AVにかける若き猛者達ここに集う
三校合同AV祭の下見に、AV界 第27部のエリート高校生達が”へ高”に集結する。
残るところ二週間と迫った”三校合同AV祭”。
その言い出しっぺと言うことでホスト校となった我が”併性へノ路学園高等学校”、通称”へ高”。
今日、ここに合同開催校の猛者達が下見を主の目的として集まったのである。
この”三校合同AV祭”は、AV界の高校において前例の無い試みであり、我が校の急な提案であった。
その為、提案を受けた他の二校、”精オイスター第一高等学校(通称:SOD高)”と、腹部下皮高等学校(通称:皮高)の猛者達も快く承諾してくれたとは言え、それは斬新さとその内容に惹かれた部分が大きく、スケジュール的な面には多分に目をつぶった部分があった。よって、いざ開催が近付くとぴりぴりムードになってしまうのは否めない。
そんな中、彼らをお迎えするにあたって俺、千乃工口は校内順位も無いに等しい立場であり、しかも校内的にも大した役職を背負っていないにも関わらず、AV祭実行委員会から生まれて初めてのホスト役を指名されてしまった。
俺の下心が、少しでもお客さまである女子高生一行を存分に満足させ、頭上高くまだ見ぬ世界へと昇らせてやろう・・・なんて1か月程前の無邪気な性力があれば、それほど苦では無かったであろうと思う。しかし、今は寸止め状態とは言え、視覚的にも、それに若干の触れ合い的にもそれなりに身近なものとなっている。
そんな状態で、敢えて面倒なものに”首”を突っ込もうとは思える訳が無い。
”頭”であれば突っ込むことも・・・いや、何を考えているのやら・・・。
本来、AV男優を目指す全高校男子に取っては、とても名誉なことになるらしいのだが、もちろん本位ではない俺にはこの上なく厄介なこと極まりない訳だ。
それでも5年前まで女子高であり、男子の少ない我が”へ校”には有力男優に乏しい実情と、今回の合同開催が行きがかり上であったとしても俺の発案ではある以上、選任されたのであれば仕方がない。
俺も責任ある柔軟体操部選出の実行委員会の一人として下手な理由をつけずに、大人しく役目を果たすのが人としての道と言うものだろう。
なんて、多少は芽生えつつある愛校心の基、今俺は生徒会室で三校の猛者達とホスト役として顏を突き合わしているのである。
取り敢えず、初めの自己紹介は心の拠り所、穴井狭子師匠(敢えて呼ばせて頂こう)の助けにより何とか逃げ切ることが出来た。だが、この先の下見の案内役は穴井狭子がAV大会審査委員会の打ち合わせとして、各校のAV委員会の代表と会議で別行動となってしまうはずだ。
となると、残された我ら口下手な三人組みで案内役は何とかするしかないのだが・・・。
と言うのも、”へ高”生徒会長 稲荷家一子の独断で案内役の配分は二チームに分けられた。一つは、生徒会長一子を初めとする我が高執行部で、もう一つは里緒に和良、それに俺を加えたトークではからっきしの肉体派3人と言う2チーム編成だ。
案内する相手高は、一子達の執行部が二校の内の上位校”SOD高”で、もう一つの通称”皮高”の案内は、残りの俺たちと言うことになったのである。
もちろんこのチーム編成となれば、稲荷家一子達がAV界トップのSOD校の案内役となるだろうとは容易に想像出来たが、実は一子の身勝手な提案ではない。その前に皮高の生徒会長 阿蘇小乃音が、案内役を俺たちを指名して来たのである。
本来俺はそれ程口下手ではない。元の世界であれば、ただの面倒事位で何とかこなしてしまう自信はあるのだ。ただ、里緒ではないが、予備知識の無いことは実は俺も不得手としている。緊張でいつもの持病、腹の調子が悪くなりそうでやばい前兆をちらほらと感じている・・・。
そして、実はもう一つ俺の腹の調子を乱させている源がこの阿蘇小乃音にあるのだ。
彼女は先日の”本年度第一回の第27部新人大会”の撮影の相方を決める”お願いします”で、俺が”ごめんなさい”(お断り)をしてしまった唯一の相手なのである。
彼女の指名の目的は、あの新人大会の”お願いします”で、断った相手が俺だと知っての行動なのか?
それとも、今や”世間の注目”特に全高校生で話題の的の真ん中”黒丸”の里緒なのか?
