にいる俺には良く聞こえてくる。おもしろい。


「何、言ってるの。あんたがおかしなこと言うからでしょ、誰が講堂とスタジオを間違ったって言うのよ。扉の割りに中が狭いと言っただけでしょ」


 確かにそうも言ったが、曽楚そその言った通り演舞場と間違ったのも事実なのだ。しかし、曽楚そそは言い返したりはしない。


 阿蘇小乃音あそこのねが個人ランクで2位と、確かに曽楚そそよりも一つ上ではあるが、彼女だって実力主義のAV界の高校では個人ランク第3位と、2年生では破格の地位を築いている。それにも関わらず、このいじられ様は彼女の謙虚な性格とピンと外れの間のせいなのだろうか?


 それにしても曽楚そそは先ほどから里緒とも違った天然さを発揮し捲っている。俺の苦しい自己紹介の時も唯一彼女だけは感心しきりだった。あの顔が、お付き合いではなく本気の顔だったのが今になって良く判る。


 俺には愛すべき憎めないタイプなのだが、せっかちな阿蘇小乃音あそこのねには、どうにもイラつくのだろう。まあ、分らないでもないが・・・阿蘇小乃音も少しは和良わらを見習うことだ。相変わらず花柄の巾着袋を意味なくグルんグルん回して遊んでいる。


 曽楚そその良く通る高音と、声阿蘇小乃音あそこのねの怒りの大声に、練習中だった柔軟体操部の部員達の視線は否応なしにこちらに集中する。

 そして、その先に里緒の存在を知った部員達は、猛ダッシュでやって来る。


 もちろん、部長に挨拶をすることが目的なのだが、皮高にはそんな習慣が無いらしい。

 驚く阿蘇小乃音と、無表情に固まる味噌利雄みそとしお。そして、その後ろのに身を隠す曽楚が首を竦めて下を向く。


 襲われるとでも思っているのだろうか?

 

「部長、お早うございます」


 因みに、へ高の部活はその日の初対面の挨拶は“朝”と同じである。


「あっ、みんなお早う。練習の邪魔してごめんね。

 え~と、紹介するわね。こたらが腹部下皮高等学校の代表でいらした三人の方々です。

 こちらから、生徒会長の阿蘇さんと、副会長の味噌くん。それに後ろの方が2年生で、何と校内個人ランク3位の西尾さんです」


 その2年で3位と言うランクにどよめきが起こるが、そこは我が高の2年としては高順位のリンリンこと林林はやしりんが皆を纏める。


「いらっしゃいませ。我がスタジオへようこそ」


 りんりんの笑顔は、いつでも心がこもっていて安心する。同じ2年で高順位の話を聞いても嫉妬の欠片も見せる事は無い。

 彼女に初対面で不快を示す人はまずいないだろう・・・。


 そして、りんりんの声につられて、

 

『いらっしゃいませ』


 全員の声が揃う。いつもながらの合唱部の様な見事な統一感。

 

「あ、ああ、どうも宜しく・・・」

 

 驚きの余韻で控えめな阿蘇小乃音の言葉に合わせて、隣の味酢利雄みそとしおと、襲われると思ったのに礼儀正しさが意外だったのだろうか?二人の後ろでボケっとしている曽楚が、慌てて頭をペコリと下げる。


「こちらこそ宜しくお願いします。私達は皆さんとの合同AV祭を、とても楽しみにしております」


 ホントにりんりんは良い子の代表だ。言葉を発する時の表情に心がこもっている。


「みんなは練習続けていてね。私と千乃君は井草部長と、皮高の皆さんの案内をして来ますから。

 じゃあ、リンリン宜しくね」


 因みに、井草部長とは、畳部部長の和良のことだ。


「はい、部長分りました」


 りんりんの素晴らしい対応は、千逗部長の威厳が実力以上に引き立ってしまう。それに、


「い、いつも、こうなのかしら?」


 囁く様な声が阿蘇小乃音から漏れて来た。

 きっと、阿蘇小乃音の素直な気持ちが口を突いたのだろう。

 あの新人大会で俺に相方を申し込んだ”お願いします”の時の様に本心を感じる。


「えっ?」


 里緒は鈍い。


「だから、いつも・・・いや、いいです」


 と、言葉を飲み込む阿蘇小乃音。すると、目を輝かせて一歩前に出るのはもちろん、

 

