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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第3章 三校合同AV祭
67/73

下を見るから下見とな

いよいよ、三校合同AV祭が近づいて来た。

さて、どんな大会になるのだろうか・・・。

 ぽんぽこつスカウター”ラミア様”こと”ミラミ”と、”へ高”のスター千逗里緒せんずりおとの気まずい再会があったのは、早いものでもう二週間も前のことにある。

 あの時、すこぶる良好なベクトルと言う矢印が俺の視界に現れていたのは、幻だったのだろうか?

 いや、疑い深い俺がそんな幻想を易々と見る訳が無い。きっと現実の訳がないが、ほぼそれに匹敵するはすだ。

 それなのに、何故がいきなりミラミの機嫌が悪くなったてしまったのだろうか?


 一体、原因は何なのか?


 それは、俺、千乃工口ちのくぐちにとって未だ解決出来ない謎のままである。

 と言うのも、実は未だそれについてミラミに問い質していないままである。


 何故かと言えば、あいつが、どうにも聞きづらいオーラを常に俺に対して放ち続けるので、つい聞きそこなってしまったのである。それどころか、あの後2〜3日の間は何を考えているのか、ろくすっぽ口も聞かない状態であった。

 まあ、今では、そんな出来事が無かったかの様にすっかり元の我がままな”こいつ”に戻っているので、変な気を遣う状態からは解放されてはいる。


 なもので、俺としてみれば、敢えてぶり返すよりは、一緒に無かったこととする解決策をチョイスする立場をとっているのは、多くの気弱な人々には理解して頂けることと思う。


 恐らくあの”まほまほの(急)変”はこのまま迷宮入りとなってしまうだろうが、

 それでいいだろう・・・と、俺の直感も言っているだかは、俺はもう詮索はしない方針だ・・・。


 一方、当事者のもう一人里緒はと言えば、こっちはこっちで、俺の期待とは裏腹に未だ、何故か気まずい状態が続いている。


 あからさまではないが、里緒は自然と俺のことを避けている様な気がする。いや、それともちょっと違う。完全に避けてはいない。常に俺と一定の距離をおいては居るが、以前より俺の周りに居る事が多いかもしれない。気が付けばいつも俺の近くには居るのだ。  あの時の一連の里緒の言葉を鵜呑みにすると、ミラミのいない学校では、程よく”先走り汁”的な関係になれるだろうと、かなり俺は期待していたのだったが、全く今の所そんな事実は無かったことの様になっている。


 一体どうしてなのだろうか、女性の心理と言うのは非常に難しい。

 

 しかし、俺だってこのAV界に来てからと言うもの2〜3枚の皮は剥いたり脱皮している。この程度のことであたふたとすることは無い。ここは、時の還元力に任せようではないか。

 今までも何となくそれで上手くいっているのだ。確固たる解決方法が無いのであれば、きっと、今回もそれが一番の方法なのだろう。


 と言うことで、俺の二人に対する対応策は、要するに何もしないで時に任すと言う結論に達したと言うことになっている。俺は少し変わったかもしれない・・・。


 それはそうと、最近の”へ高”は後二週間に迫った三校合同AV祭の準備で慌ただしい状況に置かれている。

 実は、こちらの方で俺は少しばかし忙しいのである。


 元々、このAV界の学校行事と言うのはとても閉鎖的で、他校との交流を行う何てことは、概念すら無かったらしいのだ。となると当然の事ながら、AV祭を幾つかの学校で合同開催する。何てことがある訳がない。


 と言うことで、今回の”三校合同AV祭”は実施されることだけでも凄い画期的な出来事らしいのだ。

 しかし、実は凄いのは開催の事実だけでは無い。


 今回、我が”へ高”と合同でAV祭を行う二校と言うのが、AV界の中心である第27部において、たった三校しかないAV科を有する一流エリート校なのである。もちろん、残りの一校でAV科を有するのは、我が”へ高”なのだから、もちろん第27部の一流校が全三校が揃ったことになる。