恐らくはどちらかなのであろうと思う。
もしも、俺があの時、彼女に”ごめんなさい”をした相手だと疑われているのだとしても、俺はとことんボケて誤魔化し通すしかない。俺が下位ランクにも関わらず特別枠で出場していたことがバレテしまえば、特別な推薦枠を得て新人AVビデオ大会出場していることが判ってしまう。となるとどんな詮索をされるか分らないのだ。
もしかすると、高校生の間では里緒以上に話題の”謎のエロン棒様”と結び付けられる可能性だってあり得る。
そんな平穏を乱す面倒なことは回避しなければならない。
それでなくても今の俺は平穏ではあっても、否応なしにそこそこ忙しいのである。と言うのも、俺はAV大会本番へ向けての各部の演出支援を行っているのである。
なんと言っても俺は我が”へ高”の秘密兵器役を校長(代理)と、塩南先生を初めとする俺の現状を知る3人のAV科を受け持つ先生からから直々に頼まれたのである。
一方ならぬお世話になっている二人から頼まれたとあれば頑張るしかないだろう。
俺だって、成り行きに追い詰められれば”やる男”なのだ。
と言うことで、俺は秘密兵器として、ライバル高の主力である今回”へ高”にやって来た代表者を、先程の各校の自己紹介と俺の少ない知識からおさらいをしたいと思う。
まず、第27部と言う地域性を見ると、元々この第27部は砂漠であったらしいのだ。それでも、古代と言われる95年以上前に行われた緑化計画により、今では三分の一が市街化区域となっている。よって、面積的には小さな地域だ。
その為、学区は全部で7学区と少なく、よってAV科を有する高校も1~3学区の僅か三校のみである。だが、さすがAV界の中心だけがある。レベルは他の地域と比べると非常に高いものがあるのだそうだ。
その中の最高峰は第一学区の”精オイスター第一高等学校”通称(SOD高)だ。
彼らは第27部では堂々の第1位のみならず、何とAV界全世界でも1位を守り続ける超エリート校なのだ。
このSOD高であるが、さすが超一流の名門。その様相からして他校とは一線を画している。
まず、制服は女子は様々なパステル色で、素肌に纏わり付く程の柔らかな素材のドレスに、それを仕立ての良いシックな濃紺のブレザーが羽ばたこうとする翼を抑える様に羽織っている。髪型もそろいも揃って皆潤いのあるロングヘアーを動く度に波の様にうねらせる。
一応、どうでもいいが男子は、ほぼ黒のスーツと言っていい作りの制服を堅苦しく着こなしている。
更に、言葉遣いや仕草の一つ一つからも気品を大切にすると言う、まるで貴族かそれとも高級クラブ(部活のクラブではない)を思わせる雰囲気を感じさせるのだ。行ったことは無いが・・・。
そのSOD高からやって来たのは5人の代表者だ。
まずは生徒会長であり、校内ランク第1位の牟田毛渚梨唯。
彼は3年で、部活は美術部である。もちろん部長。自己紹介の内容から、俺と里緒の出場した本年度第一回の第27部の新人大会には出場しているはずである。もしかすると、俺もビデオで見ているのかもしれないが、はっきり言って男の顔までは覚えてはいない。
そして2人目は、尺八美味。彼女は副会長であり校内ランク第2位。マッサージ部の部長らしいので、今回の目玉である個人優勝者に与えられるAV大会の”特別推薦出場権”の争いを我が”へ高”の面々と争うことになるだろう。特に一子とは、同じマッサージ部と言うこともあり、部活同士の威信をかけた争いになるのではないだろうか。
彼女は名前を聞いて判る通り、あの二大特許の”縦笛”を取得した”尺八屋”の家号を引き継ぐ一人である。だが、JRAV会の主催するAVビデオ撮影大会では当然の如く特許の使用は可能であるが、今回は学校行事なので特許を使用することは出来ないことになっている。
よって、そこは我が校にとっては有利なところだ。
3人目は、二年生のホープ槌野乃子だ。彼女の校内ランクは2年でトップの第9位。生徒会では書記でシンクロ部に所属している。