「会長は驚いたんですよね。いつも千逗部長が来たらこんな風に挨拶をするのですかってね、皮高じゃ考えられないもの・・・」


 ご丁寧に阿蘇小乃音の感情まで説明してしまって、同意を求めるように小首まで傾げる曽楚だ。


 きっと、褒められると思い込み本人の心を代弁したんだろうが、阿蘇小乃音は素直な気持ちを言われてしまい、さすがに恥ずかしいのだろう、若干顔を赤らめている。


 ここはどう考えてもそこは聞こえなかった振りをする場面だ。これは、ゲンコツ間違いなしだろう。

 そう思った瞬間、やっぱり、あ~っ・・・。


 ゴツン・・・。


「いててて。だから、頭は会長ダメですって。代わりに説明しただけじゃないですかぁ~」

 

「そんなことは言ってないでしょ。勝手に間違った想像しないこと、わかった!」


「どう・・・、は~い、すみません」


 多分、「どうして?」と言いたかったのだろうが、意味を理解していなくても謝る素直な曽楚。

 その様子を見て、多少場を読み、慌てて曽楚のフォローを入れる里緒。

 

「ああ、これは“へ高”代々の伝統ですから、どの部でもそうなんですよ。普通のことなんです」


「そ、そうなの、伝統なら当然よね。まあ、それは“へ高”としては良い伝統だわね・・・でんとうか・・・」

 

 とフェイドアウトで言葉を結んだ後に、何故か俺を見る阿蘇小乃音。何か用なのか?

 まさか、今度は俺の頭を・・・と、身構えるが、そうではなさそうだ。


「・・・ああ、そうそう、伝統と言えば、相変わらずへ高の皆さんは色んなところから集まって来ている様ね。

 ええ、え~と、でも、黒い瞳の生徒は、お二人だけなのかしらね」


 少し言いずらそうなのは、人種に関わるからなのか?

 最近知ったのだが、AV界の人々はその人種により瞳と毛の色に特色が見られるらしい。AV界では自由な校風のへ高には色んな地域から高校生が集まって来ているのだそうだ。その為、校内でも様々な瞳と髪の毛の色が見られるのだ。


「そうだと思いますが、気にして見たことが無いですから多分としか~・・・」


「えっ、気にしていないって?」

 

 驚いた表情を見せる阿蘇小乃音。

 へ高以外では、驚くことなのか?


「・・・そうね、最近じゃ髪の毛は染めている人もいるし、ダーク系の瞳も増えているから、それほど目立ちはしないってことか・・・。でもお二人は、睫毛まつげ眉毛まゆげも黒いから自毛ですわね」


「ええ、まあ・・・」


 淡々と説明していた里緒が、困惑した様に俺の分も応えてくれている。


 里緒は阿蘇小乃音の驚きの意味を分ってると言うことなのだろうか?

 一体どういうことなのだろう・・・俺にはさっぱりだ。

 単に色が珍しいだけなのか、それとも人種的な問題があると言うのか?

 または、それ以外の何かがあると言うのだろうか?


 SOD高のパイパン君こと牟田毛渚梨唯むたげしょりーといい、阿蘇小乃音といい、明らかに二人の生徒会長が”黒”に拘っているのは事実である。

 俺としてみれば、そんなことよりも特許申請をした俺達の“キス”と言う技、まあ俺の元の世界では他愛いも無い行為なのだが、このAV界、特にAV撮影に関してみれば大技として取り扱われる行為だ。もっと、こちらに興味を持つべきだと思うのだが、そちらはプライドが邪魔して知らん顔ってことなのだろうか?


 少なくても、へ高では髪の毛や瞳の色について聞かれたことなど一度も無い。

 この”黒への拘り”については、後で一持兄さんか、塩南先生にでも聞いてみようか・・・珍しいとはいえ、少し異様な気がする。

 現状、俺には”まほまほ”に次ぐ謎である・・・。


 そんな阿蘇小乃音の行動とは違って、味酢利雄みそとしおと言う、しょっぱそうな名前の塩分男は淡々としている。彼には髪や瞳の色などどうでもよい話しのようだ。


「そろそろ。次に行きましょう」


 本来の目的”下見”に徹している。と、言う事は、やっぱり大した話ではないと言うことなのかな?

って気もしてくる・・・。


「じゃあ、マッサージ部の練習場が近いので、次は第二スタジオに行きます。第二スタジオは、二軍のコンビ戦の・・・・・・」


 里緒が、塩分男に応える。


「ああ、二軍はあまり興味ないけど・・・まあいいわ」


 里緒の判断に水を差す阿蘇小乃音。それはちょっと理不尽ではないか? 