 そうなると、このAV界初となる”三校合同AV祭”と言うのは、この第27部、ひいてはAV界全体を背負って立つ次世代のエリート達の祭典と言うことになってしまう。


 さあ、大変だ。否が応にも世間の注目は集まって来る。

 今や、第27部では、たかだか高校生の一行事に世間の噂は持ち切りである。


 取り敢えず、この三校を紹介するとしよう。まずは、


 ・”精オイスター第一高等学校”通称SOD高。

  第27部でランク1位のみならず、なんとAV界ランクも1位で最高峰である。


 次に、

 ・”腹部下皮高等学校ふくぶしもかわこうとうがっこう”通称皮高。

  第27部でランク3位、AV界全体で11位と、ベスト10は逃したものの、言うこれまた超エリート校。


 そして、

 ・我が”併性へノ路学園へいせいへのじがくえん”通称へ高も負けていない。

  第27部でランク2位、AV界全体で9位と言うベスト10入りのエリート校だ。

 

 因みにこのランクというのは、大学への進学率や模試の成績等では無いことは既にお分かりのことと思う。在学中から卒業後を通じて18歳から19歳の一年間の成績で決まる訳だ。


 こう見ると、幾ら三校ともが超エリート校だからと言っても、トップのSOD校から見ると、確かに水を空けられている。だが、それは学校全体の成績であり、更に前回の新人AV撮影大会が反映されていない順位なのである。今や、個人の順位で行けば言うまでも無い。


 今このAV界の高校生の頂点に立つのは、誰あろう”へ高”の柔軟体操部部長であり、先日の新人大会で俺の相方を勤めた千逗里緒部長ちゃんであると言う事は、誰もが認める事実である。

 

 ただ、この事実は今日、”へ校”を訪れるライバル二校に取って面白い話である訳が無い。特にAV界の超エリート集団であるSOD校に取っては、黙ってはいられない屈辱的な出来事に間違いない。

 きっと、この三校合同AV祭では、妥当里緒としての色々な作戦を立てていることだろう。


 しかし、そんな彼らも本当に恐れている存在は、どうやら”エロン棒様”、この俺らしいのだ。

 これは、塩南先生並びに校長代理から聞いた話であり、実際にそれがどの程度のものかは、俺の感覚が知ることは出来ていない。

 

 秘かに彼らの中では”エロン棒様”探しが起こっているらしいのだ。もちろん、それは我が”へ校”でも、事実起っていない訳では無いのだが、幸いへ校では我が校のホープ千逗里緒の影に隠れて、ただの興味程度に収まっている。

 と言う事で、幸いにも俺はいつもと変わらずのほほんと生活することが出来ている。


 まあ、他校が来たからと言って、この俺が”エロン棒様”であることを見抜かれることは、その事実を知っている校長代理、3年のAV科の担任3人、それと里緒がバラさない限りは、有り得はしないだろう。


 とは言え、派手な演技は禁物だ。そんな背景と先生方の熱い意向もあって、この初となる三校合同AV祭の俺の役目は裏方のみとなっている。最終演目のエキシビションで他校から指名を受けない限り出演の機会は無いことになる。


 誰も俺を、時の人”エロン棒様”とは知らないから出演指名されることは、まず考えられない。だから、俺は裏方として、我がへ校の威信の為に貢献したいと思う。

 楽しく、エロく、気持ち良く、裏方として皆を官能させようではないか・・・。



 と、言いう意気込みだが、相当忙しい毎日でちょっとツライ・・・のが本音。


★☆ 第21話 ★☆

☆★下を見るから☆★

★☆♂下見とな♀★☆


 我が併性へノ路学園高等学校へいせいへのじがくえんこうとうがっこう通称”へ高”は、朝からいつもとは違った様相を見せていた。


 偶然、廊下で会った校長(実際は未だ代理)も、いつもの陽気さは影を潜め、顔中の皺が全て縦方向になる位に表情が強張っていた。

 生徒会顧問も兼任している宝家棒薔薇たからいえばーばら先生はそれどころではない。同じ側の手足を同時に動かすと言う斬新な歩行を披露していた。


 生徒達だってそうだ。基本、静かで大人しい人が多いのであるが、今日に関してはあちらこちらでざわめきを見せていた。こんなことは、あの俺と里緒が共演した新人AV大会の翌日依頼である。