このシンクロ部がSOD校の校内部活ランクで第3位に上がったのは彼女の功績が大きいらしい。ランク以上の実力があるのかもしれない。
4人目は、大城南重樹。彼はSOD高AV委員会の生徒代表で、見るからに理知的な顔つきをしている。校内ランクは第6位で、一体、何をするのか想像も付かない背景部などと言うマニアックな部活に所属している。この謎の背景部にも注意したいと思う。
そして最後は、間羅偉夜。彼女は生徒会には属していない。先ほどから誰かと話をしているのを全く見ていない気がする。それどころか、全く一人何処を見ているのだろうか?視線の先が不明である。俺には我が道を行くのか、或いは不思議ちゃんのどちらかとしか思えない。
彼女は校内ランクは第3位の騎乗部。頬高で引き締まったヒップは魅力的で、ドレス越しからでも想像出来る尻筋からは、只者では無い腰の動きを想像させるに難くない。
以上、5人全員が優美で落ち着いた雰囲気を持ち、俺たちへ校の生徒とはとっても同じ歳とは見て取れない大人びた雰囲気を醸し出している。その面に関しては流石としか言いようがないが、若干の背伸び感は否めない・・・。
次に、第三学区の「腹部下皮高等学校(通称:皮高)」だが、皮高も第27部内では第3位に堂々と君臨している。AV界全体では惜しくもベスト10漏れの第11位と成績では”SOD高”からは多少水は開けらえているが、卒業生が堅実な成績を納めることで有名なエリート校だ。
皮高の印象ははSOD高の優雅さ、我が”へ高”の自由さとも異なり、その様相からはお固く遊びが感じられない古風な伝統校的イメージが感じられる。
制服も全く面白味が無いグレーのスリーピースなのだが、俺的にはSOD高よりもこちらの方が好感を持ててしまう。
もしこの硬さが乱れたら、いや、この硬さと制服を脱ぎ捨てた時の撮影は、一体どんな感じなのだろうか?と、そのギャップを想像するだけでも俺の興味は止むことを忘れ、そのまま妄想の世界に浸ってしまいそうである。
おっと、危ない・・・。今日はこの辺にしとくとして、本番で楽しむと、いや、本番を警戒しなければならない。
この硬さが売り?の”皮高”の現在の校内個人ランク1位は、我が”へ高”同様に生徒会長ではないようだ。 第1位は体、馬場芙美代と言う、体操部の部長で、”皮高”AV委員会の生徒代表だ。確かに見るからに清楚で堅苦しい制服が良く似合っており、雰囲気はある。
しかしだ。ここで疑問なのは、前回の本年度第一回の第27部新人大会の”お願いします”では、俺に相方申込みをした蘇小乃音が出場していたのだ。これは、一体どういうことなのだろうか?
自己紹介に因れば、彼女は校内個人ランクが第2位の皮高の生徒会長兼、”魂部”の部長なのである。
馬場芙美代が、まだ18歳に達していないと言うことなのであれば納得なのであるが、もし”阿蘇小乃音が、新人大会で相方が見つからなかったことにより校内順位を落としたのであれば、俺にとってちょっと責きが重い。
実は、俺は大会後に彼女の事が気になって、彼女の女優名でビデオ検索を掛けたのだが、結局見付けることが出来なかったのだ。
確かめたいが、何て切り出したら良いのだろうか・・・。
次、第3位の西尾曽楚は、何と2年である。しかし、その面影が全く見て取れない。
どうやら彼女は里緒並みのあがり症の様だ。自己紹介の時も終始ドモリっ放しで、同じ皮高の代表者達からさえも冷ややかな目で見られていた。何度も頭を下げながらの自己紹にはなったが、俺には唯一人間的にホッとするものを俺は感じた。そこが、彼女のが2年で第3位とランクに上り詰めた理由なのかもしれない。
それに、俺は彼女の繊細でしなやかな指先に注目をしている。何かをやらかしそうな指である。因みに彼女は手芸部らしい。
そして、第4位にやっと男子が入っている。生徒会副会長でマッサージ部の味酢利雄だ。
どうやら、女性が強いのは”へ校”だけではないらしいのだ。俺の元の世界のAVビデオ界と変わらず、女性が主役となるケースが多いのかもしれない。