「だいたい、ここも二軍の団体戦の会場なんだが、お前の要望だったはずだ」と突っ込もうかと思っていたら、俺の心を代弁する奴がいた。また叩かれるぞ・・・。


「あれ?会長が見たがってたこの柔軟体操部位の第一スタジオは、二軍の・・・(ゴツン)」


「だから、会長、頭は駄目ですって、あたまは・・・」


 この二人のコンビネーションは本物かもしれない。笑いそうになってしまう・・・。

 AV祭当日も、色んな意味でマークしなければ・・・。


 しかし、和良はおかしくないのだろうか?

 と思い和良を窺って見ると、こいつは無言無表情で、花柄の巾着袋を握りながら腹を抱えて鼻を鳴らしている。

 やはり、こいつも笑いを我慢していたみたいだ。器用な動きで・・・。


 しかし、そんな俺達の行動を微笑みもせずただ待ち続けているのは・・・まじめすぎるぞ、里緒。

 もっと楽に、感情をだそうじゃないか・・・。


 とは言うものの里緒は必要最小限の話しのみだが、既にリラックスしている俺たちとは違い一人役目をこなしてくれているので、そんなことを言ってしまったら・・・こりゃもう、感情豊かに怒られるのは確定だ。淡々としているが、相当緊張しているのだろう。ここは触れないでおくとする。


「それでは、次に行きます」


 カツカツとしている里緒。

 既にリラックス気味の俺たちを怒っているのかもしれない。ちょっと反省・・・。


 里緒はせっかちに歩き出す。するとその直後である。

 こんなイライラ時には通常起こらない不運が起きたりするものだ。里緒はワザとと思うほどグッドなタイミングで平らな床に躓き、その惰性でロケットの様にスタジオを飛び出していく。


 速い! 俺を含む一同が見とれてしまっている中、

 

「大丈夫ですか?」

 

 逸早く行動を起こし、手を差し出したのは曽楚そそだ。


 里緒は、重厚そうに見える扉が開けっぱなしだった為、頭をぶつける事も無く、両手を床に付くだけで済んだ。だが、見事な四つん這い状態。そんな里緒に俺は手を差し出すどころか顕な太ももとそのご近所さんの見え隠れする獲物に見とれてしまい、不覚にも出遅れてしまった。

 このAV界で見慣れてきたとはいえ、子供のころから培われて反射には抗えない。しかも里緒の御御足は別格に美しい・・・。


「ありがとう」


 里緒も曽楚の行動に少し顔を和らげる。


「千逗さんは、皮高で言えば阿蘇会長と同じスター何ですから、怪我しないよう気をつけて下さいね。みんなが悲しみます」


 そう言って笑う。


 そこまでではないだろう。と、口には出さずに周りの反応を伺うと、これに対して阿蘇小乃音あそこのねの反応が・・・おや、里緒と同じく真っ赤になっている。


「ばか、やめなさい・・・」


 と、曽楚にスターと言われた阿蘇小乃音。


 と言うことは、里緒と同等に扱われたことを恥ずかしがっているということなのだろうか?

 なんだかんだ言っても、こいつは里緒の実力が自分よりも格段上と言うのを認めているのかもしれない。


 虚勢は張っても正直な奴である。以外と里緒と似ているのかもしれない。と、里緒を見ると、


「私が・・・、そんなスターだなんて」


 謙遜ではなく、多分本音の里緒。


「スターですよ。私、エロン棒様との演技3回も見たんですから。もう、感動しちゃって・・・。

 そうだ、聞いていいですか?あの“エロン棒様”はへ高の生徒じゃないのですか? 