 ただ、そんな中でも相も変わらないのは、我が担任兼顧問の塩南間子しおなまこ先生だ。いつも通りのフワフワとした掴み処の無い雰囲気を醸し出している。

 俺はこの姿に、今までどれだけ癒されていたのかと改めて思わされてしまう。


 まあ、少々大げさな表現ではあったが、全体的には朝からいつもとは大分違った景色をみせていたのだ。


 その理由はと言うと他でもない。今日の午後には、二週間後に迫った”三校合同AV祭”の下見として、他の二校の代表達が、我が”へ高”にやって来るのである。


 本番ではなく、ただの下見に来るだけなのである。それでも、他校慣れしていない、基本、内気な生徒達なのだから分からなくもない。ただ、教員達もぼちぼちと浮き足立っている姿が見受けられるのは驚きである。皆、あの基本スッポンポンのAVビデオ撮影大会でそれなりの成績を納めているのにである。


 とは言う俺も、恥かしながら正直なところ緊張をしていたりする。それは、これから他校の下見のホスト役として、この俺も指名されたからなのである。


 そんなことで、昼食を終えた俺はあまり余計なことを考えると、また緊張のあまり腹の調子を悪くしてしまうので、現在、出た処勝負を決意し、二階にある生徒会室へと足を向けているところだ。


 辺りの学友達は午後になって、我が”へ高”内の様相は更に騒がしさを増して来ている。いつもなら否応にも緊張度は増すところである。だ

 が、心強いことに、俺一人で生徒会室に向かっていると言う訳ではなかったりしている。


 なんと俺の左には校内ランク第3位で”社会部部長”並びに、”校内AV委員会の生徒代表”ステンレスのハート(傷つかず、錆びにくい)穴井狭子あないくきょうこが居られる。そして、右には校内ランク1位で”柔軟体操部部長”の千逗里緒せんずりお(こちらは緊張しいだが)、とにかく、一人では無い。上質の玉を両サイドにしているのだ。


 よって、真ん中の未だ握られていない(しなっとした)一物役はこの俺、平民の高校生と言った具合になっている。俺は真ん中に水戸黄門様のように柔らかく先頭を進んでいる。


 俺がホスト役を任命された理由は単純明快。男女比率が1:4の上、女子の力が非常に強い”へ高”に取っては、AV祭実行委員会の男性も当然少ない。俺の他、大人しい子猫ちゃんが僅かに4人の総勢5人だけ。皆、校内個人ランクも高くないので、しなった一物の長さ比べ。


 だが、併性(共学)になって5年が経過する。それをアピールする上で、男子を選ぶと言うのは”必須だ”との見栄えでの意見で一致。


 となった時に選考基準となるのは、喋りが効くことと行動力となる。

 何を隠そう、この”三校合同でAV祭”の立案は俺の脳みそから生まれて来てしまったことなのある。処々の事情で。

 となれば男性代表と企画立案者として俺にお鉢がが回って来ても不当だと騒ぐことも出来はしない。

 よって、俺は緊張を左から右に流しながら水戸黄門役を今勤めているのである。


 俺の前には緊張が見え隠れして襲って来る。それを危うく右に流すと、そこにはそれをしっかと受け止めたとしか思えない里緒がいる。里緒は、正面を向いたまま俺と目も合わせてくれていない。

 しかし、これは緊張だけかと言うと、そうでもない。二週間前から、常にこんな感じなのである。


 それでも、依然と違って俺も里緒の行動には慣れて来ている。これは時間が解決してくれるはずなのだ。

 その証拠に、隣を歩く里緒と俺の距離は次第に近づき、二度ほど手がぶつかっている。むろん、ぶつかるもぶつからないも、俺の右後ろを歩く里緒の心一つなのだ。決して里緒は嫌って避けている訳ではないと俺は踏んでいる。