そう言った意味ではSOD校の生徒会長の”パイパン君”では無かった、牟田毛君は、かなりのやり手なのだろう。
以上が、俺の今の知識である。
これに対して、我が”へ高”の三校合同AV祭の主要人物を簡単に紹介すると、我が「併性へノ路学園高等学校(通称:へ高)は、第二学区である。因みに第27部では2位で、AV界全体でも9位に位置している、もちろんAV界のエリート高なのは言うまでもない。
我が校の個人ランク第1位は、ご存じ校内部活ランク1位の柔軟体操部部長であり、今や”キス”と言う大技で特許申請中で、俺、エロン棒様の相方を勤め上げた千逗里緒様だ。
続く第2位が、幾ら制服のブレザーの中が自由とは言え、派手と言うか薄目に着こなす、生徒会長であり校内部活ランクも第2位のマッサージ部部長の稲荷家一子だ。
第3位はAV委員会の生徒代表、社会部部長、その他諸々の肩書を持つ”へ校”で実質の生徒一の権力者 穴井狭子。何故か俺を助けてくれることが多い。
更に、校内ランクは5位だが、校内部活ランク第3位の畳部部長の井草和良。
そして、演出担当で今回の秘密兵器、実は謎の時の人”エロン棒様”の俺、千乃工口と言ったところだろうか。
以上が、今回下見に来た三校の猛者達であるが、俺はどうも他校の猛者達が大人びて見え惹かれるものを感じてしまっている。
これも、うわべしか見えていないからなのだろうとは思うのだが、どうしても初めて見るものと言うのは新鮮で興味が惹かれ、未知なるものへの興奮を引き起こしてしまう。
だが、これでは実際の実力を見誤ってしまう。
人間と言うものは大概、見慣れない者に対してそう思うもので、意外と慣れてしまえば、何てこと無かったりするものだ。
主要部活の演出を任された俺としては、正確な評価をする為にも、早くこの幻想に慣れなければならない。
その為には、何とか合同練習と称して、あの二校の制服と言う殻から素肌を解放させ真の姿を拝みたいものだが・・・幾らなんでもそれは無理と言うもの。
残念。非常に残念だ。
初対面程、ときめくものがあり、興奮を・・・おっと、これは決して個人的な欲望ではない。
断じて・・・。
★☆ 第22話 ★☆
☆★ AVにかける ☆★
★☆ 若き猛者達♂ ★☆
☆★ ♀ここに集う ☆★
「君が今回の三校合同AV祭の発案者の・・・」
んっ?俺に言ってるのだろうか?
「・・・千乃君ですか・・・」
俺にだ・・・何故俺になんだ?
爽やかに俺の前に手を差し出す大人びた高校生が俺の前に現れた。ちょっと背伸び気味が胡散臭い男だ。
この俺にその胡散臭い手を握れと言うことなのか?
「・・・よろしく」
と、差し出した手が、俺の次の行動を待っている。
いかん、ついうっかり男の手を・・・・・・握ってしまった。
意外と、サラサラとした女性の様な肌触り・・・。
おっと道を誤ってはいけない。この手の先を二度程曲がったその先にあるものは、大小の差こそあれ俺とほぼ同じものを持っているはずだ。
そう思うと、俺の防衛本能が反射的に手を放させた。
その俺の行動に、この男は余裕の笑顔を向けてくる。
なんだこいつ・・・。
顔見せが本来の意味なのだが、すっかり自慢大会的になってしまった自己紹介も終え、それに続いてホスト校の生徒会長である我”へ高”の稲荷家一子からの今後の進行の概略があった後であった。
真っ先に立ち上がった一人の男子生徒が、何を興味に思ったのか俺の元にやって来てそんな挨拶を向けて来たのである。
俺はしっかり覚えている。先程の俺に自己紹介の順番が回って来た時のことだ。穴井狭子の助け舟に任せたままで殆ど自分の言葉を発することもせず、しかも自分の個人ランクをただ一人公表しない俺の事をこいつはスッパイ顏で見下した笑いをしていたのだ。
まあ、それはお前だけでは無く他校の大方はそうだったのだが、確かにお前が俺を軽視していたのは間違いない。
そんな握手で全てが水に流れるとでも思ってるのか?
・・・いや、待て。その前に何故に俺のところに来るのだ。へ高代表で唯一の男子だからなのか?