 私、なんかそんな気がするんですよねー・・・」


 勘がイイのか適当なのか、ドキッとする言葉を吐く曽楚。


「バカね、へ高の代表は千逗さんでしょ。だから、そんな訳ないでしょう」


 不正解な回答で一喝する阿蘇小乃音あそこのね

 それは、まともな考えではあるが、ここは無邪気な曽楚が正解なのだ。


「でも会長、特別推薦とかってこともあるんじゃないですか~・・・」


「特別推薦が貰える人だったら、とっくに噂になってるわよ。それより、相方の詮索はプライバシー侵害になるから失礼よ、曽楚・・・」


 意外と礼儀はしっている。


「・・・失礼しました、千逗さん。曽楚は、常識が無いもので」


 それに里緒は、


「エロン棒様は、お願いします”の時、いきなり何処からかともなく私の前に現れて、撮影当日も何の話もしていないので、どこの高校かは良くは解らないんです」


 俺を前に、いや、位置的には背にしているが、さらっと言いのける里緒。こいつも実は結構太い根性しているのかもしれない。


 曽楚のお陰で、里緒もリラックスした様だし、阿蘇小乃音も曽楚のスター扱いで、辱めを受けたので若干姿勢も後ろ気味。下見の一行は急に和んだ雰囲気になり次に向かう。

 そんな中、和良は相変わらず花柄の巾着袋を振り回す・・・。

 

 第二スタジオは第一スタジオから、渡り廊下を渡り、への字の校舎の短辺から長辺へと曲がった直ぐのところにある。

 そのへの字部分を曲がると、数人の人影が丁度、第二スタジオに入るところだった。それは、我がへ高の執行部がSOD高を案内している御一行様だ。

 

 面倒な・・・と思ったら、


「あんた達、今日はお客様が下見に来るのだから、その練習をやめる様に言ったでしょ」


 いきなりの怒鳴り声が聞こえて来る。

 この声、他でも無い。生徒会長兼、マッサージ部部長の稲荷家一子いなりいえいちこである。


「すみません。でも、今日はここには来ない・・・いえ、すみません部長」


 この言い訳を聞くからに、大方、稲荷家一子が間違った情報を部員に伝えたのだろうが、AV界の高校では構内ランクトップクラスと一般平民との間には見事な縦関係が存在する。


「おや、そんな長い金属製のポールを使って何の練習何ですか?興味ありますね、稲荷家会長。

 ここ、マッサージ部ですよね?」

 

 この声は、聞きたくないかったパイパン君の周波数だ。


「ええ、まあ、これはちょっとした準備体操として・・・」


 これは準備体操でもなんでもなく、三校合同AV際でのマッサージ部の団体競技「蘭香らんこう」部門の演技である。発案は俺なのだが、その振細部の振り付けまで俺は関わっていない。恐らく、その最中だったと思われる。


 俺はマッサージ部には、元の世界のポールダンスをさせようと思っているのだ。


 最初に俺が話した時の稲荷家一子は、邪道だとかマッサージとは関係ないとかで、不満満載だったのであるが、顧問の宝家先生がノリノリになると、仕方無くという感じで了承したのであった。

 しかし、そのダンスを雰囲気だけでもと僭越せんえつながら俺が適当に踊って見せると、どう捉えたのか妙に気に入ってしまったのである。

 今では彼女はポールの硬さに気持良さまで覚えたのかもしれない・・・。


「へ~、このポールで何をするのかしら?私も興味あるわ」


 と、阿蘇小乃音あそこのねが割って入る。それに真っ赤になって慌てふためく稲荷家一子。


 そんな態度じゃ三校合同AV祭の出し物だってことがバレバレだろ・・・。

 ここは、里緒を見習って淡々と流せばいいものを・・・一子は意外と正直者だ。


 そんな、少し熱いやり取りが一子のダンマリで小康状態になった時、小柄で色白な和良が割って出てきた。普段は余り感情を表に出さない和良が、俺にも判るくらいの気合いが見てとれる。


 何をするんだ、和良?


 和良は、さっきまでグルんグルん回していた巾着袋からロージンバックだろうか、危険ではなさそうな白い粉袋を取り出すと、パフパフと手に叩きつけ出した。

 藁はいつのまにか、既に上着を脱ぎ捨てている。ぴったり目の半袖のシャツが、見事な大胸筋と筋張った上腕二頭筋を主張している。


 こいつ、丸顔ははったりだったのか・・・。

 ぽっちゃりタイプと思っていたが、中身は脂肪ではなく、引き締まった筋肉だったのだ。


 しかし、一体何をしたいのだろう?


 和良は肩を2、3回まわし、手を叩いたり握ったりして感触を確かめると、スルスル約3メートルのポールをほぼ腕力だけで楽々と登りきる。


 何をする気なんだ?

 俺の興味は、みんな共通の興味だ。マッサージ部の部員達も声も出さずに注視する。


 和良は右手でポールの先端を掴み、両手を大きく開くと両足をポールから離し始めたた。


 なんだ!?