 ただ、振り向いた俺と目が合っても直に目を逸らしてしまうので、まだ会話には至ってはいないのは少しばかり寂しいが・・・。

 まあ、穴井狭子が近くに居る手前、俺も里緒のことは言えた義理ではない。狭子のオーラは一種独特なのである。


 などと、くだらないことを考えている間に、俺たち三人は会話も無く生徒会室に到着してしまった。


 扉の前に立った俺はお約束の様に一歩下がる。実際は両サイドの二人より格下なのだから、当然の配慮だ。と、自分に言い訳をしていると、一番各上の里緒も俺の後を追って一歩下がってしまった。あらら・・・。


 となると、計らずしも”どうぞどうぞ”状態で穴井狭子が一歩前に出た状態となる。

 その普段は無口ではあるが、何事にも臆することを知らないステンレスの穴井狭子が口を開いた。

 それをきっかけに会話が解禁となった。


「もう、来てるみたいね」


 確かに、まだ約束の時間まで30分はあると言うのに、確かに曇りガラスの向こうの人影とざわつきは、明らかに多人数を思わせる。


 控えめな俺と里緒が扉の前で躊躇ためらうのに対して、穴井狭子は何の躊躇ちゅうちょもなくそよ風の様な自然な流れで、生徒会室の扉を開ける。ガラガラ・・・。

 そして涼やかな笑顔で・・・俺には後頭部しか見えていないが・・・。


「もう、お付きでしたか?お出迎えもしませんで申し訳ありません」


 穴井狭子はどうどうとした態度で、後になった非礼に対し頭を下げる。なので、その後ろで俺と里緒も一応、前に習う。ホント穴井狭子は頼もしい。


「いや~、こちらこそ早く着き過ぎましてご迷惑掛けてすみません」


 そう、狭子に応える男は一体誰だろうか?

 こいつも、やけに落ち着いてやがってちょっと腹が立つ。ここは俺も落ち着いた振り位はみせなければならない・・・へ校の男子代表として。


 それにしても、視線は仕切る狭子では無くて、当然だがほぼ皆、里緒に向いている。

 里緒を横目で見ると、案の定萎縮している。


 生徒会室の中には、俺達3名を除くと全員で13名だ。内、見知らぬ顔は9名。そして、制服が二種類。

 と言うことは、30分も前だと言うのに2校共到着していると言うことになる。


 大体、待ち合わせと言うと、遅れることが結構有りの俺の元の世界とは違って、このAV界の人々は一般的にも非常に几帳面な人間が多い。

 その中でもエリート達ともなると、こんなに迷惑なくらいに早くやって来るものなのだろうか?


 それでも、生徒会長の稲荷家一子を始め、我がへ高の生徒会の面々は恐らく生徒会室で昼食を取ったのだろう。既に三役揃い踏みである。

 こいつらもエリートと言うことなのか・・・。


 と、思ったら今回のホスト役メンバーで、まだ来ていないヤツが1人居るではないか。

 そうそう、へ高の部活ランク3位、個人ランクはしらないが、畳部部長の井草和良いぐさわらの姿が見当たらない。


 この女は、もしかすると時間ぎりぎり、いや、遅れて来ることだってありそうだ。いつも、のんびりとして、・・・。と思っている傍から、後ろから俺の背中をつんつんと上向きに突っつくヤツがいる。


 この行動に大体想像がつく。俺は小柄な体を想像し、下向気に振り向くと、想像を裏切らない大きさの和良がおっとりと笑っている。福のある丸い顔立ちだ・・・。


 体はこじんまりとしているが、こいつは、この世界の高校生に珍しく、相当太い性格の持ち主だ。俺は、穴井狭子と双璧だと思っている。

 何故、俺がそんな他部のことを知っているかと言うと、俺は畳部の演出支援にも少々絡んでいるのである。

 