面と向かった時だけは礼儀正しく接してもごまかされはしないぞ。
が、まあいい。周囲の目もあるので、一応立ててくれていることは正直有難い。その姿勢が俺を見下している他校の奴らにも良い影響を与えるかもしれない。
声には出さずに言っておくが、「だからと言って俺の今後の姿勢は変わらんぞ。その余裕、今に見ていろこのパイパンヤロー・・・」
この男は確かSOD高の生徒会長で個人ランク1位だったはずだ。里緒がいなければ、AV界でNo.1の高校生と言ってもいいだろう。名前は無駄毛が多いとか少ないとか・・・そう、そう、牟田毛渚梨唯とか言ったはずだ。
甘いマスクが、いかにもと言いたいくらいの良いところのボンボンと言う感じを醸し出している。肌の色を少し濃くしただけの目立たない毛色からは、少し離れるとほぼ無毛にも見える。もしあのマスクがもう少しワイルドであれば、スキンヘッドに眉無しで、きっと強面に見えたことだろう。
それは俺の苦手とするカテゴリーだ。彼を甘いマスクに産んだ御両親には高い評価を与えるとしよう。ブラボー。
と言うことは、おそらく陰毛も同じ色のはずだ。10メートルも離れればパイパンと同じに見えるだろう・・・。そちらは俺の好むカテゴリーでもある。当然女性であればだが・・・。
それは置いとくとして、彼の一対一となると一変してしまう態度は、今回に限っては有り難いとは言え、本来どうにもいけ好かない行動だ。良く言えば大人の対応だが、悪く言や~無節操だ。これが、こいつらSOD高、エリート中のエリートならではのなせる業と言うものなのだろうか。
しかし、驚いたのはこの世界の人は基本大人しく、気弱な人が多いと思っていたAV界の高校生が、こんな対応も出来ると言うことだ。流石、将来のAV界を背負って立つこいつらは、気持ちの強い面々揃いと言うことなのだろう。
そう言えば、我が”へ高”の生徒会長、稲荷家一子や、穴井狭子もその手の人間である。
考えて見れば比率の問題はあれ、気の弱い人がいればそれより僅かでも精神的に上に立てれば、圧倒的に強い立ち位置にたってしまうのが人の性と言う気もする訳で、そう言う意味では彼らは、僅かなアドバンテージの優位性を無意識に利用出来る人達なのかもしれない。
ちょっと待てよ・・・そうであれば、その程度の優位性など、ちょっとの挫折で崩れてしまうのではないだろうか?
すると今回の三校合同AV祭も、俺の演出でへ校の力を見せつければ、SOD校の生徒会長のパイパン君こと、牟田毛渚梨唯を始めとする彼らの自信に満ちた嫌味な態度もきっと脆く崩れてしまい、意気消沈してしまうに違いない。
よし、よし。本番では見事に出鼻を挫いてやる。ここは我慢だ、待ってろよパイパン君・・・。
そんな俺の軽口を知ってか知らずか、いや、知るはずが無い彼は俺の目を見つめている。まさか、やっぱりその気やあの毛があるわけじゃあ~ないだろうな・・・。
「おや?千乃君は、髪が黒いだけじゃなくて瞳も黒いんですね・・・」
なんだ?目の色を見ていたのか?
「・・・もしかして、千逗さんとは親類なのですか?」
里緒と親類?な、なにを言ってるんだねパイパン君。
顔が少し緩んでしまったではないか。
いかんぞ、顔を平常に戻して体制を整え直さなければ・・・。
「いや、ま、まさか。
全くの他人だけど・・・それが何か?」
なんだぁ、俺の回答に不満があるのか?
もしかして俺に近づいて来たのは”そこ”なのだろうか、それを聞きたかっただけなのか?
だとすると、何が”おや?”だ。白々しい・・・。
と思いながらも里緒と同じカテゴリーに括られたことが、何だか気恥ずかしくなってしまう自分に腹が立つ。それに、ちょっと含みを感じる言い方をされるのも、弱みでも無いのに弱いところを突かれたみたいで更に腹が立つ。
だいたい、そんな訳があるはずがない。
まあ、このパイパン君は知らないだろうが、俺はこのAV界の人間じゃないんだ。そもそも、俺はあのスカウターラミア様にスカウトされたエロの天才なんだ。どうだ、まいったか・・・!
と言いたいところだが言う訳にもいかず・・・実際、俺の価値観からしても”エロい”ことを自慢するのも何だか気が引ける。それに、スカウターミラミ様と言っても、正体は”まほまほ”へっぴりスカウターの”ミラミちゃん”みたいなものだ・・・この世界の人がどう思うが、俺の評価はすこぶる低い。
それよりも里緒を”千逗”と言う苗字で呼んで、ただで済むと思うなよ。何を隠そう、里緒は苗字で呼ばれるのが大嫌いなんだ。「元気の回復しそうな豆みたいで」って、俺なんかそれで怒られたんだぞ・・・。
と、思ったが、振り向く先でそれを聞いている里緒は2メートルほ程右前方でヘラヘラと嬉しそうに笑っている。
少しは”へ高”のランク1位としてのプライドを見せてみろ言いたいところだが、他人に苗字を呼ばれて怒る方がどうかしていると言えば、どうかしている。しかし、俺も他人なんだがな、里緒。何故おれはダメなんだ?