 そのポールから離した足が一気にポールから離れて行き、ほぼ床と平行にまで至る。

 その姿は、まるで旗の様だ!

 人間の旗だ!


 凄い!

 みんなの視線が和良に注がれる。

 曽楚の目は縦長になり、パイパン君は咳きを込む。


「うそっ!」

 阿蘇小乃音は一言、そう吐き出した。


 いつの間にか俺の横に来た里緒は、


「へ~流石畳部ね」


 あまり驚いていないみたいなのは何故なんだ?それに、


「畳部はかんけいないと思うが・・・」


「バカね。毎日鍛えている畳部だからこそ出来るのよ」


「毎日?」

 鍛えてるって?


「そう知らなかったの?畳部は演技する畳を運ばなければならないから、毎日筋トレしてるのよ。

 夏には合宿と称して部員全員で引越しのアルバイトもするの。力じゃ誰も畳部には勝てないわね。でも、まあ、あんなことが出来るのは部長の和良ぐらいだと思うけど・・・。

 ああ、顧問の太棒たぼう先生を除くとだけどね」


 そ、そうなのか?畳部とはそんな部だったのか。それに、あのメイド服すがたの幼い雰囲気の太棒たぼう先生の中身は実はマッチョだと言うのか?


 そうだ、前から不思議に思っていた、恐そうな宝家たからいえ先生が太棒先生には下手に出るのは、その為なのだろうか?

 いや、子供や獣じゃ無いんだから、それは無いか・・・。


「そうそう、畳部は多分ね、へ高にしか無い部だから、もしかしたら和良ぐらいかもね。あんなこと出来る女子高生は」


 そりゃそうだろうよ。女子の筋力じゃ難しいだろうよ。


 そんな、俺たちの話を聞いていた阿蘇小乃音は、


「まあ、そんなことで来たって、大会自体には役に立たないわね。やっぱり絡みがなけりゃ、ひょ、評価は上がらないわよ・・・」


 そんなことを言うが、立派に焦りを見せている。恐らく、ついさっきまでは、里緒のおまけ位にしか見て無かっただろう和良に完全に一目置いている。


 いやいや、そんなんことよりもだ。

 ちょっと待てよ。今の言葉をそのまま取ると、大会は絡みが無くても良いう事ではないのだろうか?


 確かに8割が女子のへ高に置いては、必然的に女子同士の絡みが多くなってしまう。

 それはそれで俺としては満更でも無いのだが、JRAV会主催の一般大会は男女の組でなければならない。だから、てっきり個人戦の”御何部門おなにぶもん”以外は絡みが必須だと思っていたのだが、そうではないのか?

 聞いてみなければ・・・。


「なあ、里緒。高校のAV祭は絡まなくてもいいものなのか?」


「えっ?知らなかったの。

 へ高は女子が多いから絡まない発表もあるのよ。他校でも多分、必須ではないはずよ」


 へ~、そうなのか。

 それであれば、この和良に対する喰い付きを考えると無理に絡む必要はない気もする。特に、団体競技の”蘭香らんこう部門”は、絡まなくても良ければだ。色んなことが出来そうだ。


 俺に演出のヒントを与えてくれた、度胆を抜いた和良のパフォーマンス。

 しかし、和良がそれだけで終えるはずがない。彼女はきっと何かを見せてくれるはずだが・・・。


 和良は一旦、足を棒に付けると向きを変え、こちらにお尻を向ける。

 そして、今度は後ろ向きで旗のように体を平行にさせると、更に上側の脚を開いて行く。


 今度は何をするんだ?

 皆の眼はさらなるパフォーマンスに釘付けだ。


 和良が徐々に足を開くと、ロングスカートが徐々に捲れ上がり、マッチョ的な小さめの赤いパンティーが見事なトライアングルを披露する。


 あれ、何だ?


 赤いパンティーがその全貌を現わすと、見事に盛り上がった大臀筋に喰い込まれながらも、白く書かれた文字が視線を虜にする。

 そこには、文字が書かれている用だが・・・なになに、え~と。

 

 ”祝三校合同AV祭”


 と書かれいるではないか・・・。それに、


『うわ~!』


 と歓声があがると、和良の大臀筋がピクリと反応する。

 どうやら和良も満足な様だ。


 しかし、これって今日の為に和良が温めていたボケなのだろうか?

 何故この状況を想像出来たんだ・・・?


 和良・・・。


 <つづく>




長い話にお付き合い頂、ありがとうございます。

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