「空いてるところに座ってもらえるかしら」


 落ち着いている様に見せているが、一子も緊張しているのだろう。オクターブ高でナチュラルビブラートが効いている。


「はい、会長」


 二コリと微笑を浮かべて応える穴井狭子に対し、


「は~い」


 方や、楽しそうな和良わら。それに、ほとんど聞こえない声で返事をする里緒。一応、俺も頭だけは下げて空いている席に着くとする。


 生徒会室の中にある会議室には、真ん中に空間を開け、ほぼ正方形の辺に沿って机が並べられている。


 俺達の座る下手から見て、正面の上手が稲荷家一子率いる我がへ校執行部。そして、入り口から見て奥側に当たる俺の右手には、”精オイスター第一高等学校(通称:SOD校)”の5人が並ぶ。

 左手には、腹部下皮高等学校ふくぶしもかわこうとうがっこう(通称:皮高)の4人。

 そして、俺の左には、里緒、穴井狭子、和良と俺の4人が並んでいる。


 恐らく引率したであろう顧問の教員は、今頃、緊張の極致の宝家先生と打ち合わせ中なのであろう。生徒会室は生徒のみである。


 実は、生徒会長稲荷家一子は既に大復活してやる気満々状態である。

 里緒のAV大会初演の好成績で、校内ランク1位を奪取することが実質不可能となり、意気消沈していた稲荷家一子であったのだが、今回の三校合同AV祭で最優秀AV大賞を受賞すると、毎週頭にある本番のAV大会への出場資格が貰えるとの副賞が設けられのだ。

 これにより、既に今月18歳の誕生日を迎えた一子は栄えある”最優秀AV大賞”に輝くと、法的にもAV女優の仲間入りとなる。


 きっと、教育委員会とJRAV会はAV界の少子化により、新人のAV撮影大会の出場人数が少なくなったこともあって設けたご褒美なのだろうが、大会を盛り上げるにはこれ以上無いニンジンとなるのは間違い無い。

 現に一子は掛かり気味のハイテンションだ。


 まあ、里緒に対して嫌味を言う嫌ヤツではあるが、我がへ高の生徒会長のモチベーションが低いのでは戦いにならない。ここは、このご褒美で息を吹き返した彼女に、生徒会長としての統率力と校内ランク2位の実力を存分に見せて貰おうではないか・・・。


 静かな生徒会室に、テンションの高い生徒会長 一子の声だけが響いている。

 挨拶やら今日の予定についての説明なのだが、高いテンションは余計だが、以外とこいつは喋りが効く。

 この下見接待は、順調に流れている。


 今回は言いだしっぺの”へ高”の校舎を使用すると言うことで、ホスト役は我が”へ高”が勤める。

 よって、当然生徒会長 一子の見せ場である。

 晴れ舞台に少々長くなったが、それなりに評価が出来る見せ場が終わると、一子の仕切りで自己紹介となった。

 

 まずは、”へ高”執行部の紹介であるが掻い摘むんで説明すると、正直なところ、校内個人ランク第2位の稲荷家一子を除くと執行部メンバーの小者感は否めない。


 副会長 沙羅田芽亜流さらだがあるは、一子と同じマッサージ部の副部長で校内個人ランクは12位と二桁。

 書記は”こたつ部”の2年生でこちらも、今日俺も初めて知ったが、校内個人ランク18位だ。2年生とあらばそれも立派な成績なのだが、残念ながら実際の勝負は学年別では無い。無差別だ顔見せにしては格下感は否めない。


 そんな執行部の紹介がヘボいせいもあるのか、SOD高はむかつく位の余裕のある態度を見せている。目付きが下向きで嫌らしい。顏を通常よりも上げている証拠だ。


 こいつらだって、この後に我がへ高の大スター、先日の新人AV撮影大会で”キス”と言う大技を繰り出し、ただ今”好評”特許申請中の千逗里緒様が、燦然と大人しく地味に控えているのを知ってるはずだ。