それはそうと、パイパン君の言うとおり俺と里緒の”色”が珍しいのは事実なのだ。少なくても髪の毛に関して言えば、学校ではこれがまた正直珍しいと言うか、ここまで他の原色の影響を受けない黒い髪は俺と里緒以外に未だ見たことがない。大人では偶に見るが、染めてる可能性もあるので、地毛の色は定かではない。
瞳に関しても、やはり余り気にしていないので定かではないが、見た気がしない。
特に髪の毛は俺は里緒よりも俺の方がさらに黒々としている。元の世界でも墨汁と言われた位に真っ黒だ。
因みにこれは母親譲りの黒髪だ。文句あるか・・・。
「そうですか・・・、凄い偶然ってあるんですね。きっと、お二人の先祖は第48部で、しかも少数の民族なんでしょうね。あの地域は色んな人種が多いですからね」
ちょっと待て、黒が悪いのかそれとも良いのか?
いや、買い被っても見ても、精々差引ゼロがいいところ的な言い回しな気がする。
何だ、何が言いたいんだ?パイパン君。
確かに、俺は第48部から転校して来たことにはなっているが、里緒は違うはずだよな。聞いたことないが・・・。
「えっ、ああ、それが何か?」
何か迷惑を掛けたか?と付け加えたい言葉は辛うじて飲み込んだ。一応、彼も客である。揉めるわけにはいかない。
と言う建前を揉めない理由にしておくとしよう。揉める勇気のない俺は・・・。
と、そこにツカツカと歩み寄る女子は誰だ?
「ホント、真っ黒なんだ。何で?・・・って、まあいいか。聞いたってしょうがないし。
陰ってしまった黒の伝説よりも、今は謎の高校生エロン棒様だものね。
あ~あ、彼はSOD高でもへ高の生徒でも無いってことか・・・残念。
まあ、そんなこと。今はどうでもいいわ。私たちは早く校内を案内して欲しいのですけど・・・牟田毛会長。
彼にまだ要があるのかしら?
超エリートさんの案内は、執行部の方々なのだから、お聞きになることがあるのであれば、執行部の方にお聞きした方が良いのではないかと思いますが、ねぇ、稲荷家会長」
そう言って、濃緑色の瞳が向ける先は、パイパン君でも一子でも無く、エロン棒様の相方の里緒である。
「でも・・・やっぱり、黒って本当は幸運の色のなのかな~」
里緒を見ながらそんなことを付け加える。
この溜息を吐く様に付け加えるのは皮校生徒会長の阿蘇小乃音である。
しかし、パイパン君といい、阿蘇小乃音といい、この黒への拘りは何なのだろうか?