 この自信に満ちた表情と余裕のある態度の根拠はただの人間性なのか、それとも、彼らには何か作戦があるのだろうか、不気味な奴らである。

 

 一方、皮校であるが、こちらは三校では一番の格下である。いわば”失う物は何もない”と、実際は有るだろうが、気分的にそう言ったところだろう。目付きが最初から余裕が見られない。特に一番下手の女子は思いっきり血走った目付きで里緒にガンを飛ばしている。


 こいつらの闘志はハンパじゃ無いのを感じる。勢いはありそうだ。


 しかし、それを迎え撃つ俺達へ校に手が無い訳ではない。

 秘策がある。結果は出たとこ勝負ではあるが・・・。


 その秘策とは、柔軟体操部以外の部の演目に対しても、この俺が作戦参謀、または、演出家とでも言えばいいのだろうか、そんな立場でこの俺があちらこちらで参加しているのである。


 ことの始まりは、全校集会で必勝を誓ったものの、策が思いつかなく困り果てた生徒会顧問の宝家たからいえ先生生が、塩南しおな先生に相談をしたところ、


「あ〜ら大変。それはくぐちゃんにお願いしなきゃんっ」


との塩南先生の一言があったからなのだ。もちろん、これは後で宝家先生から聞いた話しではあるが、宝家先生も俺が、一応”ラミア様”と呼ばれる崇高なと言うこといなっている、スカウター様によって異世界から来ていることは知っているし、”エロン棒様”がこの俺であることも知っている。

 となれば、当然期待もするだろう。


 全く高く買い被られたものだが、あの塩南先生がこの俺を見込んでくれているのだ。自己分析よりも数段信憑性があると思ってしまう。

 そんなことで、俺は多少は調子の波に乗りつつある危険な状態であることも手伝って、安請け合いをしてしまった。しかし、俺の所信表明としては、受けた時の気持ちは何であれ、自信を持って感性を発揮しへ高を優勝させたいと思う☆。


てな具合で、我が校には俺と言う秘密兵器があるのだ・・・そうだ。

 この売れっ子秘密兵器の性能は果たしてナンボのものだろうか?


 それは、今回の大会ではっきりするのではないだろうか・・・。

  

 てなことで、右回りに順番が回ってくると思っていたら、一子は続いて俺たちに自己紹介の順番を回して来た。


 と言うことは俺も何か挨拶しなければならないのか?

 まさか、俺だけ飛ばしてもらうと言うことは常識上難しいとは俺も思う。


 やばい・・・。


 ここで気付いてしまった。転校して間もない俺には、順位と言えるものがまだ無いに等しい。この間の里緒とのAV大会はいわばお忍びである。校内順位に繁栄されてはいない。それに方書きも何もない。あるのはニセの転入試験の成績のみの、第186位。これは貧弱過ぎる・・・。


 まずは、穴井狭子が自ら先を切って立ち上がった。


「併性へノ路学園へいせいへのじがくえん3年、校内部活ランク4位 社会部部長、”校内AV委員会の生徒代表並びに審査委員長”校内個人ランク3位の穴井狭子です・・・(ナンタラかんたら)・・・。宜しくお願い致します」


 淡々と喋る口調に、肩書の多さ。カッコ良すぎて羨ましい。

 続いておっとりと立ち上がる。


「校内部活ランク3位畳部部長、校内個人ランク5位。 井草和良いぐさわらで~すっ。よろしゅうお願いします」


 何、こいつ校内ランク5位だったのか?もしかして癒し系と言うヤツで順位が高いのだろうか?