今まで、へ高の生徒達からは特段聞かれたことなどが無かったので、俺は余り気にしていないことであった。
こいつらは、一体何を言いたいのだろうか?意味不明だ。
実はこの阿蘇小乃音は、この間の今年度初の第27部新人大会の相方を決める”お願いします”で、ガチガチの緊張した姿で俺の前に現れ、見事俺に玉砕された悲劇の女優なのである。
最も、今の話から想像するには自己紹介の時にずっと俺のことを見ていたのは、”お願いします”の時の俺の変装を見破り、あの時の俺と今の俺を同一人物であると見抜いた訳ではなさそうだ。それが分かったことにはホッとはする。しかし、あの時の潤んだ瞳をいてしまった俺には、正直、今の余り好意的で無い姿勢は虫のいい話だがちょっと残念でもある・・・。
「それは、失礼しました阿蘇会長。じゃあ、千乃くん。また・・・」
と、阿蘇会長に押されたパイパン君。お前と股で関わり等持ちたくない。とは応えられないので、
「あぁ」
と一言。そこに、
「ショリー、もういいかしら?そろそろ行きませんこと」
と、我がへ高の生徒会長 稲荷家一子の横から呼ぶ声の発生源が誰かと言えば、縦笛と言う特許を持つ”尺八家”の一員の尺八美味だ。
恐らくは生まれついての権力が、性格を曲げてしまったと言いたくなる超タイプのお嬢様だ。いかにもキツそうなキツネ顔をしている。
しかし、誰を呼んでいるんだろうか?ショリーとは・・・。
「ああ~、分かった。すまない」
と謝るパイパン君。
そうか、こいつの名前は”牟田毛渚梨唯”であった。
名前だけ聞くと結構いい名前じゃないか。グッバイショリー。
パイパン君は照れ笑いしながら、尺八の後を追う。さすが、尺八家。縦社会のAV界の高校の生徒会長でさえも叶わない権力が特許を持つ尺八家にはあるらしい。それは、もちろん、
「そ、そうね、では行きましょうか。まずメイン会場の講堂からで宜しいかしら・・・」
稲荷家一子も同じだ。尺八家の対応に少々ビビリ気味だ。そこだけはちょっと面白い・・・。
しかし、このAV界、女が強い。俺は安全な距離を5メートルと判断して3歩下がる。
「では、お先に失礼」
と、くわえもん。おっと違った、尺八さんだった。
そして、それにSOD高のエレガンスな若き女優達がドレス、失礼、制服のすそを翻し続く。一瞬、俺もそれに続きたい衝動に駆られてしまってる。
これがお高い女の魅力と言うやつなのだろうか?確かな魅力があることは認めざるを得ない。
あの高さへし折るのはきっと、楽しいだろう思ったりすもしてしまう。俺は意外とSなのかもしれない・・・。
パイパン君は、俺の前からあっさりと離れ、稲荷家達執行部と先に下見へと向かって行く。
その、下見へと先に向かうSOD高の面々を横目で見送る俺の目の前まで、いつの間にかやって来た阿蘇小乃音は、彼らを鋭く見つめている。やはり、この間の新人大会の時の初々しい面影が影を潜めている。
確かにあの時も活発な姿勢ではあったが、こんなに強気に振る舞う女の子には見えなかった。正直、俺はその時の阿蘇小乃音の方が好みだ。重ね重ね残念だ。
なんて思っていたら、
「じゃあ、私達も採点方法の打ち合わせをしましょうか」
やはり、何があっても動じない心のよりどころ狭子師匠は、俺達とはやはり別行動らしい。他校のAV委員会の代表達と別室へと向かって行く。
肝心な大会の採点方法の打ち合わせであるのだから致し方ないのだが、残ったのは里緒と、畳部部長の井草和良、それにランク外のこの俺のみだ。残念がってうる場合ではない。
皮高の生徒代表の案内役は、やはりこの3人で対応するしかなさそうだ。
本来、ここは案内役として里緒あたりが、何か気の利いた言葉で切り出すのが普通なのだろうが、見ず知らずの人間にそんな親しく話せる里緒ではない。ここは俺が里緒の代わりを務めるとするしかないのだが・・・と思っていたら、阿蘇小乃音は里緒の方へツカツカと向かって行く。
まさか、俺達を指名した理由は里緒に”何かするため”なのか?と、思ったら一応の愛想笑いは維持している。
ホッと一安心。心から笑えなんて難しいことは言わないから、今日はずっとその姿勢を保って欲しいものだ。
と思ったが、・・・んっ、ちょっと違う様だ。
彼女の細めた目と横に広げた口元で見せる笑顔は、ただの愛想笑いでも無さそうな気がする。まさか宣戦布告をするとか? すると、
「興味、あるんだな。あなたの強運の”黒”にもね」
そう言って里緒と視線を合わせる。
それって、里緒に宣戦布告って意味なのか?
そして、更に、その視線を俺の方に変えた。
あれ?俺に向けている視線が柔らかく見えるのは気のせいだろうか?
なんだか良く判らない。
結局、はっきりしているのは、自己紹介の時に俺を見ていたのは”黒髪”と”黒い瞳”が気になっていたと言うことだ。しかし、何でそんなに”黒”が気になる、いや、嫌い?なのだろうか・・・。
彼女の意図するところが俺には全く読めないままだ。
静かになった生徒会室で、視線を逸らせて背伸びをした阿蘇小乃音。
「さあ、まずは校内ランク1位の柔軟体操部の部室が見たいわね・・・」
その言葉に、
「わかりました、じゃあついて来て下さい」
里緒も珍しくスイッチが入ったのだろうか・・・。
<つづく>