 そんなことはどうでもいいんだ。もう少し時間を稼いでくれてもいいじゃないか。


 どうする?まさか”まほまほ”から・・・、いや多分、そんな最近放っていない危険な単語を吐いたらエライことになりそうだ。なんて、余計なことを考えてどうする。遊ばず考えろ俺の頭。


 俺の一番のセールスポイントと言えば、AV大会で里緒の相方を勤めたことだが、それは俺は”エロン棒様”だ!と告白してしまうことになってしまう。増して、ラミア様からスカウトされたとは口が裂けても言えはしない。そんなことを言ったら大騒ぎになるどころか、「こいつ頭大丈夫か?」と、俺の知性が疑われる。


 困った。困ったが、俺の腹の調子が未だ健在なのがせめてもの救いだ。俺のハートもステンレスと言えないがラワン材位にはなっているのかもしれない。


 そんな悩みを知らない里緒は時間稼ぎもしてくれない。脚を震わせながら立ち上がった。


「校内部活ランク1位柔軟体操部部長、校内個人ランク1位 千逗里緒せんずりおです。宜しくお願いします」


 やば、みじか・・・。


 里緒を見つめる周りの目が鋭い。が、今の俺には里緒を思いやっている余裕がない。

 

 次だ。次は俺だが、何も肩書が思いつかない。どうしたら良いか分らないが取り敢えず立つしかない。そこに、


「彼、今回の”三校合同AV祭”の発案者で、我が校の演出を行っている。千乃工口ちのくぐち君です。今日は特別に出席してもらっています」


 Oh!何と穴井狭子が助け舟を出してくれた。


「宜しくお願い致します」


 その一言だけで済んだ。奇跡だ。


 有難う、狭子。惚れてしまいそうだ。と、狭子を見ると、意外にも俺に軽くウインクをしてみせた。里緒にはそれが見えていないはずだ。一瞬空想で浮気をしてしまう。たったの1.5秒。そして瞬時に顏を戻す。


 俺が座ると、隣の里緒が俺の顔を久し振りに見て、脚を蹴って来た。


 何だ?何故分かった。俺の顔がニヤケていたのだろうか?

 でも、蹴られても何か嬉しいと思う俺は、そっちの気があるのだろうか・・・。


 上手く行ったと思い。着席して顏を上げると、他校の評価は・・・あら、完全に見下した目で俺を見ている。下に見られてしまっている。さすが、下見に来ただけある。何て、冗談は今は必要ない。


 やはり、”ランクを告げない”=”相当に低いランク”ではこんなものなのか・・・。

 騙されないってことね。でも、挨拶は無事済んだのだから問題は無い。いや、問題としない顏をしていよう。恥ずかしいが・・・。


 と思ったら、先程から里緒にガンを飛ばしていた女子だけが、今度はやたら俺を凝視している。決してナメている目付きではない。


 なんだ?

 と思ったら、


 あっ、思いだした。


 確か先日の新人AV大会の初日、相方決めの為の大会”お願いします”で、里緒を見付ける前に俺に”お願いします”をしたあの子ではないのか?

 

 いや、そうだろう。あのショートカットに、活発そうな容姿。

 間違い無い。そうだ。


 俺が、”ごめんなさい”と断ったことを根に持っているのだろうか?とか、そう言う問題ではない。

 これはやばい。気付かれただろうか?


 俺があの大会に出場していると言う事は、里緒以外で出場していることになる。よって、必然的に特別推薦と言うことになるのだ。


 いや、一応、あの時は茶髪カツラに帽子を被っていたし、マフラーで口元までを隠していたのだ。似ていると思っても同じ人物とまで断定は出来ないだろう。


 それに、もし”お願いしますに”俺が出ていたことが分かったとしても、エロン棒様”の時には銀髪のカツラに替えている。俺と結びつけることは出来ないはずだ。最悪、適当な団体の推薦で出場したことにしておくしかない。


 それがどう言う位置づけかは知らないが、”エロン棒様”だとか、ラミア様推薦、いや実際は役場推薦と言うことになるのか・・・。いずれにしても、正直に言うよりはマシだろう。


 しかし、それにしても、ずっと俺ばかりを見過ぎだろう。


 彼女が俺から目を逸らさないのは、そんなにあの時の俺と今の俺が同一人物だと言う確証があるのだろうか。

 

 なぜ・・・?


<つづく>



やっと、3章本番までやって来れました。

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